「中高年の連帯組織/日本シルバーユニオン」第一次百万人構想に刺激をうけ、1984年3月にサラリーマン人生25年を、自己スケジュール予定の定年50歳前の48歳8ヵ月で卒業した。めざすはご活躍中の城野 宏氏提唱する脳力開発を活かした定年準備の企業研修企画を売込みすることだった。

  社外勉強会に積極的な参加をしながら、構想していた“人生冒険”を志す仲間づくりの脳力開発研修事業のライフ・ベンチャー(株)を社名にして、勤務先企業からの一部出資も得て、生涯現役挑戦者のユニオンづくりを目論んだ。企業組織のサラリーマン人生を卒業後に、ベンチャー事業企画を望む人たちが集まるための仕掛けづくりを夢見たのである。

  当時55歳が定年の大企業で実施していた退職予定者への「定年準備講座」の実態を尋ねてみると、大低の企業人事の研修担当者は一様にほぼ次のような内容だった。“退職予定者には夫婦同伴で参加してもらい、まず永年ご勤務ご苦労様!と奥様から本人に感謝していただく。そしてご本人には充分にゆとりある企業年金と厚生年金、その上に全く自由な老後人生という、カネと時間の両面備わった黄金人生の至福期が到来したのです”と。

  “ただし毎日ご出勤の代わりにこれからは、自宅で一日24時間を自己管理するライフプランで趣味や家族旅行など、現役時代の職場からはフリーになったのだから、どうかOB人生は大いにエンジョイしてください!・…と伝えます。” といとも気楽にハピーリタイアメントできる先輩退職者たちをさも羨むような話で市場調査の立場では期待外れだったことが多かった。

  1988年11月、日本生産性本部主催の洋上セミナーで企業研修担当者・労働組合役員と企業研修受講者との生きがい人生研修でのグループリーダー役を依嘱されたことがある。その際にも有名大企業の人事担当者との「定年退職準備講座」に関する意見を率直に尋ねた。やはり定年後の人生設計については、欧米流ハピーリタイアメント方式が無難で、生涯現役に老後も敢えて挑むベンチャー志向を勧めるのは、サラリーマン卒業者には不適だとの意見を執拗に聞かされた。

  そのために定年退職予定者を多数擁する大企業の退職準備講座への内容革新を提案する営業活動にロスの多いこともあり、洋上セミナー以前の1985年10月から「生涯現役実践道場/ライフ・ベンチャー・セミナー」構想に関する限り、企業売込み方針から関心を持つ個人を対象に切り替えていた。同セミナー開始以来、会員制の生涯現役研修事業に集中して、会員中心の生涯現役実践活動の発表と参加者全員を主役とする研鑽永続に踏み切っていたのは正解だったと思う。(つづく)