吉川代表:フクシマ復興支援ネットワーク③
2014年4月21日 お仕事 フクシマ復興支援ネットワークの発足にあたって
吉 川 謙 造 代表の挨拶
公益社団法人 日本技術士会 東北本部長 技術士、博士(工学)
(前東北工業大学 建設システム工学科、都市マネジメント学科教授)
地震と津波による福島第一原発の事故で、十数万の人々が、今まで暮らしてきた故郷とともに大切な仕事を失い、再建の見通しも持てないでおります。
これは日本が初めて遭遇する「国難」です。
被災者の生活再建と被災自治体の再興に、多くの方々の英知を結集するため、「フクシマ復興支援ネットワーク」を立ち上げました。
人が生きるために必要なものは、衣・食・住と職(職業)です。動物的に生きるだけなら最初の3つで十分ですが、人が人として生きていくためには、自分が社会で必要とされているという実感、すなわち「生き甲斐」が必要です。子供のそれは遊びや勉強、高齢者なら子や孫の成長を見守ることかも知れませんが、多くの人にとってそれは「職」だと思います。やり甲斐のある仕事は、生活の糧を得る途であるだけでなく「生き甲斐」そのものなのです。
ですから、単に住む所があり、金銭的な保証が得られれば復興が終るというものではありません。多くの人にとって、定職がなく飲み屋やゲームセンターで日々を過ごすことは決して本意ではありません。これがごく少数の人であれば、大きな社会問題にはなりませんが、今回の災害では福島県の沿岸部を中心に十数万の人々が、故郷とともに大切な仕事を失い、生活再建の見通しが持てないでおります。これは日本が初めて経験する「国難」と言ってよいでしょう。
わが国は過去に数々の災害を克服して今の繁栄を築いてきました。インフラ施設の破壊であれば、これを元通りに修復するのはもっとも得意としてきました。その一方で、災害復興はハード面の数字のみが重視され、住民の生き甲斐やコミュニティの復興といった面は軽視されてきました。
震災から3年が経過し、地震・津波による直接の死者を自殺者の数が上回る所が増えつつあります。また、ふるさとへの帰郷をあきらめて、新しい土地での生活を選択する人も急増しています。このままでは被災地フクシマの記憶どころか、現状までが風化して忘れ去られてしまいます。
政府は、復興には十分な予算を確保しているといいながらも、真の住民救済につながる生き甲斐の再生には、まったく手が付けられないままに時間が経過しようとしています。そして、最も弱い所、弱いものに、この負担が押付けられようとしています。このような理不尽なことが許されて良い訳はありません。
残念ながら今の福島県は、あまりに多くの難問を抱えるために、効果的な政策をまとめ、提言することが出来ずにおります。
そのために復興は他県に大きく遅れております。
避難を余儀なくされている自治体では、居住地が分散しているため、意見を集約することさえ容易ではありません。また、離れ離れの人たちも、自分の町の指導者の考えや、他の人たちの思いを知ることができず、みんな情報不足に悩んでいます。このような人たちの思いが一つにまとまれば、国や県も具体的な行動をとることができ、復興は徐々に軌道に乗ると思います。
私たちはこの状況を全国民と力を合わせて乗りきろうと、このネットワークを立ち上げました。ネットワーク設立の目的は、思想闘争などではありません。被災者が自力で復興に立ち上がれる条件を整え、真の終結宣言が一日も早く出せるよう、お役に立ちたいと考えるものです。
多くの方々の英知を結集でき、復興が目に見えた形で進みますよう、全国の皆様方に心からのご支援をお願い申し上げます。
【 補 足 説 明 】
先の挨拶に関連して、次のような補足説明を追加します。
吉 川 謙 造
なぜ「福島」でなく「フクシマ」なのか?
福島の復興は一地域の問題でなく、我々人類が克服しなければならない大きな社会問題です。東北だけでなく世界中の人たちに知ってもらいたいと考えています。原爆投下地の広島が「ヒロシマ」として世界に知られているように、福島も「フクシマ」として世界中の人々の記憶に留めてもらいたいと考えています。
ネットワークの役割
ネットワークは、主に「被災者の生活再建」、「被災自治体・コミュニティーの再興」という視点から、いくつかの役割を担おうと考えていますが、主なものは、次の2つです。
① 情報発信と意見交換の場の提供
できるだけ多くの情報を集め、大勢の皆様へ発信したいと考えています。一例をあげれば、他県、他市町村の復興の進み具合、他の被災地の住民の考えや活動状況(何が問題で、またどのように解決したか)等です。
② 国や地方自治体(それに東電などの企業)への提言
この会は人を責める会ではありません。補償問題等を考えるとき、どうしても他人を責めなければ収まらないことが出てくるかも知れませんが、本会はこれをすることが目的ではありません。あくまでも現状から出発して、より良い解決方法を模索するため、他者の悪口を言わないことを基本としたいと思います。
分科会と調整機能
本会が関与するテーマは、多岐にわたります。たとえば「呼びかけ」であげた9つの分科会がそれです。これらを同時・平行的に進めて行く中で種々の要望が出てくることが予想されます。このとき、AとB二つの考えが出て、Aを取ればBは取れない、BをとればAはあきらめなければならない、といった事情があるにもかかわらず、「AもBもよこせ」というような無責任な要望はしないようにしたいと思います。また、汚染土壌やガレキの中間貯蔵施設や最終処分場は「県外」に、という要望を最終結論とし、これで一件落着という無責任な立場も厳に慎みたいと思います。
意見の集約方法
各復興再生課題についての分科会は、できるだけ多くの人に参加してもらい、自由に発信・発言してほしいと思います。本会はアナロな情報の処理技術をベースとした「Semi-Exact Sciennce」としての累積型ソリューションテクノロジープログラムに沿って、皆さんからの様々な意見を集約し、小数意見も十分吟味し、本質的な問題解決的アプローチをめざします。 以 上
吉 川 謙 造 代表の挨拶
公益社団法人 日本技術士会 東北本部長 技術士、博士(工学)
(前東北工業大学 建設システム工学科、都市マネジメント学科教授)
地震と津波による福島第一原発の事故で、十数万の人々が、今まで暮らしてきた故郷とともに大切な仕事を失い、再建の見通しも持てないでおります。
これは日本が初めて遭遇する「国難」です。
被災者の生活再建と被災自治体の再興に、多くの方々の英知を結集するため、「フクシマ復興支援ネットワーク」を立ち上げました。
人が生きるために必要なものは、衣・食・住と職(職業)です。動物的に生きるだけなら最初の3つで十分ですが、人が人として生きていくためには、自分が社会で必要とされているという実感、すなわち「生き甲斐」が必要です。子供のそれは遊びや勉強、高齢者なら子や孫の成長を見守ることかも知れませんが、多くの人にとってそれは「職」だと思います。やり甲斐のある仕事は、生活の糧を得る途であるだけでなく「生き甲斐」そのものなのです。
ですから、単に住む所があり、金銭的な保証が得られれば復興が終るというものではありません。多くの人にとって、定職がなく飲み屋やゲームセンターで日々を過ごすことは決して本意ではありません。これがごく少数の人であれば、大きな社会問題にはなりませんが、今回の災害では福島県の沿岸部を中心に十数万の人々が、故郷とともに大切な仕事を失い、生活再建の見通しが持てないでおります。これは日本が初めて経験する「国難」と言ってよいでしょう。
わが国は過去に数々の災害を克服して今の繁栄を築いてきました。インフラ施設の破壊であれば、これを元通りに修復するのはもっとも得意としてきました。その一方で、災害復興はハード面の数字のみが重視され、住民の生き甲斐やコミュニティの復興といった面は軽視されてきました。
震災から3年が経過し、地震・津波による直接の死者を自殺者の数が上回る所が増えつつあります。また、ふるさとへの帰郷をあきらめて、新しい土地での生活を選択する人も急増しています。このままでは被災地フクシマの記憶どころか、現状までが風化して忘れ去られてしまいます。
政府は、復興には十分な予算を確保しているといいながらも、真の住民救済につながる生き甲斐の再生には、まったく手が付けられないままに時間が経過しようとしています。そして、最も弱い所、弱いものに、この負担が押付けられようとしています。このような理不尽なことが許されて良い訳はありません。
残念ながら今の福島県は、あまりに多くの難問を抱えるために、効果的な政策をまとめ、提言することが出来ずにおります。
そのために復興は他県に大きく遅れております。
避難を余儀なくされている自治体では、居住地が分散しているため、意見を集約することさえ容易ではありません。また、離れ離れの人たちも、自分の町の指導者の考えや、他の人たちの思いを知ることができず、みんな情報不足に悩んでいます。このような人たちの思いが一つにまとまれば、国や県も具体的な行動をとることができ、復興は徐々に軌道に乗ると思います。
私たちはこの状況を全国民と力を合わせて乗りきろうと、このネットワークを立ち上げました。ネットワーク設立の目的は、思想闘争などではありません。被災者が自力で復興に立ち上がれる条件を整え、真の終結宣言が一日も早く出せるよう、お役に立ちたいと考えるものです。
多くの方々の英知を結集でき、復興が目に見えた形で進みますよう、全国の皆様方に心からのご支援をお願い申し上げます。
【 補 足 説 明 】
先の挨拶に関連して、次のような補足説明を追加します。
吉 川 謙 造
なぜ「福島」でなく「フクシマ」なのか?
福島の復興は一地域の問題でなく、我々人類が克服しなければならない大きな社会問題です。東北だけでなく世界中の人たちに知ってもらいたいと考えています。原爆投下地の広島が「ヒロシマ」として世界に知られているように、福島も「フクシマ」として世界中の人々の記憶に留めてもらいたいと考えています。
ネットワークの役割
ネットワークは、主に「被災者の生活再建」、「被災自治体・コミュニティーの再興」という視点から、いくつかの役割を担おうと考えていますが、主なものは、次の2つです。
① 情報発信と意見交換の場の提供
できるだけ多くの情報を集め、大勢の皆様へ発信したいと考えています。一例をあげれば、他県、他市町村の復興の進み具合、他の被災地の住民の考えや活動状況(何が問題で、またどのように解決したか)等です。
② 国や地方自治体(それに東電などの企業)への提言
この会は人を責める会ではありません。補償問題等を考えるとき、どうしても他人を責めなければ収まらないことが出てくるかも知れませんが、本会はこれをすることが目的ではありません。あくまでも現状から出発して、より良い解決方法を模索するため、他者の悪口を言わないことを基本としたいと思います。
分科会と調整機能
本会が関与するテーマは、多岐にわたります。たとえば「呼びかけ」であげた9つの分科会がそれです。これらを同時・平行的に進めて行く中で種々の要望が出てくることが予想されます。このとき、AとB二つの考えが出て、Aを取ればBは取れない、BをとればAはあきらめなければならない、といった事情があるにもかかわらず、「AもBもよこせ」というような無責任な要望はしないようにしたいと思います。また、汚染土壌やガレキの中間貯蔵施設や最終処分場は「県外」に、という要望を最終結論とし、これで一件落着という無責任な立場も厳に慎みたいと思います。
意見の集約方法
各復興再生課題についての分科会は、できるだけ多くの人に参加してもらい、自由に発信・発言してほしいと思います。本会はアナロな情報の処理技術をベースとした「Semi-Exact Sciennce」としての累積型ソリューションテクノロジープログラムに沿って、皆さんからの様々な意見を集約し、小数意見も十分吟味し、本質的な問題解決的アプローチをめざします。 以 上