それが1985年5月自費出版の『ライフ・ベンチャーのすすめ/●チャンスをつかみとる“人生三段跳”戦略』である。独立1年間の企業訪問で、定年退職予定者への退職準備教育の実態調査を続けた結果、殆どの大企業が人事部内に「社内相談室」はあるものの、退職金試算や企業年金加算で気楽な家庭隠退を勧める年金生活アドバイスに終始する類いだった。「定年後は、厚生年金に企業年金タップリの年金生活で欧米先進国ハッピーリタイアメントを大いに楽しんでください」と告げるのが、相談室長の役目だと知らされた。

  「衣食足りて礼節を知る」のは好いが、「衣食余りて生きがい失う」の元気高齢者が幾ら増えても、人間の頭脳・体力から生み出される付加価値は望めない。既述した故城野 宏氏が唱えた日本シルバー・ユニオン創設趣旨には、「国民の生きがい喪失が国家没落につながる」意識から生まれた、当時の日本財界や官僚リーダー役が真剣に考えたのは、意欲的な定年OBへの挑戦目標設定にあった。そのことを考えると、実に失われた日本リーダー役の30年が、何といっても惜しい限りだ。

  仮に、その提言が陽の目を見ていたとしても、やはり、当時のカネ余り・経済大国気分のもとでは、定年まで働きづめだった企業戦士に、まだまだ頑張る「生涯現役」など全く通用しなかったかも知れない。しかしバブル崩壊後の日本社会少子高齢化への国策に、多少なりとも影響した筈だ。日本の失われた30年が、国家財政の破綻、年金制度の崩壊、海外企業進出の空洞化、労働人口激減予測…等々、いずれを考えても高齢者急増時代は「生涯現役」で健常高齢者が立ち上がらざるを得ない環境条件を整備を急ぎたい。

  では具体的に、どうチャレンジすべきか。そのチャレンジ対象のイメージがみえないと、本当に役立つ知恵も浮かばない。だから、賛同者をふやすこともできないのが実状だと思う。いま充分蓄えもあり、裕福な年金生活を楽しめる高齢者たちの本音は、自分に関係ない「生涯現役」など有難迷惑だ、と写るかも知れない。その人たちに言いたいのは、ぜひとも子孫の日本将来を考えて欲しい。「生涯現役」は、やりたい人がやれば良いという20世紀の社会常識から、社会情勢が急変している21世紀現実の国難をどう認識されておられるかである。

  その実状変化は、昨今の3・11大災害・原発被害や何十年振りの豪雪被害者の困窮生活への対策に、国・行政対策だけに頼れないマスコミ報道だけでも、日々私たちはうんざりする。また、毎年3万人を超す自殺者数、社会不安が及ぼす犯罪増加、就活・婚活に悩む若者への夢ある未来づくり絶望感。これら全てに日本人である限り責任をもとうというチャレンジ精神が「生涯現役」に直結しなければならない。誠心誠意を込めて協力する生涯現役実践者が少ないと、将来に国益をもたらす政治家を選ぶ選挙も望めない。

  「子孫へのツケが累積」「海外の日本失望売り」「国民資産&消費も激減」など社会不安の増大を阻止する国策的な『生涯現役社会づくり支援ネットワーク』構想に、少しでも健常高齢者の理解者を一人でも多く増やすのが、シリーズ『生涯現役塾』チャレンジである。そのための、最高事例として、今月22日(水)開催の『第314回:生涯現役塾』は、社会起業ベンチャーマン新川講師を招いての老・老介護『かい援隊100万人構想』を私たちは学びたい。 (以下 つづく)