加藤特許事務所/知財とびうめ便りVol.47
2016年3月1日 お仕事◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆
「加藤特許事務所 ~知財 とびうめ便り~」 Vol.47
発信日:2016年 3月 1日 発信者:加藤特許事務所
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大宰府市の大宰府天満宮の境内には、200種、約6,000本の白梅・紅梅があり、日本有数の梅の名所になっております。現在の梅の開花状況は、御神木「飛梅」が[満開]、境内の梅が[7分咲き]です。これから3月上旬にかけて一重、八重をはじめ豊富な種類の梅が見事に咲き、境内は芳しい梅の香りに包まれます。
ぜひ皆様、この機会に出向かれて、梅の香りに酔いしれてはいかがでしょうか。
★ 目 次 ★
1.弁理士コラム
●リエゾンについて
2.知財ニュース
●体脂肪計、タニタのDualScan商標登録無効、知財高裁でオムロン勝訴
3.連載 知財講座
●第47回:特許「先使用権」
4.事務所からのお知らせ
●売買希望の新着商標(アット商標)
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1. 弁 理 士 コ ラ ム
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●リエゾンについて
特許事務所が提供する主な役務は、発明者が発明された技術を明細書にまとめ、特許出願、中間対応等を行うことです。特許に係る「発明」を一例として記載しましたが、産業財産権と言われる実用新案、意匠、商標を中心に、権利を主張するための書面をまとめ管理することが主たる役務です。私も弁理士として特許の明細書作成等を中心に業務を行っております。
一方、平成27年度に、私は、熊本県の知財総合支援窓口を担当させていただき、他にも、「知的財産とその活用」という議題のセミナーの講師の機会を頂きました。そして、そもそも「発明等」が経営ツールの「財産」としてどのように位置づけられるかを考えさせられる機会が非常に多くなってきています。
知的財産権は、重要な経営資源で、「経営」、「法律」、「技術」の三つの観点から総合評価する必要はあります。弁理士となり約4年が経ち、特許性とは、発明とは、意匠とは、優先権とは、請求項とは、侵害とはといった話自体は多少なりとも説明できるようになったかと思います。
しかし、そもそも経営資源として特許は何に役立つのか、商標は何に役立つのか話そうとすると、これは非常に難しいことがわかりました。また、技術が生まれたばかりのところから、明細書作成のための情報整理は、技術により近いところで接すれば接するほど難しくなることもあります。
企業において、開発された技術を、特許権を取得するために法に則った手続きをし、その権利を経営に役立てていくこと。これは、企業における「研究・開発部門」、「法務部門」、「経営・事業部門」といった部門がそれぞれで行う業務をつないでいって初めて成果に繋がることだと思います。(俗に言うところの三位一体となった企業経営戦略推進のことです。)
特許等の業界では、これらの部門間の橋渡しをする人をリエゾンマンと呼ぶことがあります。リエゾン(liaison)という言葉自体は、連絡、連絡係、連絡窓口等の意味で使われることが多い言葉です。
知的財産権が、企業の財産として活用されていくためには、この様々な部門の立場をつなぎ、事業とリンクした知的財産権の取得を推し進めるリエゾンマンの役割が重要となりますが、この知財活動がより一層活発になるためには、まだまだ多くの優れたリエゾンマンが必要ではないかと感じています。
また、リエゾン(仏: liaison)とは、「フランス語における(外)連声の一種で、語を単独では読む場合には発音されない語末の子音字が、直後に母音が続く場合に発音される現象を言う。」(Weblio英和対訳辞書)とも辞書に記載されています。
単独では消えかねない(発音されない)ものを、直後に正しく支えることで世に顕れるものとするために、いつもの業務を超えた観点からもお客様の力になれる方法についても日々考えて提案していければと思います。
弁理士 遠坂 啓太
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2. 知 財 ニ ュ ー ス
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● 体組成計、タニタのDualScan商標登録無効、知財高裁でオムロン勝訴
体組成計の商標として、「DualScan」と「デュアルスキャン」を登録しているオムロンヘルスケアが、後にタニタが登録した「デュアルスキャン/DualScan」の商標の無効を求めた訴訟において、知財高裁は2月17日、市販されている体組成計は「医療用を学校やフィットネスクラブで使うなど、医療用と家庭用の性能は近づきつつあり、利用者が誤認・混同の恐れがある」として、タニタの商標登録を有効とした特許庁の審決を取り消し、タニタの商標登録を無効とする判決を下しました。
オムロンは、2008年8月に指定商品として第10類(医療用機械器具)「体脂肪測定器、体組成計」で商標登録していましたが、タニタが、2013年4月に指定商品として第9類「脂肪計付き体重計、体組成計付き体重計、体重計」で商標登録されましたので、オムロンは特許庁に無効審判を請求しましたが、「医療用と家庭用で用途や利用者が異なる」として認められず、知財高裁に控訴していました。
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3. 連 載 知 財 講 座
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第47回:特許「先使用権」
先使用権とは、他人の特許権に係る発明が出願される前からその発明を実施または事業の準備をしていた者に対して、所定の条件の下で与えられる無償の通常実施権のことです。
特許法では先願主義の下、発明を最初に出願した者に対して独占権である特許権を付与しますが、その出願前から自ら同じ発明をして実施または事業の準備をしている者も事業を継続できなくなってしまうため、所定の条件の下で先使用権を認め、事業を継続できるようにしたものです。
先使用権が認められるためには、基本的には以下の要件を満たす必要があります。
(1)「特許出願に係る発明の内容を知らないで自らその発明をした者」または「特許出願に係る発明の内容を知らないでその発明をした者から知得した者」
他人の特許権に係る発明とは別になされた発明であることが必要です。
(2)「特許出願の際現に日本国内においてその発明の実施である事業をしている者」または「その事業の準備をしている者」
他人の特許権に係る発明の出願前から「日本国内で」実施または事業の準備をしていることが必要です。外国だけで行っているような場合には適用されません。
なお、先使用権を主張するためには、先使用の事実を証明する必要があります。この先使用権の立証に有効な手段の一つとして公証制度がありますが、仮に先使用権が認められたとしても、先使用権が認められる範囲は、その実施または準備をしている発明および事業の目的の範囲内に限られます。
この範囲をどのように解釈するかについて、他者の特許出願の際に製造していた物とは少し異なるものを作ってもよいのかどうかという問題や、他者の特許出願の際にある製品を仕入れて販売を行っていた者がその後その製品の製造を自ら行うことにした場合にその製造行為について先使用権が認められるかどうかという問題があり、初めから先使用権をあてにして事業をすることは、経営戦略上必ずしも望ましくないと言えます。
先使用権に関するご相談・ご質問等がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
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4. 事 務 所 か ら の お 知 ら せ
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● 売買希望の新着商標(アット商標)
商標ポータルサイト『アット商標』の商標売買フォームに2月に登録された販売希望商標のご紹介です。登録商標や権利範囲の詳細は、『アット商標』トップページの『販売商標一覧へ』ボタンよりご確認いただけます。
興味のある登録商標がございましたら、加藤特許事務所 アット商標担当 別府(Tel 092-413-5378)まで、直接お電話ください。
<2月2日掲載>
[商標]アルラ\ALULA [区分]第16類 [価格]要相談
【アット商標】 http://www.a-shohyo.com/
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加藤特許事務所
編集・発行: 加藤特許事務所 -メルマガ事務局-
福岡市博多区博多駅前3丁目25番21号 博多駅前ビジネスセンター411号
URL:http://www.kato-pat.jp/
TEL:092-413-5378 E-mail:mail@kato-pat.jp
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「加藤特許事務所 ~知財 とびうめ便り~」 Vol.47
発信日:2016年 3月 1日 発信者:加藤特許事務所
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大宰府市の大宰府天満宮の境内には、200種、約6,000本の白梅・紅梅があり、日本有数の梅の名所になっております。現在の梅の開花状況は、御神木「飛梅」が[満開]、境内の梅が[7分咲き]です。これから3月上旬にかけて一重、八重をはじめ豊富な種類の梅が見事に咲き、境内は芳しい梅の香りに包まれます。
ぜひ皆様、この機会に出向かれて、梅の香りに酔いしれてはいかがでしょうか。
★ 目 次 ★
1.弁理士コラム
●リエゾンについて
2.知財ニュース
●体脂肪計、タニタのDualScan商標登録無効、知財高裁でオムロン勝訴
3.連載 知財講座
●第47回:特許「先使用権」
4.事務所からのお知らせ
●売買希望の新着商標(アット商標)
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1. 弁 理 士 コ ラ ム
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●リエゾンについて
特許事務所が提供する主な役務は、発明者が発明された技術を明細書にまとめ、特許出願、中間対応等を行うことです。特許に係る「発明」を一例として記載しましたが、産業財産権と言われる実用新案、意匠、商標を中心に、権利を主張するための書面をまとめ管理することが主たる役務です。私も弁理士として特許の明細書作成等を中心に業務を行っております。
一方、平成27年度に、私は、熊本県の知財総合支援窓口を担当させていただき、他にも、「知的財産とその活用」という議題のセミナーの講師の機会を頂きました。そして、そもそも「発明等」が経営ツールの「財産」としてどのように位置づけられるかを考えさせられる機会が非常に多くなってきています。
知的財産権は、重要な経営資源で、「経営」、「法律」、「技術」の三つの観点から総合評価する必要はあります。弁理士となり約4年が経ち、特許性とは、発明とは、意匠とは、優先権とは、請求項とは、侵害とはといった話自体は多少なりとも説明できるようになったかと思います。
しかし、そもそも経営資源として特許は何に役立つのか、商標は何に役立つのか話そうとすると、これは非常に難しいことがわかりました。また、技術が生まれたばかりのところから、明細書作成のための情報整理は、技術により近いところで接すれば接するほど難しくなることもあります。
企業において、開発された技術を、特許権を取得するために法に則った手続きをし、その権利を経営に役立てていくこと。これは、企業における「研究・開発部門」、「法務部門」、「経営・事業部門」といった部門がそれぞれで行う業務をつないでいって初めて成果に繋がることだと思います。(俗に言うところの三位一体となった企業経営戦略推進のことです。)
特許等の業界では、これらの部門間の橋渡しをする人をリエゾンマンと呼ぶことがあります。リエゾン(liaison)という言葉自体は、連絡、連絡係、連絡窓口等の意味で使われることが多い言葉です。
知的財産権が、企業の財産として活用されていくためには、この様々な部門の立場をつなぎ、事業とリンクした知的財産権の取得を推し進めるリエゾンマンの役割が重要となりますが、この知財活動がより一層活発になるためには、まだまだ多くの優れたリエゾンマンが必要ではないかと感じています。
また、リエゾン(仏: liaison)とは、「フランス語における(外)連声の一種で、語を単独では読む場合には発音されない語末の子音字が、直後に母音が続く場合に発音される現象を言う。」(Weblio英和対訳辞書)とも辞書に記載されています。
単独では消えかねない(発音されない)ものを、直後に正しく支えることで世に顕れるものとするために、いつもの業務を超えた観点からもお客様の力になれる方法についても日々考えて提案していければと思います。
弁理士 遠坂 啓太
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2. 知 財 ニ ュ ー ス
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● 体組成計、タニタのDualScan商標登録無効、知財高裁でオムロン勝訴
体組成計の商標として、「DualScan」と「デュアルスキャン」を登録しているオムロンヘルスケアが、後にタニタが登録した「デュアルスキャン/DualScan」の商標の無効を求めた訴訟において、知財高裁は2月17日、市販されている体組成計は「医療用を学校やフィットネスクラブで使うなど、医療用と家庭用の性能は近づきつつあり、利用者が誤認・混同の恐れがある」として、タニタの商標登録を有効とした特許庁の審決を取り消し、タニタの商標登録を無効とする判決を下しました。
オムロンは、2008年8月に指定商品として第10類(医療用機械器具)「体脂肪測定器、体組成計」で商標登録していましたが、タニタが、2013年4月に指定商品として第9類「脂肪計付き体重計、体組成計付き体重計、体重計」で商標登録されましたので、オムロンは特許庁に無効審判を請求しましたが、「医療用と家庭用で用途や利用者が異なる」として認められず、知財高裁に控訴していました。
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3. 連 載 知 財 講 座
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第47回:特許「先使用権」
先使用権とは、他人の特許権に係る発明が出願される前からその発明を実施または事業の準備をしていた者に対して、所定の条件の下で与えられる無償の通常実施権のことです。
特許法では先願主義の下、発明を最初に出願した者に対して独占権である特許権を付与しますが、その出願前から自ら同じ発明をして実施または事業の準備をしている者も事業を継続できなくなってしまうため、所定の条件の下で先使用権を認め、事業を継続できるようにしたものです。
先使用権が認められるためには、基本的には以下の要件を満たす必要があります。
(1)「特許出願に係る発明の内容を知らないで自らその発明をした者」または「特許出願に係る発明の内容を知らないでその発明をした者から知得した者」
他人の特許権に係る発明とは別になされた発明であることが必要です。
(2)「特許出願の際現に日本国内においてその発明の実施である事業をしている者」または「その事業の準備をしている者」
他人の特許権に係る発明の出願前から「日本国内で」実施または事業の準備をしていることが必要です。外国だけで行っているような場合には適用されません。
なお、先使用権を主張するためには、先使用の事実を証明する必要があります。この先使用権の立証に有効な手段の一つとして公証制度がありますが、仮に先使用権が認められたとしても、先使用権が認められる範囲は、その実施または準備をしている発明および事業の目的の範囲内に限られます。
この範囲をどのように解釈するかについて、他者の特許出願の際に製造していた物とは少し異なるものを作ってもよいのかどうかという問題や、他者の特許出願の際にある製品を仕入れて販売を行っていた者がその後その製品の製造を自ら行うことにした場合にその製造行為について先使用権が認められるかどうかという問題があり、初めから先使用権をあてにして事業をすることは、経営戦略上必ずしも望ましくないと言えます。
先使用権に関するご相談・ご質問等がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
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4. 事 務 所 か ら の お 知 ら せ
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● 売買希望の新着商標(アット商標)
商標ポータルサイト『アット商標』の商標売買フォームに2月に登録された販売希望商標のご紹介です。登録商標や権利範囲の詳細は、『アット商標』トップページの『販売商標一覧へ』ボタンよりご確認いただけます。
興味のある登録商標がございましたら、加藤特許事務所 アット商標担当 別府(Tel 092-413-5378)まで、直接お電話ください。
<2月2日掲載>
[商標]アルラ\ALULA [区分]第16類 [価格]要相談
【アット商標】 http://www.a-shohyo.com/
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加藤特許事務所
編集・発行: 加藤特許事務所 -メルマガ事務局-
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