【 動 物 実 験 廃 止 で 資 生 堂 を 動 か し た 女 性 た ち 】
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東瀧 邦次さま

いつもお世話になっております。

 資生堂が2013年2月28日、「化粧品の動物実験を2013年4月から原則廃止する」と発表しました。実はその影には、18年間にわたって、資生堂など日本の大手化粧品メーカーに働きかけてきた市民運動の存在があったのです。

 「資生堂さん、花王さん、カネボウさん、今すぐ動物実験をやめて下さい」--。
2009年3月8日、東京・渋谷から原宿にかけての明治通りで、「化粧品の動物実験反対」のデモ行進がありました。筆者はたまたまこれを目撃しました。

 プラカードやのぼりはピンク色で統一され、ウサギの着ぐるみや「かぶりもの」を身に着けていた人もいました。そして何より、参加者の大半が若い女性たちだったのが印象的でした。

 女性らしさに包まれた雰囲気の中で、具体的な企業名を挙げた強烈なメッセージが力強く感じられた。

■ 2 0 0 9 年 か ら 反 対 デ モ を 開 始

 デモを主催したNPO法人 動物実験の廃止を求める会(JAVA)の亀倉弘美さんは、大学生だった1995年にJAVAの化粧品問題担当となり、それ以来18年間、化粧品の動物実験問題に関わり続けた。

 当初は、日本の化粧品メーカーの良心を信じて、緩やかな運動を展開したが、日本のメーカーはそれを無視し続けた。

 業を煮やして、2009年から路線を変更した。資生堂を標的にして署名運動を展開。銀座通りをデモ行進し、資生堂の本社前に詰め掛けたこともあった。「トップメーカーを動かせば、2位以下の企業も動く」という読みからだった。

 資生堂も当初これを無視していたが、2010年から、専門家を集めた動物実験問題の「円卓会議」に亀倉さんを呼ぶようになり、耳を傾け始めた。

 今回の決定は、動物愛護の観点から、動物実験を経た化粧品が3月11日以降欧州連合(EU)域内で販売できなくなるのに対応するためと資生堂は説明している。

 しかし、例えば米国では、1989年にレブロンとエイボンが動物実験を廃止するなど、実は20年以上前から、米国や欧州ではこの問題が大きな社会問題になっていた。

 化粧品やシャンプー開発の動物実験では、主にウサギが使われ、実験台に頭部を固定されたウサギの目に試薬がたらされる。実験が終わると、そのウサギたちは殺される。

 これに強く抗議したのは、米国や欧州の女性たちだった。「自分たちの『美の追求』のために、動物たちが殺されるのは我慢できない」。そんな声が各国で上がった。

 しかし、日本の厚生労働省も、化粧品メーカーも、この問題には鈍感だった。今回の資生堂の動物実験廃止は、欧州の規制がきっかけだったが、同様の法規制を日本国内でする動きは、まだない。

■ 花 王 ・ カ ネ ボ ウ は 追 随 せ ず

 そんな中での資生堂の決定に対して、JAVAの亀倉さんは「高く評価する」と話したが、花王やカネボウ、コーセーなど他の大手メーカーに目立った追随の動きはない。

 こうしたメーカーは、対欧州製品だけは動物実験を廃止して、日本国内向けの製品には手を付けていない。日本には法律そのものがないので仕方ないといえばそれまでだが、「日本の消費者が馬鹿にされている」と見る向きもある。日本の政治家たちも動きが鈍い。

 日本の消費者も、今までこうした社会課題について関心が高かったとはとても言えない。その点ではマスメディアの責任もあるだろう。だが、若い女性たちの問題意識は、今後、日本でも高まっていく可能性がある。

 2013年3月10日には、「化粧品の動物実験を考えるシンポジウム」が東京・日比谷で開かれ、そこには女優の杉本彩さんや、元マリ・クレール日本版編集長の生駒芳子さんらオピニオン・リーダーたちが集まる。今後こうしたイベントを通じて「共感」が生まれ、日本の消費者の価値観は少しずつ変わっていくだろう。

 オルタナ本誌でも、14号(2009年7月号)の第一特集「シャンプーで世界を変える」で、化粧品の動物実験問題を取り上げた。(オルタナアプリで無料ダウンロード可能)

 「シャンプー一つをとっても、動物実験だけではなく、合成界面活性剤による健康への影響や環境負荷、原料の調達先である発展途上国の児童労働や人権問題、フェアトレード、容器リサイクル問題などさまざまな問題をはらんでいる」

 もし、日本の多くの女性たちが「動物実験をしているかどうか」を基準に化粧品を選び始めれば、それは資生堂以外の大手化粧品メーカーにとって大きな事業リスクになりかねない。

■ 法 律 だ け の 順 守 で は 不 十 分

 CSRの観点からも、企業が社会課題に正面から取り組まない場合、NGO/NPOや市民からの批判が高まる恐れがある。

 日本企業は「コンプライアンス」を法令順守と誤訳し、「ただ法律を守っていれば良い」と高をくくっているフシがある。

 コンプライアンスの真髄は「社会との対話」であり、社会が何を求めているのかを対話を通じて汲み取り、前向きに対処していくことだ。

 これからの社会では、憲法や法律など「ハード・ロー」を守っているだけでは、企業は評価されない。市民感情や消費者心理を含めた「ソフト・ロー」を企業が視野に入れなければならない時代が、日本にもやって来た。

 今回の資生堂の動物実験廃止は、日本の市民運動が企業を動かした、希有な事例になった。と同時に、CSRの観点からも、大きな「一里塚」になるだろう。                                          (オルタナ編集長 森 摂)
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詳しくは⇒ http://www.nougaku.jp/sympo.html#20130307
◆3/9 シンポジウム「地域資源循環型農村と都市の市民をつなぐ」
一般財団法人CSOネットワークは、持続可能な地域を実現するため、
「農」「環境」「地域づくり」をテーマに、農業者、住民、自治体、NPO、企業など異なるセクターの連携や、首都圏と農村の交流などについて皆で考えるシンポジウムを開催します。参加費無料。 
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ところ: 東京国際フォーラム ガラス棟会議室G510(千代田区丸の内3-5-1)
詳しくは⇒ http://www.csonj.org/event/130309sympsium
◆3/12 田坂広志氏「社会起業家が切り拓く参加型民主主義の時代」
社会起業大学は、第7期スタートに先立って田坂広志名誉学長の特別公開講座を開催します。昨年末の衆議院選挙で、民主主義自体のあり方を変えていこうという「デモクラシー2.0イニシアティブ」という動きが出てきました。インターネットが普及し、国民が社会に直接発信できる今の時代に、政治と有権者の新たな関係を考えるムーブメントです。田坂名誉学長が「参加型民主主義」について話します。
とき: 3月12日(火)19:00~21:30(受付開始 18:30)
ところ: 津田ホール(東京都渋谷区千駄ヶ谷1-18-24)  参加費:3000円
詳しくは⇒ http://www.socialvalue.jp/seminar/detail000639.html
◆3/14 セミナー「被災地での青少年への支援――東北の現在とこれから」
公益社団法人日本フィランソロピー協会は、子どもたちへの支援活動を広げるきっかけになることを目的に、企業が取り組む被災地の青少年支援事業をまとめた『被災地青少年支援企業事例集』を2013年2月に発行しました。本書の事例の中から、企業と福島の現地NPOの方から具体的な話を聞けるセミナーを開催します。
とき: 3月14日(木)15:00~17:00(セミナー終了後、希望者のみの懇親会あり)
ところ: 大日本印刷株式会社 コミュニケーションプラザ ドットDNP(東京都新宿区市谷田町1-14-1 DNP市谷田町ビル)
参加費:一般5000円(協会会員2000円、学生1000円)
詳しくは⇒ http://www.philanthropy.or.jp/seminar/281/
◆3/9 「第4の革命サミット ――エネルギーの自立を、自らの手で!」
ユナイテッドピープルは、エネルギーシフト実現のため、ドキュメンタリー映画「第4の革命 - エネルギー・デモクラシー」の上映運動を日本全国で実施してきました。2013年3月9日には、本映画を制作したフェヒナー監督や再生可能エネルギー実践事業者らを招き、第4の革命サミットを開催します。
とき: 3月9日(土)午後6時半~午後9時(開場:午後6時10分)
ところ: 横浜市開港記念会館 講堂(神奈川県横浜市中区本町1-6)
参加費:1995円(学生は1000円) 定員:300人
詳しくは⇒ http://peatix.com/event/9852
◆3/20  「eco検定アワード2012」表彰イベント
東京商工会議所は、「eco検定アワード2012」受賞エコユニット・エコピープルの活動事例発表および環境推進担当者の交流会を実施します。
事例紹介により企業における環境活動のヒントを得られるほか、業種・規模の異なる企業との交流により、課題解決の糸口を共に考えることのできる機会です。
とき: 2013年3月22日(金) 14:00~19:00
ところ: 東京商工会議所ビル 4階「特別会議室A」(千代田区丸の内3-2-2)
参加費:無料 定員:100人 詳しくは⇒ 
http://event.tokyo-cci.or.jp/event_detail-47211.html
◆3/20 「HAPPY DAY TOKYO 2013」
国際連合は3月20日を「International Day of Happiness(国際幸福デー)」と制定しました。この日を日本でも広め、幸福について考え、感謝する日として定着させたいという想いから「HAPPY DAY TOKYO 2013」を開催するプロジェクトが立ち上がり、このほど開催が決定しました。トークショーやミニコンサート、体験活動、物販・展示・飲食ブース、映画上映など、様々なコンテンツによって、楽しさや喜びを提供するイベントです。「HAPPYDAYに幸福の種を」を合言葉にコンテンツを提供することで、HAPPYDAYの認知度を高め、来場者それぞれが自らの「幸福」について考えるきっかけにしたいと考えています。
とき: 3月20日(水)10:00~16:00
ところ: 日比谷公園 噴水前広場(東京都千代田区日比谷公園1)
詳しくは⇒ http://happyday-project.org/
◆3/20 シンポジウム「都市に生命を、おカネに意志を!」
震災は、いかに東京が、エネルギーや食において他の地域に支えられているのかを、明らかにしました。持続可能でグリーンな復興に向けて、東京自身は、どう変わるべきなのでしょうか。国際青年環境NGO A SEED JAPANは、「農業」と「金融」にフォーカスをあて、グリーン・エコノミー シンポジウムを開催します。
とき: 3月20日(水・祝)13:00~17:00(受付開始:12:30)
ところ: 西武信用金庫本店8階ホール(東京都中野区中野2-29-10)
参加費:一般1000円 学生500円 A SEED JAPAN会員500円
詳しくは⇒ http://www.aseed.org/2013/02/1894/
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◆オルタナの企業読者組織「グリーン経営者フォーラム」全国展開へ
「ビジネスの軸を23.4°傾けよう」――23.4°とは地軸の傾きです。この傾きのお陰で、地球上に四季や生物多様性が生まれたのです。グリーン経営者フォーラムは、エコ・ソーシャル・エシカルな価値観を共有する経営者のネットワークです。経営者の価値観が23.4°だけ変われば、世の中が変わります。「政権交代」も「革命」も要りません。グリーンな価値観を経営者が持てば、社員、取引先、お客さんたち、そして世の中が変わります。そんなネットワークを全国に広げようとしています。是非、御参加下さい!
★2/18 「グリーン三重」立ち上げセミナー 無事終了致しました。
★2/19 「グリーン大阪」立ち上げセミナー 無事終了致しました。
★2/26 「グリーン東京」立ち上げセミナー 無事終了致しました。
--多数の御参加、心から御礼申し上げます!
★3/11 「グリーン福岡」立ち上げセミナー 
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