◎ ピ ン チ の 時 こ そ チ ャ ン ス な の だ

 25年間のサラリーマン生活は、“ 寄らば大樹の陰 ” であり、安穏でもあった。全身のあらゆるところに、私にはそのサラリーマン “ 習性 ” が身についてしまっていたようだ。

 ベンチャー・アドバイス業というニュービジネスに挑戦する以上、先導役として脱サラに失敗してはサマにならないという意気地はあったものの、いざ “ ライフ・ベンチャー号 ” が進水してみると、さすがに不安だった。何しろ、船主であり、船長であり、同時に水夫長もやり、雑役夫としても、すべてを一人でこなさなければならないからだ。

 可能性に満ちたライフ・ベンチャーの前途は洋々としていたが、それでも “ 処女航海 ” には、内心、不安でびくついた気持ちが潜んでいた。

 「三日、三週間、三カ月、三年目」という諺がある。

 私はサラリーマンの頃、自分自身の体験はもちろん、新人研修の仕事にも従事したことがあるので、よく理解できるが、この諺は半ば真理なのである。

 つまり、学卒の新入社員や転職組の新人をみていると、見切りの早い者では入社三日目で会社を辞めてしまう者が少なくないのだ。とくに営業の仕事は精神的にもしんどく、三週間目、三カ月目の “ 節目 ”  が次に危ない。

 私の場合、三日目に自費で定期券を購入する時、思わず一抹の淋しさを感じてしまった。

 そして、三週間目、新しい健康保険証が送られてきた時、暫く感慨を禁じ得ず、その保険証をじっと眺めていたものだ。  つづく