「超高齢社会の到来で、対処すべき最優先の国策は何ですか?」という質問にあなたはどう応えますか。国民の一人ひとりにまたも尋ねてみたいご指摘の記事に、本日付日経朝刊“大機小機”欄で実感しました。まずはお読みください。

【 年 金 財 源 の つ け 回 し 】

  基礎年金の国庫負担の増分をどう賄うかは、迷走に迷走を重ねてきた。発端は2004年の年金改正だ。この改正によって09年度から、基礎年金の財源に占める国庫負担の割合を、従来の3分の1から2分の1に引き上げることになった。このためには毎年度約2.5兆円が必要となるが、これは恒久財源で賄うというのが本来の趣旨であった。

  ところが恒久財源は確保できなかった。そこで、09年度から11年度(当初)までは、財政投融資特別会計などの埋蔵金を使ってしのいだ。つまり、国の財源を減らして対応したということである。これが「年金財源のつけ回し」の第1幕である。

  ここで発生したのが11年3月の東日本大震災である。政府は、震災復興のために補正予算の編成を余儀なくされ、結局、第1次補正予算(11年5月)では、4兆円の歳出のうち2.5兆円について、当初予算に計上されていた基礎年金の財源の転用で賄った。

  すると、自動的に年金の支払いは年金の積立金を取り崩すことになる。つまり、年金の積立金を取り崩して震災復興に充当したことになる。これは、将来の年金原資を年金と無関係な分野に使ったという点で、かなり悪質である。これがつけ回しの第2幕である。

  その後、第3次補正予算(11年10月)でこの2.5兆円は、復興債を使って積立金に返済された。返済されたのは結構なことだが、この時点で、基礎年金の国庫負担分は復興債によって賄われたことになる。これもそうとう理解に苦しむ対応である。これがつけ回しの第3幕である。

  そして、12年度予算では、今度は交付国債が発行されることになった。年金の積立金を取り崩し、その分は「将来、求められたら払う」と約束するということである。しかしこれは、現時点では国が負債を負っていることになり、通常の国債発行と同じである。こうした措置を取ったのは「国債発行を44兆円以下にする」という約束を守るための苦肉の策だったと考えられる。これがつけ回しの第4幕である。

  以上のような対応は、国民への説明責任という点で大きな問題がある。多くの国民には複雑で分からないだろうからといって、こうしたごまかしを続けていると、やがては国民の信頼そのものを失うことになるのではないか。(隅田川)
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