e世論協会 一般社団法人 電子投票活動主催 特別講演会
  橋 本 大 二 郎 氏 の 講 演 の 要 旨 
            ライフ・ベンチャー・クラブ 副理事長 水上 久忠(記)

  元高知県知事(4期16年間)HNKに在職中(在職19年目、当時44歳で)に高校時代の友人から、出馬の要請を受けた。本人は東京生まれの東京育ちなので、気乗りはしなかったが、高知市民から毎月のように知事選立候補への要望市民署名書を渡されるようになってからは、断るわけにも行かず立候補することになった。

  今回の講演テーマは3本立てで、まず、未来のあるべき日本を考えること。二つ目は、「アベノミックス」はどのように、この国に影響を受け、地方行政に影響を受けてくのか? また、どうのように、生きてゆくべきか、考えるべきなのか? 三つ目には、出る杭(人材)を育てるにはどうすればいいのか?

  国家が主導ですべき戦略的政策大綱と、地方行政が主体ですべき住民本位政策の分業が上手く機能していない。その結果日本の官僚的行政組織に制度疲労が出現している。
  政府は国の政策と地方行政の二つの重荷(課題)を背負い込み、混迷を窮している。例えば、少子化対策、新エネルギー対策、雇用政策など、あるいは、215万人に上る生活保護者を誰が面倒を見てゆけばいいのか?政府主導で責任を発揮してもらわなくてはどうにもならなくなる。
  これからは、国と地方との対等な関係を築きあげてゆく時代だ。そして、国がやるべき仕事を地方がやるべき仕事、あるいは社会がやるべき仕事なのかの「仕分け」にめりはりをつけてゆくことが大事である。その実現には、税金を集める所と税金を使うところとを更に、近づけなくてはならない。

  二つ目は、「アベノミックス」はどのように、この国に影響を受け、地方行政に影響を受けてくのか? また、どうのように、生きてゆくべきか、考えるべきなのか? アベノミックスは、第1本目の矢の「金融規制緩和政策」での円安誘導効果で輸出型大手メーカーは利潤が確保出来ている。また株価は高くなっているが。しかし、景気の浮上までの効果はまだ現れてはいないので、景気対策のためのカンフル剤的な施策が必要な社会経済現状である。
  第2本目の矢、これまでの小泉政権が行ってきた大型公共事業予算を組み、普通予算を削るような対策しか、いまのところ安倍政権は提示していない。991兆円の赤字国債(借金が1000兆円になる)、平政25年度国家予算が100兆円超でこれから消費税を5%~8%を上げて、なんとかすこしでも財政の健全化を図るともくろんでいるが、恐らく日本財政状況は世界先進国から信用不安の汚名を着せられてゆくのはまちがいない。第3本矢の成長戦略も目玉は「薬のネット販売規制緩和」の認可でした。この政策も「タクシーの規制緩和」と同じような感じですね。うまくいっているとは言えませんね。

  三つ目、出る杭(人材)を育てるにはどうすればいいのか?
日本の農業は既に崩壊している。食料自給率は39%になっています。減反をさせて、補助金をその分出す。その減反政策は全国一律でするので、生産性の高い農地であっても強制的に減反を押しつけるのですね。なんと平均年齢農業人口は65歳、後10年もしたら74歳ですね。なぜ、このような状況でも政府は、安閑としていられるのかと言えば、彼らの「票」が欲しいだけなんですね。ドイツでは食料自給が93%なんです。
  どうしてかといえば、自国の農産物も輸出し、不足している農産物を輸入しているからできるのです。脱原発でも、食料自給率でもドイツ政府が出来て、なぜ、日本には出来ないのか?それは、異能な人材を育て、支援する意識や仕組みが育っていない。政府の政策に多くの関係者が「画一化の罠」と言うのに犯されているのですね。
  また、お上からの縦割り行政であって、横割りの行政が出来ない、日本行政担当者のアキレス筋的な体質です。例えば、駅前開発でも道路拡張に補助金を出すことになるのですが、この補助金で道幅を広くしても地域活性化開発につながらず、返って画一的な町並みが出来るだけなんです。
  例えば、県知事時代に1.5車線的道路整備で国に交渉をしたが、当初は予算が付かなかった。道路の拡張という視点からの道路改修ではなく、双方道路として「スムーズ安心・安全な道路」にするために行うことの理解や効果が認められて、この考え方が全国に広まった。
  そのような「お上主導型」に乗るのではなく、地元の有志が結束し、街興しに取り組んでいる新潟県村上町があります。有志は山形県の先行事例を研究し、自分の地域に合う町デザインを研究した。そして、「商人会」を立ち上げて、クロ壁通りをつくり、町並みを古風にして、地元のオリジナルみあげ商品(ブランド)を開発し、観光客を呼び込むことに成功しております。
  これまでの「成功モデル」を後生大事に何時までもひがみつくのではなく。常識を疑い、常識にとらわれない、時にはタブーにも、何がタブーなのかを疑うことが必要である。本当に地域住民・消費者・観光者が求めているもの、雰囲気、地域などをマーケティング町づくり、行政はもっと試行しなければならない。行政の職員も商店街組合も地域住民もマーティングを学ばなくてはいけない。
  むづかしいマーティング学を学ぶというのではなく、なぜ、この地区・地域には人(観光客、消費者など)が来なくなったのか?なぜ、地区にある有効資源を最適開発地域に活かせないのか?何が必要なのか?課題型の経営(自治体経営)をすることがもとめられている。
  例えば、30歳の女性社会起業家がホームレスの自立の支援をしている。殆どのホームレスは、以前「人間関係」でトラブルの体験をしている。ホームレスに横浜の農地を借りて農園で働いてもらい、その中でも本格的に仕事に取り組むようなホームレスの達には、熊本の本格的な農園の仕事を体験させて、自立出来るように支援している。
以上