日経社説「転職も高齢者雇用増進の道」
2015年6月9日 お仕事 私たちが説く『生涯現役社会実現への道』にやっと賛意を表する論説が昨日付日経新聞朝刊に掲示されるようになってきたので、既にご承知の諸兄姉も居られるでしょうが、改めて厚労省研究会の見解との相違点など確認のため、考察しておきたいと存じます。
つきましては、『生涯現役プロデューサー』仮登録の皆さんからの率直なご意見・問題点などをメールでなるべく簡潔に、日本生涯現役推進協議会事務局宛次回24日(水)理事会開催前までにご連絡いただけると助かります。
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【 2015年6月8日/日本経済新聞朝刊社説 】
転 職 の 促 進 も 高 齢 者 の
雇 用 を 増 や す 道 だ
高齢者が働き続けることのできる「生涯現役社会」の実現に向け、厚生労働省の有識者研究会が今後の政策の方向性を打ち出した。早い段階からの能力開発の支援などを挙げたのは妥当だが、気がかりな点もある。定年後の雇用は65歳以降についても同じ企業での就労を基本にしていることだ。
年金の支給開始年齢が段階的に65歳まで引き上げられるのに伴い、受給開始までの希望者の継続雇用が既に企業に義務づけられている。支給開始年齢がさらに上がり、65歳以降も継続雇用が義務化されれば、その影響でパートなどの雇用減が広がりかねない。
別の企業や仕事に移りやすくして高齢者の雇用を確保するという視点がもっと必要ではないか。転職しやすい柔軟な労働市場づくりを政策の柱とすべきだ。
定年後も同じ企業で雇用を延長することには利点もある。働く人にとっては、それまで身につけてきた商品の知識やものづくりの技能などが引き続き生かせる。
しかし高齢者の人件費負担が重くなって競争力が落ちる恐れがある。衰退産業で雇用延長が進めば成長分野への労働力の移動が妨げられ、産業の新陳代謝が進みにくくなるという問題もある。
企業への継続雇用の義務づけにはかねて、誰を雇うかは雇用する側が選べる「採用の自由」の侵害に当たる、との批判も出ている。
高齢者の継続雇用は本来、企業の判断にゆだねるのが筋だ。65歳以降の雇用について今後、労働政策審議会で議論される可能性があるが、一律の義務づけは望ましくない。65歳までを対象とした現行の制度も見直すべきだろう。
医療・介護や農業、環境・エネルギー関連など、人材の需要増が見込める分野は少なくない。そうした成長分野は高齢者の雇用の受け皿になる。人が企業や業種の垣根を越えて移っていける環境づくりを急ぐ必要がある。
厚労省の研究会も、中高年期のインターンシップ(雇用体験)の支援や職業能力を的確に評価する制度の整備などの必要性を指摘している。これらの政策は転職しやすい環境づくりに役立つ。ぜひ推進すべきだ。
欠かせないのは規制改革だ。民間の職業紹介事業がしやすくなる規制緩和などが求められる。柔軟な労働市場の育成に向けた政策に集中的に取組んでもらいたい。
つきましては、『生涯現役プロデューサー』仮登録の皆さんからの率直なご意見・問題点などをメールでなるべく簡潔に、日本生涯現役推進協議会事務局宛次回24日(水)理事会開催前までにご連絡いただけると助かります。
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【 2015年6月8日/日本経済新聞朝刊社説 】
転 職 の 促 進 も 高 齢 者 の
雇 用 を 増 や す 道 だ
高齢者が働き続けることのできる「生涯現役社会」の実現に向け、厚生労働省の有識者研究会が今後の政策の方向性を打ち出した。早い段階からの能力開発の支援などを挙げたのは妥当だが、気がかりな点もある。定年後の雇用は65歳以降についても同じ企業での就労を基本にしていることだ。
年金の支給開始年齢が段階的に65歳まで引き上げられるのに伴い、受給開始までの希望者の継続雇用が既に企業に義務づけられている。支給開始年齢がさらに上がり、65歳以降も継続雇用が義務化されれば、その影響でパートなどの雇用減が広がりかねない。
別の企業や仕事に移りやすくして高齢者の雇用を確保するという視点がもっと必要ではないか。転職しやすい柔軟な労働市場づくりを政策の柱とすべきだ。
定年後も同じ企業で雇用を延長することには利点もある。働く人にとっては、それまで身につけてきた商品の知識やものづくりの技能などが引き続き生かせる。
しかし高齢者の人件費負担が重くなって競争力が落ちる恐れがある。衰退産業で雇用延長が進めば成長分野への労働力の移動が妨げられ、産業の新陳代謝が進みにくくなるという問題もある。
企業への継続雇用の義務づけにはかねて、誰を雇うかは雇用する側が選べる「採用の自由」の侵害に当たる、との批判も出ている。
高齢者の継続雇用は本来、企業の判断にゆだねるのが筋だ。65歳以降の雇用について今後、労働政策審議会で議論される可能性があるが、一律の義務づけは望ましくない。65歳までを対象とした現行の制度も見直すべきだろう。
医療・介護や農業、環境・エネルギー関連など、人材の需要増が見込める分野は少なくない。そうした成長分野は高齢者の雇用の受け皿になる。人が企業や業種の垣根を越えて移っていける環境づくりを急ぐ必要がある。
厚労省の研究会も、中高年期のインターンシップ(雇用体験)の支援や職業能力を的確に評価する制度の整備などの必要性を指摘している。これらの政策は転職しやすい環境づくりに役立つ。ぜひ推進すべきだ。
欠かせないのは規制改革だ。民間の職業紹介事業がしやすくなる規制緩和などが求められる。柔軟な労働市場の育成に向けた政策に集中的に取組んでもらいたい。