「インターンシップ」の現状と課題【後編2】
2015年6月25日 お仕事 「インターンシップ」の現状と課題 【後編2】
“ 目 的 ” を 明 確 に 謳 っ た イ ン タ ー ン シ ッ プ の 実 例 紹 介
事 例 1: 企 業 理 解 を 促 進 し 、 母 集 団 を 形 成 す る
大手メーカーA社では、異業種の企業と協力し、学生の視野を広げようと合同セミナーを実施。セミナーを通じてコラボレーション型の合同インターンシップを行い、企業理解を促進している。合わせて、技術系にターゲットを絞ったインターンシップを実施し、自社への興味・関心、理解を深めてもらうことにより、母集団形成を図っている。
◆ 学生に「働く意味を考えるきっかけを与える」「就職活動の視野を広げる」ために、合同インターンシップを実施
A社では、各業界を代表する企業の採用担当者同士が業種・会社の枠を超えて連携し、「学生に働く意味を考えるきっかけを与えたい」「就職活動の視野を広げさせたい」との想いの下、さまざまな活動を展開している異業種の企業と、合同でのインターンシップを実施している。
「採用活動において、企業は自社に都合のよい話ばかりをする一方、学生も目先のイメージだけで就職してしまいます。その結果、3年で3割が辞めるという早期離職につながっています。採用ミスマッチをなくすためには、学生と企業が近い距離で本音を語り合う場が必要だと考えました。そこで考えたのが、直接競合とならない、異業種企業との合同インターンシップです」(採用担当者)
「本音を語ること」を主軸に、企業の採用担当者としてではなく、社会人の先輩として学生と接することは、学生が自分に合った企業を選ぶための手助けとなる。それと同時に、合同インターンシップであれば、自社としても従来とは違った採用母集団を形成できるメリットがある。プログラムは月曜日から金曜日までの5日間コース。内容も時代の変化や社会情勢、経済情勢に合わせて随時アップデートしている。参加人数は50人程度(3社合同のため、1社10~20人を想定)。
こうした取り組みは学生の社会理解、企業理解に大きく役立つと、大学側も3年生だけでなく、1~2年生など低学年の学生にも参加を促している。さらに、異業種を巻き込んだ活動に自社の若手採用担当者を参加させることによって、他社の事例をダイレクトに学ぶことができ、一人の社会人としての成長にもつながっているという。
■ 合同インターンシップ:プログラム内容(例)
(1) 1 日 目:
社会と自分の確認メンバーとの顔合わせの後、「社会にはどんな働く場があるのか」をグループワーク形式で学ぶ。また、合同インターンシップ期間を通じて学びを実感できるよう、採用担当者が自己分析セッションを行う。自分のこれまでの歴史を振り返り、将来を描くことで、価値観や想いを確認する。最後に、5日間を通じてグループごとに取り組む課題を発表する。
(2) 2 ~ 4 日 目:
業界・仕事理解2~4日目までの3日間は、1日ずつ各企業のオフィスを訪問して、業務体験を行う。訪問先では、会社説明の後、オフィス見学、案件体験、先輩社員との座談会などを経験する。
(3) 5 日 目:
将来への決意表明ここまでの4日間で得た学びをフル活用し、初日に発表した課題に対するアウトプットを発表、審査員からフィードバックをもらう。その後、将来「どうありたい」ために、これから「何」をしていくのかを、苦楽を共にした仲間の前で決意表明を行う。
◆ 母集団形成の難しい技術系学生に対し、インターンシップで自社への興味・関心を持ってもらい、本選考へのエントリーにつなげていく
近年、技術系学生の採用はどの業界でも厳しくなっている。それはA社でも同様だ。そこで、技術系学生に的を絞ったインターンシップを実施し、自社の仕事内容に興味・関心を持ってもらおうと考えた。本選考へのエントリーにつなげていきたいという思いもあるが、インターンシップと本選考の間には直接的な関連性は持たせていない。ただ結果として、インターンシップへの参加をきっかけに、A社への興味・関心を持った技術系学生が内定を得る、というケースも数件出ている。
技術系インターンシップは7日間の日程で、初日と最終日は採用グループが用意するプログラム、2~6日までの5日間はコース別に分かれ、実際に各職場で業務体験を行う。業務体験には労働の側面もあるので、1日当たり6000円の日当(食事代、交通費込み)を支給している。参加者は10人程度で、年間3回実施している。
「学生に、どうしてインターンシップに参加したかを聞いてみたところ、何人かの学生から『先輩にモノ作りの一連の流れが分かって面白いと勧められた』という回答が聞かれました。母集団形成が難しい技術系職種において、こうした口 コミで評判が広がっていくのは望外のことであり、本当に嬉しいことです」(採用担当者)
初日に自己分析を行い、インターンシップで学びたいことを整理した後は、実際の職場に配置されて業務体験を行う。その内容は実際の業務にかなり近いもので、参加者にも非常に好評である。結果的に採用する・しないにかかわらず、このような現場での経験は、多くの学生の成長に寄与する。A社では、技術系のインターンシップによる仕事体験が、学生の成長の場につながっていくことを強く実感し、これからも継続していく考えだ。
■ 技術系インターンシップ:プログラム内容(例)
(1) 1 日 目:
キックオフA社の理念や事業内容、戦略についての説明を行った後、仕事の疑似体験ができるグループワークを行い、仕事への理解を深める。さらに自己分析では、過去の経験を振り返り、自分の価値観やモノ作りに対する考えを整理し、参加者同士で共有する。最後に、5日間の仕事体験でどんな仕事・課題にチャレンジするかを発表する。
(2) 2 ~ 6 日 目:
仕事体験2~6日までの5日間は、事業別に分かれて仕事体験を行う。まず開発・生産業務の説明を受けた後、工場見学を行い、材料が製品(商品)となる一連の流れをその目で確かめる。その後、各部署に分かれて仕事体験を行う。各部署では「課題」も設定されており、最終日の発表に向けて、先輩社員とコミュニケーションを取りながら、チャレンジしていく。
(3) 7 日 目:
レビュー参加者全員で集まり、それぞれの事業・部署でやってきたことを共有する。最終発表会では、役員を含む技術系社員の前で、課題チャレンジの成果を発表する。振り返りの自己分析では、5日間苦楽を共にしたからこそ言える客観的な意見を仲間からもらい、自分の強みや弱み、価値観に対する理解を深める。 つづく
“ 目 的 ” を 明 確 に 謳 っ た イ ン タ ー ン シ ッ プ の 実 例 紹 介
事 例 1: 企 業 理 解 を 促 進 し 、 母 集 団 を 形 成 す る
大手メーカーA社では、異業種の企業と協力し、学生の視野を広げようと合同セミナーを実施。セミナーを通じてコラボレーション型の合同インターンシップを行い、企業理解を促進している。合わせて、技術系にターゲットを絞ったインターンシップを実施し、自社への興味・関心、理解を深めてもらうことにより、母集団形成を図っている。
◆ 学生に「働く意味を考えるきっかけを与える」「就職活動の視野を広げる」ために、合同インターンシップを実施
A社では、各業界を代表する企業の採用担当者同士が業種・会社の枠を超えて連携し、「学生に働く意味を考えるきっかけを与えたい」「就職活動の視野を広げさせたい」との想いの下、さまざまな活動を展開している異業種の企業と、合同でのインターンシップを実施している。
「採用活動において、企業は自社に都合のよい話ばかりをする一方、学生も目先のイメージだけで就職してしまいます。その結果、3年で3割が辞めるという早期離職につながっています。採用ミスマッチをなくすためには、学生と企業が近い距離で本音を語り合う場が必要だと考えました。そこで考えたのが、直接競合とならない、異業種企業との合同インターンシップです」(採用担当者)
「本音を語ること」を主軸に、企業の採用担当者としてではなく、社会人の先輩として学生と接することは、学生が自分に合った企業を選ぶための手助けとなる。それと同時に、合同インターンシップであれば、自社としても従来とは違った採用母集団を形成できるメリットがある。プログラムは月曜日から金曜日までの5日間コース。内容も時代の変化や社会情勢、経済情勢に合わせて随時アップデートしている。参加人数は50人程度(3社合同のため、1社10~20人を想定)。
こうした取り組みは学生の社会理解、企業理解に大きく役立つと、大学側も3年生だけでなく、1~2年生など低学年の学生にも参加を促している。さらに、異業種を巻き込んだ活動に自社の若手採用担当者を参加させることによって、他社の事例をダイレクトに学ぶことができ、一人の社会人としての成長にもつながっているという。
■ 合同インターンシップ:プログラム内容(例)
(1) 1 日 目:
社会と自分の確認メンバーとの顔合わせの後、「社会にはどんな働く場があるのか」をグループワーク形式で学ぶ。また、合同インターンシップ期間を通じて学びを実感できるよう、採用担当者が自己分析セッションを行う。自分のこれまでの歴史を振り返り、将来を描くことで、価値観や想いを確認する。最後に、5日間を通じてグループごとに取り組む課題を発表する。
(2) 2 ~ 4 日 目:
業界・仕事理解2~4日目までの3日間は、1日ずつ各企業のオフィスを訪問して、業務体験を行う。訪問先では、会社説明の後、オフィス見学、案件体験、先輩社員との座談会などを経験する。
(3) 5 日 目:
将来への決意表明ここまでの4日間で得た学びをフル活用し、初日に発表した課題に対するアウトプットを発表、審査員からフィードバックをもらう。その後、将来「どうありたい」ために、これから「何」をしていくのかを、苦楽を共にした仲間の前で決意表明を行う。
◆ 母集団形成の難しい技術系学生に対し、インターンシップで自社への興味・関心を持ってもらい、本選考へのエントリーにつなげていく
近年、技術系学生の採用はどの業界でも厳しくなっている。それはA社でも同様だ。そこで、技術系学生に的を絞ったインターンシップを実施し、自社の仕事内容に興味・関心を持ってもらおうと考えた。本選考へのエントリーにつなげていきたいという思いもあるが、インターンシップと本選考の間には直接的な関連性は持たせていない。ただ結果として、インターンシップへの参加をきっかけに、A社への興味・関心を持った技術系学生が内定を得る、というケースも数件出ている。
技術系インターンシップは7日間の日程で、初日と最終日は採用グループが用意するプログラム、2~6日までの5日間はコース別に分かれ、実際に各職場で業務体験を行う。業務体験には労働の側面もあるので、1日当たり6000円の日当(食事代、交通費込み)を支給している。参加者は10人程度で、年間3回実施している。
「学生に、どうしてインターンシップに参加したかを聞いてみたところ、何人かの学生から『先輩にモノ作りの一連の流れが分かって面白いと勧められた』という回答が聞かれました。母集団形成が難しい技術系職種において、こうした口 コミで評判が広がっていくのは望外のことであり、本当に嬉しいことです」(採用担当者)
初日に自己分析を行い、インターンシップで学びたいことを整理した後は、実際の職場に配置されて業務体験を行う。その内容は実際の業務にかなり近いもので、参加者にも非常に好評である。結果的に採用する・しないにかかわらず、このような現場での経験は、多くの学生の成長に寄与する。A社では、技術系のインターンシップによる仕事体験が、学生の成長の場につながっていくことを強く実感し、これからも継続していく考えだ。
■ 技術系インターンシップ:プログラム内容(例)
(1) 1 日 目:
キックオフA社の理念や事業内容、戦略についての説明を行った後、仕事の疑似体験ができるグループワークを行い、仕事への理解を深める。さらに自己分析では、過去の経験を振り返り、自分の価値観やモノ作りに対する考えを整理し、参加者同士で共有する。最後に、5日間の仕事体験でどんな仕事・課題にチャレンジするかを発表する。
(2) 2 ~ 6 日 目:
仕事体験2~6日までの5日間は、事業別に分かれて仕事体験を行う。まず開発・生産業務の説明を受けた後、工場見学を行い、材料が製品(商品)となる一連の流れをその目で確かめる。その後、各部署に分かれて仕事体験を行う。各部署では「課題」も設定されており、最終日の発表に向けて、先輩社員とコミュニケーションを取りながら、チャレンジしていく。
(3) 7 日 目:
レビュー参加者全員で集まり、それぞれの事業・部署でやってきたことを共有する。最終発表会では、役員を含む技術系社員の前で、課題チャレンジの成果を発表する。振り返りの自己分析では、5日間苦楽を共にしたからこそ言える客観的な意見を仲間からもらい、自分の強みや弱み、価値観に対する理解を深める。 つづく