「生涯現役社会づくり」をめざす第一弾:41
2015年5月7日 お仕事◎ た え ず ベ ン チ ャ ー 意 識 を 持 て
昭和四十八年、新規公開(株式の上場を勧める)アプローチ先であった優良ベンチャー企業へ、私は出向社員として移籍した。
その企業は、自動販売機用コイン・メカニズムのトップメーカーで、当時の資本金は四億七千万円、従業員数約三百人程度の規模のユニークなオーナー経営による成長会社だった。業績は急進しており、創業後七、八年は毎年倍々ゲームの成長を果たす勢いで、私が出向したのも、早急に株式上場の実現をするためだった。
当初は、証券会社企業部担当者としてベンチャー企業を発掘するのが私の役目ではあったが、“ ミイラとりがミイラになった ”の諺どおり、私の興味は度を越してしまい、相手企業にのめり込む次第となってしまったようである。
昭和四十八年十二月に出身元の証券会社を正式に退社、そのベンチャー企業での社長室部長として入社、翌年には予定通りその株式上場を実現させたのである。
はじめ、出向したての頃は、オーナーによる企業経営というものに、ことごとく驚かされた。昭和二年生まれの、エネルギッシュなオーナー経営者の事業意欲と熱意に圧倒されてしまった。自分の納得のいくまで、トコトン追究し、何が何でもやり抜くタイプの事業家で、その上、センスは抜群だった。事務所のディスプレイにしても、一つひとつうるさい位に口をはさみ、洋服にいたる外見的なセンスにもスタイル満点の洗練されたものがあった。どこでも、誰でも、やれないことをやれ、と常に社員を叱咤激励する烈しい性格の中にも一面思いやりをもった、とにかく野心満々のオーナー経営者であった。そして、毎日毎日が真剣で、ましてサラリーマン的発想は許されないという厳しさがあった。
それまでのサラリーマン上がりの経営者からは学べないものを、私はこうしたオーナー経営者について学び取ってみたいと考えたのである。一方で私には、株式上場による時価発行取得資金で、将来企業買収などをやってみたいというひそかな念願をも多少はもっていたのかも知れない。そのための第一歩としては格好のチャンスだったし、株式市場を通しての企業買収は、これまでのわが国の労働慣習から受け入れにくい面もないことはなかったが、やがて証券国際化時代には本格化、日常化するという予感が私にはあった。
こうして私は、ベンチャ-企業へ自ら転職して無事、株式の上場を果たしたが、当初目論んでみた企業買収には企業体質的にも時期尚早であることから慎重を期すこととした。 つづく
昭和四十八年、新規公開(株式の上場を勧める)アプローチ先であった優良ベンチャー企業へ、私は出向社員として移籍した。
その企業は、自動販売機用コイン・メカニズムのトップメーカーで、当時の資本金は四億七千万円、従業員数約三百人程度の規模のユニークなオーナー経営による成長会社だった。業績は急進しており、創業後七、八年は毎年倍々ゲームの成長を果たす勢いで、私が出向したのも、早急に株式上場の実現をするためだった。
当初は、証券会社企業部担当者としてベンチャー企業を発掘するのが私の役目ではあったが、“ ミイラとりがミイラになった ”の諺どおり、私の興味は度を越してしまい、相手企業にのめり込む次第となってしまったようである。
昭和四十八年十二月に出身元の証券会社を正式に退社、そのベンチャー企業での社長室部長として入社、翌年には予定通りその株式上場を実現させたのである。
はじめ、出向したての頃は、オーナーによる企業経営というものに、ことごとく驚かされた。昭和二年生まれの、エネルギッシュなオーナー経営者の事業意欲と熱意に圧倒されてしまった。自分の納得のいくまで、トコトン追究し、何が何でもやり抜くタイプの事業家で、その上、センスは抜群だった。事務所のディスプレイにしても、一つひとつうるさい位に口をはさみ、洋服にいたる外見的なセンスにもスタイル満点の洗練されたものがあった。どこでも、誰でも、やれないことをやれ、と常に社員を叱咤激励する烈しい性格の中にも一面思いやりをもった、とにかく野心満々のオーナー経営者であった。そして、毎日毎日が真剣で、ましてサラリーマン的発想は許されないという厳しさがあった。
それまでのサラリーマン上がりの経営者からは学べないものを、私はこうしたオーナー経営者について学び取ってみたいと考えたのである。一方で私には、株式上場による時価発行取得資金で、将来企業買収などをやってみたいというひそかな念願をも多少はもっていたのかも知れない。そのための第一歩としては格好のチャンスだったし、株式市場を通しての企業買収は、これまでのわが国の労働慣習から受け入れにくい面もないことはなかったが、やがて証券国際化時代には本格化、日常化するという予感が私にはあった。
こうして私は、ベンチャ-企業へ自ら転職して無事、株式の上場を果たしたが、当初目論んでみた企業買収には企業体質的にも時期尚早であることから慎重を期すこととした。 つづく