高石知二氏が運営する「株式会社 いろどり」は、市況や出荷状況など最新の詳しい情報を農家の皆さんに提供し、出荷要請やアドバイスを行うそうですが、最終判断はすべて農家の皆さんが行うので、これが数字に強いお年寄りを生み出しているそうです。

  一家四世代で「彩」事業の当時80代後半のおばあちゃんは、テレビ番組取材に答え、こう云っていました。“ 昔は身体を使うて稼いどったけど、今は頭を使わんとあかん時代になった。けど考えてやったことが当たると、ホンマに面白いな ”と。

  90歳近いお歳で、こういう「仕事が脳力を鍛える」意欲溢れる発言ができるとは誠に恐れ入る次第ですが、「彩」の仕事を始める前の60歳代頃より80歳代の今のほうが、はるかに脳力向上をさせた人が多いようです。

  葉っぱの仕事は指先を使うのでその刺激で脳が活性化され、頭を若返らせる効果もあるようです。病気から麻痺した身体のリハビリを兼ねての、葉っぱの仕事に励んでいる人もいるといいます。

  様々な面から脳のトレーニングや活性化に役立ち、認知症予備軍と恐れられる年齢になってからでも始められるので、横石氏自身がこれほど有難い「生涯現役社会づくり」の仕事はないと感謝しています。

  35年前、上勝町農協営農指導員として横石氏が赴任した頃の同町では、男性は主に農林業や建設業で働いていました。何かといえば補助金話題の話ばかりの行政頼り、ひと様頼りで、地方や田舎が閉塞していくのは、永年の依存的な生活習慣にあると思われました。

  人は誰かがしてくれると思うと、自分の脳力を鍛える努力をしなくても済みます。地域の行政は補助金に頼り、住民は昔から同じことの繰り返しで進歩発展の改革にチャレンジする本当の喜びを味わおうとはしません。

  脳神経細胞は同じ回路を信号が通る習性がありますから、それを変えない方が安心感・安定感があって、敢えて革新的なことは考えなくていいというのが普通の発想です。

  「彩」事業開始以来、商品に磨きをかけるための講演会や研修視察のたびに農家の協力者たちに参加していただくと、“ 横石さん、今日の講演は良かったな。私ら勉強になったわ ” と云ってくれても、家に帰るとまた元通り。

  見学バスで先進地へ視察すると、“ あそこはええことしよるな。勉強になった ”と感心した矢先の帰路に、車中で一杯飲み始めるとまた元の木阿弥の「考えない生活習慣」に逆戻りすることにしばしば悩まされたようです。

  また、その頃の上勝町では徳島流のルーズな「阿波時間」が主流で、事業開始当初は、決められた会合の約束や時間の遵守は不徹底だったようです。しかし、事業が軌道に乗り始めると、「やるべきこと」を各自が自覚し始めて、曇っていた顔が輝き始めたのも見事な脳力発揮の成果が実ったからだといいます。つづく