東京新聞2014年3月31日付朝刊「3・11後を生きる」欄に、私たち生涯現役社会創り仲間の井上 仁氏が、大見出し「今後3年 支援者正念場」付きで「福島の問題を風化させない」と話しているご本人の取材対談と、3・11に出版したご著書『ごせやける 許さんにぇ』の大写し写真。また2012年2月に井上氏らが企画した、茨城県つくば市での賠償手続に関する相談会写真も掲載の、取材記事を下記にご紹介して、生涯現役仲間皆様の絶大なるご支援ご協力を心からお願い申し上げます。
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【東京新聞転載記事】
今 後 3 年  支 援 者 正 念 場
  双葉出身 井上さん 本出版 「 町 や 村 の 再 建 道 筋 を 」

 「海や祭り、民謡、地域の付き合い・・・。すべてが忘れがたい故郷。そう簡単に捨てられない」。高校卒業まで双葉町で育った井上さん。原発事故が起きるまで年1、2回の帰省で墓参りをしたり、盆踊りに顔を出したりするのは、心安らぐひとときだった。「私も故郷を奪われた準犠牲者だと思っています」
 本の題名「ごせやける」は、理不尽さに対する憤りを表す福島の方言だ。前半部分の「これまでの3年」では、双葉町民らの苦しみの声を振り返りながら、支援者、行政の動きもつぶさに記録した。
 井上さんは事故から1年余り、双葉中学校のOBとともに、埼玉県加須市の旧騎西高校に集団避難した町民の直接的な支援にたずさわった。子どもたちの学習環境づくりや、茨城県つくば市の公務員宿舎への移住などにかかわった。「経済的な問題だけでなく、気持ちの整理に深くかかわる重要なこと」と考え、東電への損害賠償請求の手続きを弁護士に相談できる仕組みもつくった。
 1年を過ぎたころから、町の復興計画作りにもかかわる。長年やってきた企業経営や行政改革の工程づくりのコンサルタント事業の経験を生かし、町民から集まった生の声をデーターとして整理し、課題を洗い出した。
 この間、「できるだけ町の人に寄り添い、要望を吸い上げ、自立を支援したい」と思ってきた。だが、3年たった今、「力のある人はある意味で町から離れ自立していく。一方、そうではない人は、町全体が消滅するかもしれないという状況の中で、ますます先が見えなくなり疲れ果てている」と感じる。
 「被災者にもう一度前を向いてもらえるよう今こそわれわれのような応援部隊が道筋を付けなくては」。その決意で、本の後半では今後3年で取り組む課題を整理した。これ以上関連死の犠牲者を出さないことや、損害賠償問題の決着は「すべての被災者に必要な最優先課題」だ。
 双葉町は96%が「帰宅困難区域」。町の調査では町を離れてもいい、離れたいという町民が九割に上る。「長期的にどうなるかは分らない。だがこの3年、手をこまぬいているわけにはいかない。町のDNAをどう守っていくか」。
魅力ある「仮の町づくり」や、移住者への住まいの保証なども今後3年でめどをつけるべきだと考える。
 「国や東電、被災自治体を動かす計画で実行を迫るため、専門的な知識や技術を結集したい」。本を手渡しながら同じ思いを持つ人とつながり、「フクシマ復興支援ネットワーク」として活動していく予定だ。
  ネットワークのメールアドレスは、fukushima-n.w@belhyud.com
【取材記者後記】
 これからの3年こそ、支援者の正念場・・・。東京電力福島第一原発の事故で、全町民が避難を続ける福島県双葉町出身の井上さん(72)=横浜市旭区=が今月、これまでの被災者支援を振り返り、今後3年で取り組むべき課題をまとめた「ごせやける許さんにぇ」(言叢社)を出版した。「被災者の生活再建や村の再興の道筋をどうつけていくのか、読んだ人に一緒に考えてほしい」と願う。(小林由比)
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【読売新聞 2014年3月31日付記事転載】
    双  葉  町  の  歩  み  一  冊  に

  福島県双葉町出身の企業経営コンサルタント、井上 仁さん(72)が今月、東京電力福島第一原発事故で全町避難が続く町の3年の歩みをまとめた「ごせやける 許さんにぇ」(言叢社)を出版した。
  書籍名は、福島の方言で「悔しい、腹が立つ」の意味。18歳まで町で過ごした井上さんは、「被災者をはじめ、福島の復興を考える人にぜひ読んでほしい」と話す。全国の書店で販売しており、定価2000円(税込み)。