日 本 生 涯 現 役 推 進 協 議 会 &  
       NPO法人 ラ イ フ ・ ベ ン チ ャ ー ・ ク ラ ブ  活 動 で 
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   ネ ッ ト で 仕 事  4 0 0 万 人 に 迫 る
           3 年 で 2.6 倍 、 人 手 不 足 補 う


  ネットを媒介に企業が仕事を発注し、不特定多数の個人が働く「クラウドソーシング」が拡大している。その担い手は400万人に迫り、労働力人口(6697万人)の5%以上を占める見通し。企業が多様な業務に外部人材を積極活用し始めている。子育て中の主婦など埋もれていた人材の掘り起こしが、経済成長の壁と懸念される人手不足への対応策となる可能性がある。

  クラウドワークスなど大手5社の登録者数を基に日本経済新聞社が推計したところ、オンラインで仕事を請け負う「クラウドワーカー」が2016年末で約300万人となった。

  17年末までにはさらに3割弱増え、3年前の2.6倍になる見通し。業界では20年に1千万人を超えるとの見方もある。米国ではこうしたフリーランスの働き手が5500万人に上り労働力人口の35%を占める。

  クラウドソーシングはクラウド(群衆)とソーシング(業務委託)を合わせた造語だ。米国で2000年代半ばに注目を集め、その後、日本でも広まった。

  当初は専門色の濃いプログラム関連の仕事を高価格で、データ入力など特別なスキルが不要な仕事を低料金で発注していた。最近では、企業が多様な仕事を進めるために社外の働き手として使い始めた。

  パナソニックは写真の加工やカメラの外装デザインの仕事にクラウドソーシングを活用したことがある。日立物流系輸送会社、バンテック(川崎市)は新事業立ち上げ時の調査に活用する。やりとりは「全てネット上」(バンテック)。三菱UFJフィナンシャル・グループはIT(情報技術)と金融を融合したフィンテックの推進専門組織のロゴデザインを10万8千円で募集した。

■ 1 6 万 社 が 顧 客

  企業と働き手をつなぐのが、クラウドワークスなどだ。同社の利用企業は16万社と2年前の2倍に増え、経済産業省、総務省など省庁も利用する。早朝・深夜に対応でき、企業への勤務経験がある主婦などに、時給1000円、月50時間以上を目安に仕事を仲介する事業を展開している。

  かつては航空会社に勤め、今は育児に忙しい東京都江戸川区に住む辺田奈緒さん(38)も利用者の一人だ。自宅で目の届くところに子どもがいながら、文章の校閲や編集業務を手掛ける。「自分で仕事を探さなくても案件が入ってくる。収入も最大で月15万円増えた」と喜ぶ。

  副業を容認するヤフーの社員、岡直哉さん(28)はクラウドソーシング会社、ランサーズ(東京・渋谷)を通じてデザインの仕事を請け負う。「飲食店のサイト制作など社内で経験したことのないビジネスも手掛け、技能を磨ける」と話す。

  組織に属する旧来型の働き方では、勤務時間に対して給料を得ている要素が濃い。成果に対価が払われるクラウドソーシングの台頭で、介護などで出社が難しい人や子育てに忙しい人など、働きたくても働けなかった人の活躍がネットによって広がる。

  クラウドワーカー増殖の最大のポイントは深刻な人手不足だ。4月の有効求人倍率(季節調整値)は1.48倍と、バブル経済期の水準を超えた。43年ぶりの高さで、企業は簡単には人材を確保できない。

  少子高齢化の本格到来で、長期的にも労働力人口の減少は深刻だ。このまま手をこまぬいていては、14年の約6600万人から30年には5800万人と800万人近く減ってしまうとの試算もある。

■ シ ニ ア ・ 女 性 カ ギ

  労働力として経済活動に参加している人の比率「労働力率」をみると、働き盛り世代の男性は100%近い一方で、30代女性は約75%にとどまる。定年後のシニアも低い。これらの比率を10~15ポイント引き上げるだけで、30年にも6400万人を維持できると推計されている。労働力を増やすカギになるのはやはり女性と高齢者だ。

  クラウドワーカーが今後さらに広がるには企業がニーズに応じた質の高い労働力を確保できるかにかかっている。現状ではクラウドワーカーのスキルの差は大きく、企業は手探りで利用している面もある。批判されたキュレーション(まとめ)サイトの記事の誤りや著作権侵害は、運営側だけでなく執筆したクラウドワーカーにも問題があった。

  クラウドワークスは16年から広島のオフィス運営会社などと提携し、主婦らに業務に必要な知識を教える研修を始めた。今後は行政と組んでスキルのある人が未経験者に教育する環境を整える。

  ランサーズは4月、新会社を設立。独自技術を活用して、制作物をもとに働き手の技能を数値化する有料サービスを始めた。企業側からは仕事を発注する際の基準になり、能力の高い人はその分、仕事で得られる報酬が高くなる。見える化のニーズは多いとみて、初年度10億円の売り上げを見込んでいる。(吉田楓)