日 本 生 涯 現 役 推 進 協 議 会 &
  NPO法人 ラ イ フ・ベ ン チ ャ ー・ク ラ ブ  の 皆 様

いつもお世話になっております。

  この2月24日、「サステナブル・ブランド国際会議」(Sustainable Brands)が日本で初めて開催されます。同会議は2010年に米国サンディエゴで始まり、その後、欧州やアジア、中南米にも拡大し、今や世界11カ国で開催される国際イベントになりました。

  これを機に、改めて「サステナビリティ(持続可能性)とブランドの関係」を考えてみました。

  世界で初めて「サステナビリティ」という言葉がメディアで大きく取り上げられたのは、私の記憶では1987年4月のことです。ブルントラント・ノルウェー首相(当時)を委員長とする「環境と開発に関する世界委員会」が東京で会議を開き、その最終日に東京宣言「持続的な開発に向けて」で発表した概念でした。実は、私も新聞社の環境庁(当時)担当記者として、赤坂プリンスホテルで開かれた東京会議を取材した一人でした。

  「持続的開発」の概念は、同年の報告書「Our Common Future」で詳しく書かれましたが、「将来の世代の欲求を満たしつつ,現在の世代の欲求も満足させるような開発を指す。この概念は、環境と開発を互いに反するものではなく共存し得るものとしてとらえ、環境保全を考慮した節度ある開発が重要であるという考えに立つもの」と定義されています(環境省ホームページから)。

  その背景には、グローバリゼーションの波頭がありました。「南北問題」として知られる先進国と発展途上国の利害対立、海外攻勢を強めたグローバル企業に対する反発や、環境破壊に対する危機感、自然資源の奪い合いなどの要因がありました。ローマクラブによる「成長の限界」やレイチェル・カーソンの「沈黙の春」などの著作も議論に大きな影響を与えました。

  それからほぼ30年が経ち、グローバリゼーションは格段に進みました。NAFTA(北米自由貿易協定、1992年)やTPP(2016年)に代表される多国間自由貿易の枠組みは、あらゆる資源や財の国際化を進めると同時に、特に途上国の貧困や環境問題を悪化させる危険性を常にはらんでいます。

  こうした議論で、常に批判の矢面に立たされるのがグローバル企業です。グローバル企業にとっては、グローバリゼーションの負の側面は常に事業リスクになるとともに、途上国を起点とするサプライチェーンやレピュテーション(評判)のリスク要因として無視できません。

  「サステナブル・ブランド」は、こうした負の側面や社会的課題に正面から向き合い、社会や市民と対話をし、ともに健全な発展を目指すための、一つの試みだと私は考えます。まさにブルントラント委員会の「持続的開発」と軌を一つにしています。

  一方、ブランド構築の試みは日本では90年代から始まり、当初は製品ブランドの確立、その後はコーポレートブランドの価値向上に向けての動きが高まりました。この流れが、いま「サステナビリティ」と結びつき、「サステナブル・ブランド」あるいは「ソーシャル・ブランド」として、その重要性が注目されていると考えます。

  製品ブランドの場合、企業のステークホルダーは主に顧客であり、コーポレートブランドでは顧客に加えて株主・投資家や金融機関、行政、学生などに広がりました。そして、「サステナブル・ブランド」のステークホルダーは従業員・労働組合、NGO/NPO、市民や市民団体、地域、大学など研究機関など格段に広がりました。

  こうした多様なステークホルダーとの長期的な関係性の構築こそが、ISO26000で強調される「ステークホルダー・エンゲージメント」であり、企業の持続的な発展のために欠かせない作業なのです。

  多くの場合、「ブランド」はグローバル化と表裏一体であり、だからこそ、多様なステークホルダーとのエンゲージメント(歯車のかみ合わせ)が大事です。

  もちろん、サステナブル・ブランドはグローバル企業や大企業だけのものではありません。社会的課題の解決は大企業だけでできるものではなく、NGO/NPOや地域の中堅企業、行政などの協力が不可欠です。そして、社会的課題の課題に参画することがそれぞれの持続可能性を高め、(NGO/NPOにとっても)新分野の事業開発の道筋ともなるわけです。

  日本では「エンゲージメント」の取り組みが未熟な一面があります。だからこそ、企業と社会の相互発展を目指す意味においても「サステナブル・ブランド」は重要な考え方です。「サステナビリティ」とは、個人、企業、すべての組織、地域、国家、そして地球規模の持続可能性を重層的に指す言葉なのです。(オルタナ編集長・森 摂)

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株式会社オルタナ 代表取締役 編集長 森 摂
一般社団法人グリーン経営者フォーラム代表理事
特定非営利活動法人在外ジャーナリスト協会理事長
CSR検定委員会委員
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