本26日(水)付日経新聞朝刊で「企業は雇用延長にとどまらぬ処遇改革を」と題する社説が掲載されていた。折しも本日召集特別国会での首相指名選挙で自民党阿部信三総裁が第96代首相に選出され、自公連立内閣が発足した。
  新内閣は経済再生を官邸主導で最優先課題に取り組むことを強調しているが、社会保障と税の一体改革にも関わる団塊世代層の企業OB化で急増する年金支給額への対応にどう備えていくか、大いに世代間バランスが問われることになる。
  その意味で上記社説内容にも、さまざまな意見・提言がなされているが、『生涯現役社会づくり支援プラットフォーム』民間構想に急務を実感する立場から、基本戦略面での踏み込み不足は否めない。
  『生涯現役プロデューサー』仮登録仲間の皆様に、その意見・主張を吟味していただきたく、下記転載でご紹介したい。
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   企 業 は 雇 用 延 長 に と ど ま ら ぬ 処 遇 改 革 を

  改正高年齢者雇用安定法が来年4月に施行され、企業は段階的に、65歳までの希望者全員の雇用を義務づけられる。これを受け、再雇用制度の拡充や定年延長などの準備が企業の間で進んでいる。
  60歳以降の雇用の義務化は同じ企業に人が漫然ととどまり続ける恐れがあり、成長分野に労働力が移りにくくなる。企業の人件費が増え、若者の採用が抑えられる心配もある。見直しを求めたい。
  ただ専門的な知識、技能や取引先との太いパイプを持つ高齢者は、戦力として活用することが企業の成長力向上につながる。シニアが力を発揮する制度作りに知識を絞る必要がある。
  シニアの雇用でも賃金などの処遇の決め方では、生産性向上を考えて、本人が持っている専門性や業績への貢献度などを反映させる仕組みがいるだろう。
あわせて企業に求められるのは、60歳までの賃金決定についても役割や貢献度などに応じた方式を強め、グローバル競争に勝てる人事・処遇制度に改めることだ。
  NTTグループは65歳まで希望者全員を再雇用するに伴い、40~50代を中心に平均賃金カーブの上昇を抑え、個人の成果や職務内容を賃金により反映させる。日本企業は年功による昇給がまだ根強い。
海外事業を伸ばす外国人を受け入れやすくし、若手の採用を増やす原資を確保するためにも、実力主義の徹底は欠かせない。
  需要の回復が望めない分野からの撤退と成長分野への進出を素早く決め、柔軟に事業を組み替えることが企業にとってますます重要になっている。
  このため人材の新陳代謝を進めやすくする工夫がほしい。サントリーホールデンングスは45歳以降、定年扱いで退職できる「自由退職定年制」を設けており、65歳に定年を引き上げるのに合わせ早期退職の退職金割増額を増やす。
  社員が別の企業に移って第二の人生に挑戦しやすくするには、規制緩和で職業紹介や職業訓練に人材サービス会社がもっとかかわれるようにするなど政策の後押しが必要になる。だが企業自身の工夫の余地も大きい。労働力の有効活用は社会のためにもなる。
  65歳以降でも年齢にかかわらず、企業の戦力になる人材は雇用するメリットがある。だが過度な人件費増は企業の競争力を弱める。若年からシニアまでの処遇制度全体を組み直すときだ。