「生涯現役」と人間学  その①
     生 涯 現 役 と い う 言 葉 の 捉 え 方
                          冨山社会人大楽塾 代表 柳原 正年

  「生涯現役」とは何かと問われるとすぐに答えられる人は少ない。25年近くこのテーマに取り組んできた実践者としても定義することは難しい。それは百人百様の人生の生きざまであり、人間学として捉えなければならないからだ。

  ヴィキペディア(フリー百科事典)によれば、現役(げんえき)とは、『原義において「現在兵役に服していること」をさす。また、軍事以外の一般の場合においては、「当該の立場に在ること」を意味する』また『一般に「現役」とは、人がある職に就いている状態を指す。
  この場合の対義語には「引退」「退職」「OB」「老後」などがあてはまる。老後の暮らしを送る者をさして「現役」という場合は、その人が現役の人のように壮健であることを意味する。この場合の対義語には「老けた」「衰えた」などがあてはまる』と定義している。
又goo辞典では、生涯とは『(1)この世に生きている間、一生の間、終生、副詞的にも用いる。「教育に―をささげる」「―忘れられない出来事」(2) 一生のうち、ある事に関係した期間。「政治家としての―」(3) いのち、生命』と記載されている。

  「生涯現役」について姫路市では次の通り定義している。以下姫路市ホームページ(http://www.city.himeji.lg.jp/s30/2212986/_5066.html)から引用。
  『生涯現役には、(1)健康、(2)自立、(3)活動という3つの要素がある。しかし、これらは単に病気や障害がない、とか、介護を受けていない、というような状態を指すのではありません。たとえ、病気や障害があっても、自分はおおむね健康だと感じていて、必要なときには支援を受けながら自らの選択と責任に基づいて日常生活を送り、家事や仕事、趣味やボランティアなど、家庭や地域においていきいきと活動していること、これが「生涯現役」なのです。
  「生涯現役」は、誰にとっても同じ状態というわけではありません。先ほどの3つの要素の強さやバランスは人それぞれ。その人に合った「生涯現役」を目指すことが重要です。生涯現役で過ごすことで、毎日の生活に充実感、満足感が生まれます。この充実感、満足感がさらなる活動への原動力になります。この良い循環によって、心豊かな、質の高い生活を送ることができるのです』

  生涯現役活動の草分けである、東瀧氏(日本生涯現役推進協議会・ライフ・ベンチャー。クラブ代表)によれば、「生きがいある人生が、世の中に役立つこと」と表現している。英語では日本の「生涯現役」に対応する言葉はないが、あえて表現すれば「ネバーギブアップ」になるという。

  また、東瀧氏のブログ「http://40591.diarynote.jp/201412230915564312」によれば、日本生涯現役推進協議会の活動基本コンセプトにおける定義として、次の4項目をあげている。(1)直ぐに経済的利益を得ようとする活動ではなく、(2)社会貢献になることを目的とする活動であり、(3)結果として、社会から感謝される喜びが与えられ、(4)経済的利益をも戴けることも多い

  いずれにしても「生涯現役」とは、人間そのものの活動であり、どの活動でなければいい悪いというべきものでない。それは一人一人の「人生の生きざま」を表し、その達成手段が「ビジネスなのか、ボランティアなのか、生涯学習なのか」という選択コースなのである。
  日本の縦割り行政は、生涯現役の実現スタイルを、経済産業省系はビジネスとして、厚生労働省系は生きがい作りとしての就職や、地域支援デビューとしてのボランティア活動、文部科学省系は、生涯学習による社会参加と称し、バラバラで一元化していない。
  現時点では、高齢社会対応の「幸福な老い(サクセスフル・エイジング)」構築支援は最優先課題であるが、「生涯現役」を若い世代向けに「アクティブライフ」と置き換えるとすれば、次の日本を支える40代、50代の団塊ジュニア以下(日本型終身雇用崩壊世代)へ新しい「生涯現役」の在り方を開発提供する必要があろう。

  次回は団塊世代生涯現役モデルの崩壊に伴い「40代、50代の生涯現役とは何か」について述べたい。