さて、このコラムでは極めて困難といわれたミドリムシの大量培養に挑んだり、起業したけれどもミドリムシがまったく売れなかったという過去を乗り越えた「昨日の不可能を可能にする」万能超ポジティブ思考法についてご紹介します。

 私は毎週行われる会社の朝礼で、いつもこう言っています。
「ベンチャー企業は“アタマ”をよく使わなくてはいけない」と。ただし、“アタマ”は“頭”ではなく、頭脳をフル回転させろとか、勉強しろという意味ではありません。拍子抜けされるかもしれませんが、「(ア)明るく、(タ)楽しく、(マ)前向きに」の頭文字です。「明るく、楽しく、前向きに」仕事をしていれば、よほどの不運にでもぶつからない限り、誰でも結果としてうまくいく、というのが私の考えなのです。それはもはや、私の信念といってもいいかもしれません。

 この「明るく、楽しく、前向きに」という信念は、私の500回近くに及ぶミドリムシの営業を通して生まれました。実際の回数はもっと多いかもしれません。私は「日本で営業に行っていない会社はない」と言えるほどたくさんの会社に営業に行っています。そしてひたすら断られ続けました。そうしているうちに、段々と分かってきたのです。人間は、100%ロジックでビジネスをするのではない。ロジカルなのは半分ぐらいで、残りの半分は“気分”である、ということが。

 どういうことかというと、今日、営業に行って会った相手はろくに話も聞いてくれず、けんもほろろに断られてしまったが、もしかすると、たまたま体の調子が悪かったのかもしれない、お腹が痛かっただけかもしれない。ひょっとして、1ヶ月後か半年後にもう一度行った場合、ちょうどその時にお子さんが生まれたばかりで、幸せのおすそ分けみたいな気分で契約してくれるかもしれないと。要するに、ビジネスはその内容よりも、そのときの気分次第で契約が決まったり、決まらなかったりすることが、現実にある、ということです。これは3年間の営業で骨身にしみて感じました。

 「そんなに必死に前向きになるのは恥ずかしい」と思う人もいるでしょう。実は私もただ足を棒にして営業しても成果は上がらない、カッコよくない、そう思う人間でした。「いつか自分のアイデアを認めてくれる人が、向こうから現れるはずだ」と待っていました。事実、ミドリムシの大量培養に成功したときは、今日から電話がジャンジャン鳴って対応に困るはずと、事務所で電話を待っていたのです。しかし、電話はまったく鳴りませんでした。「電話回線がパンクしているのだろう」と自分の携帯から電話してみましたが、悲しいことにすぐにつながりました。

 断言してもいいです。待っている限りその可能性はゼロです。何か画期的で新しいことをやろうとするのであれば、自分から攻めていく姿勢でいることが、「常識以前の常識」なのです。

 ですから、私は相手の気分を少しでも良くするためには、自分たちが「明るく、楽しく、前向き」でなければならないと思うのです。そして、どうせ気分で左右されるのですから、1度や2度断られたぐらいでめげることはない。めげずに何度でも諦めずにチャレンジし続ければいい。「明るく、楽しく、前向き」な気持ちで相手と向き合えば、まとまらない話もまとまるかもしれません。契約に至る可能性も上がるかもしれません。私は本気でそう考えているのです。  つづく