日 本 生 涯 現 役 推 進 協 議 会 &  
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Human Capital Online10/17
転載URL=http://www.nikkeibp.co.jp/atclhco/15/249752/101200037/?P=1
    激 増 す る 5 0 代 以 上 、 高 齢 化 企 業 の 未 来
                        キャリアコンサルタント/
                        ダイバーシティコンサルタント  植田 寿乃       

  2017年6月27日に公開セミナー「50歳からの幸せなキャリア~シニア世代のモチベーション活性化のために~」を開催しました。
 下記は、50代受講者からいただいた感想の1つです。
 昭和のスタイルのままではダメだ、と知ってはいましたが、今回、その理由・根拠が明確になりました。
 「そのままでは終わり(退職・悠々自適)まで行けない変化の時代にあること」。あらためて今起こっているいろいろなことに目を向けると、自身がより幸せであり続けるために、昭和世代が想定している「今後」は既に幻想で ある、という事実を多くの世代と共有していかなくてはいけない、と感じました。
 本セミナーの受講生16名は50代の方がほとんどで、50歳目前の49歳の方と、社内の50代の研修を企画中の人材開発担当の方(40代)でした。参加者からの反応がよかったので、2018年1月15日(月)にも2回目が開催されることになりました。
 実は、このコースは、私が2014年3月に一度企画したのですが開催できませんでした。当時はまだ企業の50代向けの研修は年金などの老後設計のファイナンシャルプランのみでした。また、どちらかといえば早期退職制度で、早めに会社から卒業を促す企業が多くありました。しかし今、早期退職制度は消え、定年はゴールではなく再雇用制度で働き続ける時代となりました。
 実際、私の周りでも働き続ける50代の男性・女性が増えています。特にバブル入社組(1988~1992年)がここ数年で50歳になってきているので、急速に増加している感があります。
 20代・30代の労働力確保がままならないなか、定年退職の年齢が上がり、定年後の再雇用制度を利用する人も増えてきて、まさに高齢化企業時代が始まっています。従業員の平均年齢が毎年上がり、45歳を超えるという会社も増えています。
 少子高齢化のなか、女性の活躍推進で、女性が働き続けるのが当たり前となったものの、活躍できているかどうかがいま一つで悩んでいる企業が多いようです。そこに、同じように増え続ける50歳以上のシニア層。その活躍も求められてきました。
 果たして皆さんの会社では、50歳以上の方々がイキイキと働き、活躍し、会社にプラスの影響を与えているでしょうか? これには大きな疑問符が付くかと思います。50歳以上のシニア層の活躍。多くの企業が直面する、避けることができない重要な問題です。

   50代が働き続けるモチベーションとは?
 55歳の役職定年や、60歳の節目での雇用契約変更を超えて働き続ける第一の理由は、いうまでもなく金銭的な問題です。年金受給年齢が上がり、働き続けていかなくては収入に困ります。
 では、老後の生活に不安がないほど十分な預貯金があったとしたら、働き続けることを選ぶ55歳以上の人が、今の時点でどのくらいいらっしゃるでしょうか? 実際に私の周りの50代後半世代には、十分なお金があったら、会社を辞めて好きなことをして暮らしたいという友人たちがたくさんいます。
 「もし高額、例えば、3億円の宝くじが当たったとして、今の仕事を続けますか?」
 という問いは、どの世代にとっても同じ回答になるかもしれませんが、働き続ける理由が金銭的なものだけの人は、確実に辞めるでしょう。しかし、20代・30代・40代の場合は、働き続ける理由が、金銭的なものだけということが少ない。
20代の、いろいろな経験自体が喜びになる『成長期』、30代は自分で仕事も判断できる一人前になる『自立期』、そして40代は仕事で多くを期待される『責任期』。会社人生における役割をしっかり自覚できる時期です。つまり、会社から必要とされているという感覚が、働くうえでも感じられる時期です。
 しかし、50代は必ずしもそうではありません。昭和時代を振り返れば、ピラミッドを上り詰め、体力は落ちてきているのにプライドだけが高くなる。周囲が扱いに困る世代として煙たがられることもありました。40代と同じ仕事ができると本人が頑張っても、それが空回りに見えて、周りからは早く後進の40代・30代に席を空けてほしいと思われることも。
 そういった少し先輩である50代、昭和世代の姿は、 残念ながらロールモデルではなく反面教師でした。まさに今、50代に突入してきている方々のモチベーションを下げています。「自分は必要とされていなくても、金銭的に困るから年金が出るまでは働くしかない」というところにたどり着いてしまう方が多い。だから50代になると失速してしまうのです。
・お金のためと割り切って、何も考えず淡々と働く
・言われたことだけを最低限だけやるように働く
・首にならない程度に適当に手を抜きながら働く
・人に関わらず自分の専門分野だけ、得意なことだけで働く
・自分の過去の実績や自慢を周りにしまくり、今の待遇に不満を言いながら働く
・昭和人生設計図が壊れたことを恨みながら、しかたがなく働く
 もし、こんな気持ちの50代の方ばかりが増えていったら会社はどうなるでしょうか? 私は17年間、「モチベーション」をテーマに研修をしています。働き続けるための自分自身のモチベーション、やる気や意欲、動機付けはすべての人に重要です。それには、注目すべき2つの要素があります。
 1つは、自分がやるべき仕事や求められる役割が、自分を磨き、自分の可能性を広げて夢につながると感じ、興味を持ち、積極的に関わりたいと思えているかどうか。もう1つは、組織の中で、周りの人との信頼関係が育まれているかどうかです。
 この2つが満たされている方々は、自分が働き続けることへの自負と、会社へのエンゲージメントに支えられて働き続けられるし、会社にとってもいつまでもいてほしい存在になることでしょう。
 この連載でも何度も触れていますが、50代に求められる役割は「貢献」です。自分の経験や知識のすべてを、後進のため、会社のために与えることです。昭和時代の働く人生にはなかった役割です。40代の「責任」を手放し、50代の「貢献」にしっかりシフトできているか? 多くの50代は戸惑っています。   つづく