“ 脱 サ ラ 志 望 ”や“ ベ ン チ ャ ー 志 向 ”も 多 い 熟 年 層

  自らベンチャーしたこの1年間、私はサラリーマン時代とははるかに比べものにならないほど、多くの人に会うことができた。主に、企業の管理者層やその“ 熟年予備軍 ”の人たちで、驚くことに、こうした人たちの中堅サラリーマンに“ 脱サラ志望 ”や“ ベンチャー志向 ”が実に多いことだった。

  しかし、大企業の高級サラリーマン程、その希望を実現するには、余りにも脱サラが危険なことはいうまでもない。

  中高年社会の進展によって、企業では年齢相応のポストが得られなくなったり、高齢者の待遇もそれほど芳しいものではないという事情もある。加えて、マイクロエレクトロニクス(ME)技術の浸透で、いっそのこと企業を飛び出そうかという脱サラ傾向に拍車がかかっていることも事実だ。

  けれどもまた、熟年を迎えながら、このままサラリーマンとして、“ 一挙手一投足 ”を管理に組み込まれていて自分の生き甲斐がみつけられるかと真剣に悩んでいるサラリーマンも少なくないのである。
  
  こうした人たちが、脱サラをめざし、ベンチャーを希望するなら、ぜひとも成功してほしいと思う。そのために私の体験が役立つなら、情報でもアドバイスでも、大いに提供することにやぶさかではない。独立自営のアドバイス業を掲げるライフ・ベンチャーとしては当然な業務だからである。

  しかし、現実には、脱サラ可能な実力をもつ人は企業側でもぜひとも必要な人でもある。だから企業が引き止めたいと思っている人たちまでも、脱サラをけしかけるというのではない。

  真に独立自営することがその人にとって真摯な人生目標であり、生き甲斐となり得るなら、企業からの脱出とそのベンチャーは、必ず成功させなければならないと考えているのだ。私のライフ・ベンチャー設立の動機はそこにもある。

  だから、私は、やみくもに独立自営や起業コンサルティングをしてみたいというのではない。

  ベンチャーという言葉ひとつとっても、私は、企業から外に出て独立自営することを「アウター・ベンチャー」(脱サラ)と呼び、企業内での自発的な新事業やプロジェクトの推進、あるいは社内にとどまって脳力開発リーダーとなることを「インナー・ベンチャー」(超サラ)と区分けして使っているのである。

  もちろん、ライフ・ベンチャーは、このどちらをも、公平に支援していくつもりであり、可能な限りサラリーマン・ベンチャーである「社内ベンチャー」(企業内経営者)をおすすめしている。

  ふつう、脱サラの成功率は3%で至難の技といわれている。その平均年齢は33歳程度で、場合によってはその前後、28歳から38歳までの間が最も多いといわれている。

  若年者以上に中高年者にとっては、“ 針の穴 ”を通るくらいむつかしくみえそうだが、脱サラの成功、失敗は、その人の心がまえをみれば脱サラする前におおよそその目安をつけることができるのではないだろうかとも思う。それは、企業を飛び出す前に、自分がその企業に十分に貢献していたかどうかが判断材料ともなる。出身企業への貢献度を一つの基準にして、これからのベンチャーが成功するかどうかを予測することが可能なのである。つづく