たかが「生涯現役」されど「生涯現役」No. 3

 な ぜ 今 「 生 涯 現 役 プ ロ デ ュ ー サ ー 」 が 必 要 な の か
                    冨山社会人大楽塾 代表 柳 原  正 年

  前回は日本経済のバブルとその崩壊期(第一ステージ1985年~1994年)における生涯現役活動について述べたが、1995年頃からは終身雇用の崩壊に伴う就労価値観の変化が、日本人の生涯現役活動に影響を及ぼし始めた。この時期から2004年までを「生涯現役第二ステージ」と表現したい。

  第二ステージは雇用体系の変化と連動しており、経済基盤の再構築が迫られた時代でもある。終身雇用は定年制とセットで、老後の生活設計の基本となる経済基盤が比較的安定している。しかしバブル崩壊による景気後退は、中高年(とくに団塊の世代)に大きなインパクトを与えた。

  いわゆるリストラであり、成果主義賃金であり、年功序列賃金の廃止である。これらは生活基盤を不安定化させ、人生後半のライフデザインに大きな影響を与えるようになってきた。さらに公的年金支給開始が65歳に延長され、定年後バラ色の「生涯現役人生」を夢見ていたサラリーマンに絶望感を与えた。

  第一ステージ(1985年~1994年)のゆとりある生涯現役活動に比べ、第二ステージ(1995年~2004年)はゆとりなき生き残り競争そのものとなったのである。第一ステージで、バラ色の生涯現役をめざし地域フォーラムを開始したメンバーは、個人商店としての「クラブ運営」を経済的ゆとりでカバー、地域でのボランティア活動の推進が可能であった。年代的に言えば団塊世代以前の昭和10年生まれから昭和20年生まれの世代で公的年金も60歳から受給できるいわゆる「逃げ切り」世代である。

  私が、富山で生涯現役フォーラム活動を始めたのもこの時期である。第二ステージの生涯現役推進リーダーを育てるための仕掛けづくりである。それは思い思いの生涯現役個人商店運営から、専門性を高めた生涯現役クラブへの移行であり、「生涯現役コンビニ」構想である。個人商店が崩壊し全国チェーンのコンビニが全国各地に進出し始めた時期でもある。

  悪夢の20年不況の始まりの中、会社から強制的に「個の自立」を求められ、経済基盤の保証もなくなった団塊の世代以降は、新しい「生涯現役」のスタイルを求めて、居場所づくりをせざるを得なくなった。そのライフスタイルに合った「生涯現役」活動を啓発する草の根運動には、コンビニ経営ネットワークにヒントがあった。

  生涯現役を提供する人材(クラブ主宰者)は、「生涯現役プロデューサー」としての研修を行い、提供するサービスの定型化と品質管理が必要だからだ。「生涯現役」の推進は日本の活力回復にかかる重要課題とするならば、国や地方自治体は「生涯現役プロデューサー」(日本生涯現役推進協議会)の普及活動に積極的に関与すべきである。

  特に現政権が提唱する「地方再生」と「地域助け合い共助運動(厚生労働省:介護予防・日常生活支援総合事業ガイドライン)」の取り組みには日本生涯現役推進協議会と提携し、そのノウハウを最大限に活動すべきであろう。

  次回は「第三ステージ(2005年~2014)」の課題 ICTと生涯現役活動について考えたい。