Human Capital Online管理意識大変革期
2016年2月4日 お仕事石田淳の部下の成長を促すちょっとしたきっかけ
第71回 これまでのマネジメントをひっくり返さねばならない時代がやってきた
石田 淳
株式会社ウィルPMインターナショナル 代表取締役社長兼最高経営責任者
いま、マネジメントの概念が根底から変わろうとしています。経営陣や管理職がそれに気づき、いち早く対応していかなければ企業は立ちゆかない時代が来ているのです。
先日、ある企業の経営者と話をする機会がありました。その経営者は「新規事業を起こしたいのだが、それを具体的に進める人材がいない」ということに大変な危機感を抱いていました。
少子化が進み、マーケットそのものが縮小している日本で、これまでと同じことをやっていたらじり貧になるのは明らかです。経営者なら「なにか新しい手を打たなければ生き残れない」と考えて当然です。
しかし、その計画はあっても人材不足で実現できずに苦しんでいる経営者が多いのです。彼らは、これまでのマネジメントが通用しなくなっていることに愕然としています。
若い世代が上司をロールモデルにしなくなった
いまの課長世代が、ぴかぴかの社会人一年生として入社した頃、目指すべきモデルは当時40代前後の課長たちでした。課長たちが人生の先輩として魅力的に映ったから「自分も一生懸命仕事をして○○課長のようになろう」と頑張ることができました。だから、いま立派に課長職を務めるまでになったのです。
このように、下の世代が上の世代を見習ってくれているときには、企業は「従来のマネジメント」を心がけていればうまく回ります。しかし、もはやそのサイクルは破綻してしまいました。
いまの若い世代は「課長たちのようにはなりたくない」のです。
朝から晩まで仕事ばかりしている。
いつも疲れた顔をしている。
プライベートの時間を楽しんでいる様子もない。
そのわりに給料だってたいしてもらっているわけではない。
若者たちの目に、課長たちはこのように映っており、彼らは「目指したいモデルが社内にいない」と感じています。だから、企業は抜本的にマネジメントを見直さないと、これまでのように人材が育ちません。
もちろん、モデルにしてもらえない課長世代が悪いのではありません。いまの課長たちは「先輩たちがやってきたように自分たちも頑張ってきた」最後の世代といえます。日本経済が非常に厳しい状況にある中で文句も言わずにやってきたのに、若い部下から「あんなふうになりたくない」などと言われる筋合いはないでしょう。
しかし、現実問題として若者たちがそう感じてしまう以上、なんとかしないわけにはいきません。
ある企業では、ここ数年「できる若者から辞めてしまう」という状況が続いています。経営陣や管理職が「あいつこそ次の課長候補だ」などと期待を寄せている優秀な人間が、いとも簡単に辞めてしまうために、いつまでたっても「次の課長」が生まれないのです。
「どうして、こんなことになったのか」について分析することは、学者に任せておけばいいでしょう。平和な時代が長く続いたことや、国民の生活が豊かになり欲しいものが減ってきたことや、インターネットの発達によって情報が行き渡ったことなど、さまざまな要因が複雑に絡み合っているのかもしれません。一口に言えば「時代が変わったのだ」ということでしょう。
いま、ビジネスの現場で求められているのは、理屈はどうあれ、また理想はどうあれ、そういう変化に対応していく柔軟性です。
若い世代が、どういう働き方をしたいのか。どういうふうになりたいのか。そのことについて一人ひとりの動機付け条件を把握し、適切な環境を提供していくしかありません。
ときには課長たちが、若者が目指したいモデル像を模索することも必要でしょう。「冗談じゃないよ」と言いたいところでしょうが、それによって案外、新しい働き方を手に入れることができるかもしれません。
いまという時代が、課長たちにとって「若い奴らがわからない」という苦しみに終わるのではなく、一つのチャンスになることを願っています。
石田 淳(いしだ・じゅん)
石田 淳
米国のビジネス界で大きな成果を上げる行動分析を基にしたマネジメント手法を日本人に適したものに独自の手法でアレンジ。「行動科学マネジメント」として確立。その実績が認められ、日本で初めて組織行動の安全保持を目的として設立された社団法人組織行動セーフティマネジメント協会代表理事に就任。グローバル時代に必須のリスクマネジメントやコンプライアンスにも有効な手法と注目され、講演・セミナーなどを精力的に行う。趣味はトライアスロン&マラソン。2012年4月には、世界一過酷なマラソンといわれるサハラ砂漠250kmマラソン、2013年11月に南極100kmマラソン&トライアスロンに挑戦、いずれも完走を果たす。著書に、『8割の「できない人」が「できる人」に変わる! 行動科学マネジメント入門』(ダイヤモンド社)、『挫けない力』(清流出版)『教える技術』(かんき出版)、『会社を辞めるのは「あと1年」待ちなさい!』(マガジンハウス)、『組織行動セーフティマネジメント』(ダイヤモンド社)、『組織が大きく変わる「最高の報酬」』(日本能率協会マネジメントセンター)、『3日で営業組織が劇的に変わる行動科学マネジメント』(インフォレスト)、『短期間で組織が変わる 行動科学マネジメント』(ダイヤモンド社)などがある。
第71回 これまでのマネジメントをひっくり返さねばならない時代がやってきた
石田 淳
株式会社ウィルPMインターナショナル 代表取締役社長兼最高経営責任者
いま、マネジメントの概念が根底から変わろうとしています。経営陣や管理職がそれに気づき、いち早く対応していかなければ企業は立ちゆかない時代が来ているのです。
先日、ある企業の経営者と話をする機会がありました。その経営者は「新規事業を起こしたいのだが、それを具体的に進める人材がいない」ということに大変な危機感を抱いていました。
少子化が進み、マーケットそのものが縮小している日本で、これまでと同じことをやっていたらじり貧になるのは明らかです。経営者なら「なにか新しい手を打たなければ生き残れない」と考えて当然です。
しかし、その計画はあっても人材不足で実現できずに苦しんでいる経営者が多いのです。彼らは、これまでのマネジメントが通用しなくなっていることに愕然としています。
若い世代が上司をロールモデルにしなくなった
いまの課長世代が、ぴかぴかの社会人一年生として入社した頃、目指すべきモデルは当時40代前後の課長たちでした。課長たちが人生の先輩として魅力的に映ったから「自分も一生懸命仕事をして○○課長のようになろう」と頑張ることができました。だから、いま立派に課長職を務めるまでになったのです。
このように、下の世代が上の世代を見習ってくれているときには、企業は「従来のマネジメント」を心がけていればうまく回ります。しかし、もはやそのサイクルは破綻してしまいました。
いまの若い世代は「課長たちのようにはなりたくない」のです。
朝から晩まで仕事ばかりしている。
いつも疲れた顔をしている。
プライベートの時間を楽しんでいる様子もない。
そのわりに給料だってたいしてもらっているわけではない。
若者たちの目に、課長たちはこのように映っており、彼らは「目指したいモデルが社内にいない」と感じています。だから、企業は抜本的にマネジメントを見直さないと、これまでのように人材が育ちません。
もちろん、モデルにしてもらえない課長世代が悪いのではありません。いまの課長たちは「先輩たちがやってきたように自分たちも頑張ってきた」最後の世代といえます。日本経済が非常に厳しい状況にある中で文句も言わずにやってきたのに、若い部下から「あんなふうになりたくない」などと言われる筋合いはないでしょう。
しかし、現実問題として若者たちがそう感じてしまう以上、なんとかしないわけにはいきません。
ある企業では、ここ数年「できる若者から辞めてしまう」という状況が続いています。経営陣や管理職が「あいつこそ次の課長候補だ」などと期待を寄せている優秀な人間が、いとも簡単に辞めてしまうために、いつまでたっても「次の課長」が生まれないのです。
「どうして、こんなことになったのか」について分析することは、学者に任せておけばいいでしょう。平和な時代が長く続いたことや、国民の生活が豊かになり欲しいものが減ってきたことや、インターネットの発達によって情報が行き渡ったことなど、さまざまな要因が複雑に絡み合っているのかもしれません。一口に言えば「時代が変わったのだ」ということでしょう。
いま、ビジネスの現場で求められているのは、理屈はどうあれ、また理想はどうあれ、そういう変化に対応していく柔軟性です。
若い世代が、どういう働き方をしたいのか。どういうふうになりたいのか。そのことについて一人ひとりの動機付け条件を把握し、適切な環境を提供していくしかありません。
ときには課長たちが、若者が目指したいモデル像を模索することも必要でしょう。「冗談じゃないよ」と言いたいところでしょうが、それによって案外、新しい働き方を手に入れることができるかもしれません。
いまという時代が、課長たちにとって「若い奴らがわからない」という苦しみに終わるのではなく、一つのチャンスになることを願っています。
石田 淳(いしだ・じゅん)
石田 淳
米国のビジネス界で大きな成果を上げる行動分析を基にしたマネジメント手法を日本人に適したものに独自の手法でアレンジ。「行動科学マネジメント」として確立。その実績が認められ、日本で初めて組織行動の安全保持を目的として設立された社団法人組織行動セーフティマネジメント協会代表理事に就任。グローバル時代に必須のリスクマネジメントやコンプライアンスにも有効な手法と注目され、講演・セミナーなどを精力的に行う。趣味はトライアスロン&マラソン。2012年4月には、世界一過酷なマラソンといわれるサハラ砂漠250kmマラソン、2013年11月に南極100kmマラソン&トライアスロンに挑戦、いずれも完走を果たす。著書に、『8割の「できない人」が「できる人」に変わる! 行動科学マネジメント入門』(ダイヤモンド社)、『挫けない力』(清流出版)『教える技術』(かんき出版)、『会社を辞めるのは「あと1年」待ちなさい!』(マガジンハウス)、『組織行動セーフティマネジメント』(ダイヤモンド社)、『組織が大きく変わる「最高の報酬」』(日本能率協会マネジメントセンター)、『3日で営業組織が劇的に変わる行動科学マネジメント』(インフォレスト)、『短期間で組織が変わる 行動科学マネジメント』(ダイヤモンド社)などがある。