藻谷浩介氏:次世代育む力 優れた地
2017年7月11日 お仕事日 本 生 涯 現 役 推 進 協 議 会 &
NPO法人 ラ イ フ ・ ベ ン チ ャ ー ・ ク ラ ブ 活 動 で
ご 支 援 く だ さ る 会 員 皆 様
ご参考URL=http://www.yomiuri.co.jp/kyushu/news/20170711-OYS1T50039.html
有識者に聞く<1>日本総合研究所(東京)主席研究員 藻谷浩介さん
次 世 代 育 む 力 優 れ た 地
読売新聞西部本社が、九州・沖縄・山口の将来像を考えるために展開している企画「興おこす」。少子高齢化や人口減少、科学技術の急速な進歩などで社会、経済構造の激変が予測される中、私たちは未来をどのように創造していくべきか――。今回は有識者に、この地域の潜在力や可能性、課題と克服へ向けた方策について聞いた。
――九州などの人口が減少し、東京圏に人口が集中する状況をどう見るか。
「東京一極集中で、東京とそれ以外の地域の格差が広がっているという『思い込み』に惑わされてはいけない。東京で増えているのは65歳以上の高齢者だ。経済活動の主体となる15~64歳の生産年齢人口は減っている。原因は少子化で、東京圏は出生率が低く、次世代の育成が進んでいない」
「東京では今後、医療費が増大する上、地価が高いため、病院や介護施設を増やすのも容易でない。一方、九州などでは、農家や中小の商工業者など生涯現役の人が多く、高齢者が元気だ。生活費も安い。決して、東京が恵まれているということではない。むしろ、次世代を育成する力は九州や山口の方が持っている」
――九州・沖縄・山口の人口減少をどう考えるか。
「2015年の国勢調査から、親世代と子世代の人口を比べて『次世代再生産性』という数値を出した。100%なら親世代と同数の子供が生まれたという指標だ。日本全体では68%。親世代の3分の2しか子供が生まれていない。東京は55%しかない。一方、九州・沖縄・山口はいずれも平均を上回る。沖縄の93%をトップに、鹿児島は84%、宮崎は83%だ」
――要因は何か。
「『子は社会の宝』という考え方が色濃く残っている。宮崎県西米良村では、高齢化が進んだ影響もあり、すでに高齢者数が減り始めているのに対し、子供は増えている。高齢化が進む一方、子育て支援を頑張っている北九州市の再生産性は74%で、政令市の中では広島市の75%に次いで高い」
――少子化対策はさらに何をすべきか。
「3人、4人と子供を持ちたい親世代に、3人目以降は教育費などの支出が軽減される仕組みを作るべきだ。多くの子供が欲しい人の希望をかなえる社会構造にすることが少子化問題の解決策となる。九州・沖縄・山口には、地域が子育てを温かく見守る相互扶助の風土がある。次世代の子供を育む希望の地になれる」
――子供が生まれても、東京などへ流出することもある。そこはどうすべきか。
「東京は他の地域の若者を吸収してきたのに、次世代を育成できず、ブラックホールのように日本全体の人口を減少させている。生活費が安く、助け合いの気風が残り、子育てしやすい九州や沖縄、山口などの地方圏に、若者を戻す取り組みを進めていかなければならない」
「解決策は地域外に出ていくお金を減らすことだ。東京などから物を買い過ぎているのをやめるべき。意識して地元の産品に使う金額を1%増やすだけでいい。100円使う内の1円だ。人口1万人の自治体でも、それだけで2億円程度の地元消費が増える。雇用にすると約100人分にもなる。地域内でお金を循環させれば、持続可能になっていく」
藻谷浩介氏 平成の大合併前の約3200市町村すべてを訪問した経験を持つ。地域振興や人口問題などを研究しており、「デフレの正体」「里山資本主義」などの著作でも知られる。山口県周南市出身。53歳。
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有識者に聞く<1>日本総合研究所(東京)主席研究員 藻谷浩介さん
次 世 代 育 む 力 優 れ た 地
読売新聞西部本社が、九州・沖縄・山口の将来像を考えるために展開している企画「興おこす」。少子高齢化や人口減少、科学技術の急速な進歩などで社会、経済構造の激変が予測される中、私たちは未来をどのように創造していくべきか――。今回は有識者に、この地域の潜在力や可能性、課題と克服へ向けた方策について聞いた。
――九州などの人口が減少し、東京圏に人口が集中する状況をどう見るか。
「東京一極集中で、東京とそれ以外の地域の格差が広がっているという『思い込み』に惑わされてはいけない。東京で増えているのは65歳以上の高齢者だ。経済活動の主体となる15~64歳の生産年齢人口は減っている。原因は少子化で、東京圏は出生率が低く、次世代の育成が進んでいない」
「東京では今後、医療費が増大する上、地価が高いため、病院や介護施設を増やすのも容易でない。一方、九州などでは、農家や中小の商工業者など生涯現役の人が多く、高齢者が元気だ。生活費も安い。決して、東京が恵まれているということではない。むしろ、次世代を育成する力は九州や山口の方が持っている」
――九州・沖縄・山口の人口減少をどう考えるか。
「2015年の国勢調査から、親世代と子世代の人口を比べて『次世代再生産性』という数値を出した。100%なら親世代と同数の子供が生まれたという指標だ。日本全体では68%。親世代の3分の2しか子供が生まれていない。東京は55%しかない。一方、九州・沖縄・山口はいずれも平均を上回る。沖縄の93%をトップに、鹿児島は84%、宮崎は83%だ」
――要因は何か。
「『子は社会の宝』という考え方が色濃く残っている。宮崎県西米良村では、高齢化が進んだ影響もあり、すでに高齢者数が減り始めているのに対し、子供は増えている。高齢化が進む一方、子育て支援を頑張っている北九州市の再生産性は74%で、政令市の中では広島市の75%に次いで高い」
――少子化対策はさらに何をすべきか。
「3人、4人と子供を持ちたい親世代に、3人目以降は教育費などの支出が軽減される仕組みを作るべきだ。多くの子供が欲しい人の希望をかなえる社会構造にすることが少子化問題の解決策となる。九州・沖縄・山口には、地域が子育てを温かく見守る相互扶助の風土がある。次世代の子供を育む希望の地になれる」
――子供が生まれても、東京などへ流出することもある。そこはどうすべきか。
「東京は他の地域の若者を吸収してきたのに、次世代を育成できず、ブラックホールのように日本全体の人口を減少させている。生活費が安く、助け合いの気風が残り、子育てしやすい九州や沖縄、山口などの地方圏に、若者を戻す取り組みを進めていかなければならない」
「解決策は地域外に出ていくお金を減らすことだ。東京などから物を買い過ぎているのをやめるべき。意識して地元の産品に使う金額を1%増やすだけでいい。100円使う内の1円だ。人口1万人の自治体でも、それだけで2億円程度の地元消費が増える。雇用にすると約100人分にもなる。地域内でお金を循環させれば、持続可能になっていく」
藻谷浩介氏 平成の大合併前の約3200市町村すべてを訪問した経験を持つ。地域振興や人口問題などを研究しており、「デフレの正体」「里山資本主義」などの著作でも知られる。山口県周南市出身。53歳。