“  冬 の 時 代 ” の 苦 し い 体 験 が 後 に 役 に 立 つ

  変化といえば、昭和四十年の証券不況も、記録に残る大きな“ 流転 ”であった。大量の証券退職者を見て、この時ほど、異常時に備えた企業体質の重要性を強く感じたことはない。私はまだ若かったから、証券不況の“ 冬の時代 ”も、いつかは春が来ると楽観視していたが、しかし、不況期の証券セールスは苦しいものだった。

  今から思えば、この時期の苦しいセールス体験が、現在、本当に役立つことになったのだが、当時は毎日、靴をすり減らし青白く緊張した顔で東奔西走していたのである。

  そして、変化に対応すべく、証券市況をつかず離れず注意して見守る冷静さも、かえってこの時期にまなぶこともできた。

  私の結婚生活がスタートしたのは、昭和四十年、証券不況がもろに押し寄せたこの時期である。

  大変化の波を、仕事でも家庭でも頭からすっぽり被った格好だが、それでも、不況のドン底での結婚ほど心強いものはないと思って、がむしゃらに突き進んだことを覚えている。

  私たちのそんな歩み方が、よかったのか悪かったのか、変化に応じて会社こそ変わったものの、結婚については、未だに、別れようという話は一度もない。

  変化を怖れてはいけない。変化はすべて、チャンスなり・・・この警句は、今なお、私の信条とするものである。   つづく