井上 仁氏:②フクシマ復興応援Network
2015年2月15日 お仕事【 そ の 2 】
1 9 9 6 年 発 表 の 「 土 の 団 粒 構 造 モ デ ル 」
農業は英語ではアグリカルチャ。カルチャは文化とか耕すといった意味です。自然界では微生物が繁殖し、植物の根と共存します。有名な菌はVA菌根菌、VA根粒菌とかがありますが、全体の1%も解明されていないと言われています。此処近年、分析技術が向上し、1996年土の構造モデルが発表されています。意外に新しいことであることに驚かされます。
微 生 物 と 植 物 が つ く る
保 水 排 水 両 立 の「 団 粒 構 造 」
微生物たちは34億年、植物は5億年間、自然界の営みの中で繁殖繁栄してきました。
その生活環境を作ったのが土の「団粒構造」と言われるものです。保水と排水の機能を持つ優れた構造です。残念ながら人間には創ることが出来ません。
少し突っ込んだ話ですが、良い土とは肥沃であること、水はけが良くて水持ちが良いこと。後者2つは矛盾していますが、なぜでしょうか。
自然界では保水排水両立は常識です。少しこの辺りを考えてみましょう。先の土の団粒構造モデル、ここに答えがあります。
長 年 の 耕 起 が 硬 盤 層 を つ く る !
長年畑を耕すと、作土の下に硬盤層や犂底盤と言われる硬い土の層が形成されます。
十勝では過去100馬力程度のトラクターにサブソイラーを付けて破壊していました。近年は100馬力程度のトラクターでは刃が立たなくなって、50、60クラスのクローラー重機で破壊しています。
ところが、ヤブ田フアームでは2006年不耕起栽培に入りましたが、シーズン半年で、この犂底盤が消滅しています。
な ぜ、 ヤ ブ 田 フ ア ー ム で 硬 盤 層 が 消 え た の か ?
北海道大学に土壌保全学という研究室があり、過去30年以上硬盤層に取り組む学者がおられます。相馬克之先生です。
毎年3月一週目に土作り懇談会を開催されています。十勝でも開催されたことがあり、石狩の友人小林卓也さんが事例発表されるということで、私も応援のつもりで出かけました。相馬先生が出席者全員に自己紹介を促され、私は「不耕起の結果、硬盤層が消滅しました」という報告をしました。しかし、先生からは無視されてしまい、何とかしてひざを交えて話し合いしたいものだという想いを抱きました。
後日、札幌で有機JAS認証の件で長年お世話になっている方から、試験圃場の提供者を探しているという案内がきました。見ると北海道大学土壌保全学教室の学生さんの卒業研究試験用圃場です。ためらいもなく手を挙げ、やぶ田ファームの圃場を提供することにしました。参加者は帯広畜産大学土壌学の谷先生、農水省の根圏微生物研究の池田先生、北海道大学土壌保全学の相馬先生、きのこ、真菌類、微生物研究者の山川先生、そして学生さんと薮田です。
まずは ヤブ田フアームの圃場で自然栽培3年目、無施肥、不耕起で作物が茂っている状況を見てもらいました。谷先生以外は納得されましたが、先生から「貴方の畑は低台にあるので、高台から流れ湧いてくる肥料を吸って成長しているのでしょう」というコメントがありました。
硬 盤 層 が で き る の は、 微 生 物 が 繁 殖 を や め た か ら !
次に「硬盤層」、「犂底盤」の話になり、山川先生と相馬先生との間で、次のようなやり取りがありました。
「硬盤層ってなんだい?」
「有機圃場の土も、慣行栽培圃場の土も、自然界の土も、硬盤層の土も、土の粒子は皆同じです。土の粒子の間に隙間があるかないかです。25ミクロン以下のミクロ間隙、それ以上のマクロ間隙、この2つがほどよく存在しているかどうかです。隙間がなくなれば硬くなり、空気、水が根っこまで通らなくなり、硬盤層上で農業をやるということになります」
「なんで、そうなるのだ?」
「それは 微生物が繁殖をやめたからです。」
「じゃあ 微生物を繁殖させればいいのか?」
「もちろん」
「そんな簡単な事か」
過 渡 な 耕 起 が 団 粒 を 破 壊 し 、
微 生 物 が 繁 殖 す る 環 境 を 損 な う
この時すでに 山川先生の頭のなかには 硬盤層を消滅させる「ヤマカワプログラム」のイメージは出来上がっていたのだと思います。
相馬先生は数十年間追求してきたことが「そんな簡単な事か」と言われたことにかなりショックを受けられたようでした。
後日 お二人の懇親を深めようと、行きつけのタイ料理店「潮華」で会食をセッティングしました。
数日後、山川先生が圃場に来られ、「ヤマカワプログラム」を実施しました。5日後、劇的変化が起きて硬盤層は消滅しました。「ヤマカワプログラム施用」で微生物が反応し、土の下で爆発的に繁殖を再開したのです。今思えば当然の成り行きで、「なんだ」と思うようなことですが、その時はワケも分からず興奮したものでした。なぜ微生物が繁殖を再開したのか、じゃあ今まではなぜしなかったのか、どれもなるほどと思うことばかりです。(備考:ヤマカワプログラムの詳細は別途紹介します。)
団粒構造の話は大体理解いただけましたでしょうか。腐食(土壌有機物)が付着した土の粒子がコロニーを形成し、団粒構造となり、微生物が繁殖しやすい保水性にも排水性にも優れた良い土壌ができ上がります。耕す場合、ロータリー耕起など過渡な破砕では、団粒破壊が起こり、微生物が繁殖する環境が失われます。そのため、微生物が土壌の中で植物と共存することが難しくなり、植物をケアーする力が弱くなります。以前あるドクターが「ネイティブアメリカンのお爺さんに、『人は大地にクワを入れた時から間違いが始まった』と聞かされて意味がわからなかったが、団粒構造や自然栽培の話を聞いて納得できた」とおっしゃっていました。
まとめ(事務局)
① 作物栽培によい土とは、保水性が良くて、排水性もいい団粒構造を持つ土。
② 団粒には、腐食した植物を骨格に程良い大きな隙間と小さな隙間が存在する。
③ 団粒を創造したのは微生物で、微生物は団粒を住みかとする。
④ 微生物が繁殖しているところに植物が共存し、相互に繁栄しあう。
⑤ 過度な耕起で団粒構造が破壊され、微生物ができなくなり、作土の下に硬盤層ができる。
⑥ 硬盤層は微生物繁殖を許さず、水も空気も作物の根も通さなくなる。 つづく
1 9 9 6 年 発 表 の 「 土 の 団 粒 構 造 モ デ ル 」
農業は英語ではアグリカルチャ。カルチャは文化とか耕すといった意味です。自然界では微生物が繁殖し、植物の根と共存します。有名な菌はVA菌根菌、VA根粒菌とかがありますが、全体の1%も解明されていないと言われています。此処近年、分析技術が向上し、1996年土の構造モデルが発表されています。意外に新しいことであることに驚かされます。
微 生 物 と 植 物 が つ く る
保 水 排 水 両 立 の「 団 粒 構 造 」
微生物たちは34億年、植物は5億年間、自然界の営みの中で繁殖繁栄してきました。
その生活環境を作ったのが土の「団粒構造」と言われるものです。保水と排水の機能を持つ優れた構造です。残念ながら人間には創ることが出来ません。
少し突っ込んだ話ですが、良い土とは肥沃であること、水はけが良くて水持ちが良いこと。後者2つは矛盾していますが、なぜでしょうか。
自然界では保水排水両立は常識です。少しこの辺りを考えてみましょう。先の土の団粒構造モデル、ここに答えがあります。
長 年 の 耕 起 が 硬 盤 層 を つ く る !
長年畑を耕すと、作土の下に硬盤層や犂底盤と言われる硬い土の層が形成されます。
十勝では過去100馬力程度のトラクターにサブソイラーを付けて破壊していました。近年は100馬力程度のトラクターでは刃が立たなくなって、50、60クラスのクローラー重機で破壊しています。
ところが、ヤブ田フアームでは2006年不耕起栽培に入りましたが、シーズン半年で、この犂底盤が消滅しています。
な ぜ、 ヤ ブ 田 フ ア ー ム で 硬 盤 層 が 消 え た の か ?
北海道大学に土壌保全学という研究室があり、過去30年以上硬盤層に取り組む学者がおられます。相馬克之先生です。
毎年3月一週目に土作り懇談会を開催されています。十勝でも開催されたことがあり、石狩の友人小林卓也さんが事例発表されるということで、私も応援のつもりで出かけました。相馬先生が出席者全員に自己紹介を促され、私は「不耕起の結果、硬盤層が消滅しました」という報告をしました。しかし、先生からは無視されてしまい、何とかしてひざを交えて話し合いしたいものだという想いを抱きました。
後日、札幌で有機JAS認証の件で長年お世話になっている方から、試験圃場の提供者を探しているという案内がきました。見ると北海道大学土壌保全学教室の学生さんの卒業研究試験用圃場です。ためらいもなく手を挙げ、やぶ田ファームの圃場を提供することにしました。参加者は帯広畜産大学土壌学の谷先生、農水省の根圏微生物研究の池田先生、北海道大学土壌保全学の相馬先生、きのこ、真菌類、微生物研究者の山川先生、そして学生さんと薮田です。
まずは ヤブ田フアームの圃場で自然栽培3年目、無施肥、不耕起で作物が茂っている状況を見てもらいました。谷先生以外は納得されましたが、先生から「貴方の畑は低台にあるので、高台から流れ湧いてくる肥料を吸って成長しているのでしょう」というコメントがありました。
硬 盤 層 が で き る の は、 微 生 物 が 繁 殖 を や め た か ら !
次に「硬盤層」、「犂底盤」の話になり、山川先生と相馬先生との間で、次のようなやり取りがありました。
「硬盤層ってなんだい?」
「有機圃場の土も、慣行栽培圃場の土も、自然界の土も、硬盤層の土も、土の粒子は皆同じです。土の粒子の間に隙間があるかないかです。25ミクロン以下のミクロ間隙、それ以上のマクロ間隙、この2つがほどよく存在しているかどうかです。隙間がなくなれば硬くなり、空気、水が根っこまで通らなくなり、硬盤層上で農業をやるということになります」
「なんで、そうなるのだ?」
「それは 微生物が繁殖をやめたからです。」
「じゃあ 微生物を繁殖させればいいのか?」
「もちろん」
「そんな簡単な事か」
過 渡 な 耕 起 が 団 粒 を 破 壊 し 、
微 生 物 が 繁 殖 す る 環 境 を 損 な う
この時すでに 山川先生の頭のなかには 硬盤層を消滅させる「ヤマカワプログラム」のイメージは出来上がっていたのだと思います。
相馬先生は数十年間追求してきたことが「そんな簡単な事か」と言われたことにかなりショックを受けられたようでした。
後日 お二人の懇親を深めようと、行きつけのタイ料理店「潮華」で会食をセッティングしました。
数日後、山川先生が圃場に来られ、「ヤマカワプログラム」を実施しました。5日後、劇的変化が起きて硬盤層は消滅しました。「ヤマカワプログラム施用」で微生物が反応し、土の下で爆発的に繁殖を再開したのです。今思えば当然の成り行きで、「なんだ」と思うようなことですが、その時はワケも分からず興奮したものでした。なぜ微生物が繁殖を再開したのか、じゃあ今まではなぜしなかったのか、どれもなるほどと思うことばかりです。(備考:ヤマカワプログラムの詳細は別途紹介します。)
団粒構造の話は大体理解いただけましたでしょうか。腐食(土壌有機物)が付着した土の粒子がコロニーを形成し、団粒構造となり、微生物が繁殖しやすい保水性にも排水性にも優れた良い土壌ができ上がります。耕す場合、ロータリー耕起など過渡な破砕では、団粒破壊が起こり、微生物が繁殖する環境が失われます。そのため、微生物が土壌の中で植物と共存することが難しくなり、植物をケアーする力が弱くなります。以前あるドクターが「ネイティブアメリカンのお爺さんに、『人は大地にクワを入れた時から間違いが始まった』と聞かされて意味がわからなかったが、団粒構造や自然栽培の話を聞いて納得できた」とおっしゃっていました。
まとめ(事務局)
① 作物栽培によい土とは、保水性が良くて、排水性もいい団粒構造を持つ土。
② 団粒には、腐食した植物を骨格に程良い大きな隙間と小さな隙間が存在する。
③ 団粒を創造したのは微生物で、微生物は団粒を住みかとする。
④ 微生物が繁殖しているところに植物が共存し、相互に繁栄しあう。
⑤ 過度な耕起で団粒構造が破壊され、微生物ができなくなり、作土の下に硬盤層ができる。
⑥ 硬盤層は微生物繁殖を許さず、水も空気も作物の根も通さなくなる。 つづく