「オルタナ」森編集長よりNET上でご紹介いただたNPO法人「もったいない学会」石井吉徳会長の地球環境に関する将来像分析は、今後の「生涯現役社会づくり」推進活動面で重大な予測要素となり得る。そこで、以下直接そのご高説を掲載させていただきたい。

プロフィール(石井吉徳/いしい・よしのり)
東京大学名誉教授、「もったいない学会」会長、工学博士。1955年、東京大学理学部物理学科(地球物理学)卒業、帝国石油、石油開発公団などに16年間、東京大学工学部23年間(資源開発工学科助教授、教授)。93年退官、名誉教授。国立環境研究所副所長を経て96年から98年まで所長。その後、富山国際学園特命参事・同大学教授を経て、2006年もったいない学会設立、会長。  著書に『エネルギーと地球環境問題』(愛智新書)、『石油最終争奪戦』、『石油ピークが来た―崩壊を回避する「日本のプランB」』、『知らなきゃヤバイ! 石油ピークで食糧危機が訪れる』(いずれも日刊工業新聞社)など 
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3・11と日本

  人は自然の恵みで生かされています。今は石油文明、その石油生産がピークにあります。いわゆる石油ピークですが、それは食糧の生産ピークを意味します。そして運輸、合成材料なども殆どすべては石油依存ですから、石油ピークは文明ピークなのです。その石油が減耗しています。石油減耗ですが、私たちの社会はどう変化するのか、それが本論の主題です。

  そこに3・11です。地震、津浪だけでも大変な国難なのに福島原発の大災害が重なりました。その危機は今も進行中、広範囲な放射能汚染は被害地、岩手、宮城、福島の東北3県に留まりません。
人間への健康被害、特に幼児、女性の未来が心配です。農業、漁業、そして自然の生態系、あらゆる放射性被害が懸念されます。その影響は数十年と長く、子孫へ引き継がれます。原発廃炉そのものも数十年もかかるようです。

  原発安全神話は原子力ムラといわれる人々、政官財の権益構造によって培養されたとされ、知識人、大学もそれに協力したようです。

  3・11後、その構造が次第に明るみに出始めました。とくに第三のメディア、ネットがその暴露に貢献しているようです。
日本は3・11によって、全く変わりました、でもその方向性は未だ定まりません。そのためには国の、社会の基本理念は必要です、それを考えるのが本論です。


1.石油減耗時代、新しい価値観が問われている

  連日、経済成長、浮揚が話題です。もっと財政支出を、産業・雇用対策を政府は考えよ、との大合唱です。しかしすでに日本は世界最大の借金大国、20年間の日本病は益々重体、そこに東日本大震災です、更なる要求、不満が政府にぶつけられます。

  それは可能なのでしょうか、無いものねだりではないでしょうか。何か根本、思考の原点を変えなければならないのではないでしょうか。石油文明を支える「安く豊かな石油」が限界なのです。

  1972年のローマクラブの「成長の限界」が現実になっている、と考えます。当時、エコノミストが「限界」を嫌って一斉攻撃し葬ったのですが、それを助けたのがテクノロジスト、技術至上主義でした。成長願望は原発崩壊後も変わらないようです。

  「地球は有限、資源にも限りが」、何故理解されなかったか

  世界の油田発見ピークは遥か昔の1964年頃でした。そして石油の生産量ピークは2005年、その後は景気の変動とともにプラトーとなっていますが、いずれ原理的な石油減耗時代がくるのでしょう。  (以下 つづく)