生涯現役の立場で雇用問題を考える④
2013年4月15日 お仕事会社の中身も仕事も、どんどん変わる時代に
でも、最近は状況が変わりました。1つの会社に長期間いられるとも限らないし、仕事の中身もどんどん変わっていきます。過去には祖父の時代から農業をやっていて、親も農業だったら自分も農業という時代がありました。そして、紡績会社が化粧品会社になるなど、会社の名前は同じでも中身が変わって生き残ってきた時代もありました。しかし現在は、たとえ有名企業であっても経営危機が叫ばれる時代になったわけです。退職金により労働者が企業に縛り付けられるのは望ましくない。よって優遇税制はやめた方がいい。これがあると、辞めたら損すると思う人が出てくるからです。労働者をつなぎとめるなら、立派な待遇などでつなぎとめるべきですね。
そもそも流動化が必要だという話について、私はそれは逆ではないかと思っています。流動化ではなく、安定化が必要なのです。先ほどもお話しましたが、今の二極化した雇用ルールのままだと、短期の仕事が増えすぎる。つまり、過度に流動化してしまうのが問題なのです。多くの人は安定を望むわけですから。では、より安定した雇用を生み出すために、何をすればよいのか。ここで、従来型の正社員を増やそう、非正規は使いにくくしてしまおう、という形にしてしまってはいけない。1つの会社の中で安定させることをゴールとするのではなく、転職や職業訓練などもはさみつつ、結果として途切れない働き方を目指すべきです。そのために必要なのは、雇用の「流動化」ではなくて雇用の「多様化」です。
なるほど。このままでは仕事の中身が不安定になっていくというお話ですが、技術革新で、人の仕事が機械に置き換えられ、人がいらなくなるという話もありますね。
安藤:昨年の3月に、米国ネバダ州で、自動運転自動車の公道走行を許可する法律が通りました。最初に免許を取得したのは、グーグルでした。現時点では人がモニターしながら走行しているようですが、行き先を登録すればクルマが勝手に走るようにするといった実験が公道で可能になった。これは画期的ですね。このままいくと、10年後にはトラックやバス、タクシーの運転手などという仕事がなくなってしまうかもしれません。
まさに技術革新によって、人の仕事が減っていくかもしれないケースですね。
安藤:技術革新により人の仕事が増える場合もあるけれど、減る場合もあります。ファミリーレストランのドリンクバーなども仕事が減った例と言えるでしょう。今は、多くの店で飲み放題のセルフサービスになっているでしょう。経理だって、昔はそろばんを使う担当者が会社に何人もいて、毎日パチパチやっていたわけです。それが今はコンピューターソフトウエアと担当者が数人。機械に置き換えられています。駅の改札もそうでしょう。こういうことがこれからも、どんどん起こっていく。
これまでの歴史を振り返ると、様々な心配があったにもかかわらず、技術革新によりトータルでは仕事が増えてきました。しかしあまりにスピードが加速したため、今回は違うのではないかという懸念を持つ人も多いのです。
技術革新を止めることはできない
一方で、日本では15歳から64歳までの生産年齢人口が今後どんどん減っていきます。およその数字ですが、10年おきに1000万人弱のペースで生産年齢人口が減っていくわけで、人手不足が起こる心配が十分にある。しかし高齢者は同じペースでは減りません。そうすると技術革新による仕事の減少と、どっちが早いかという相対的速度が非常に問題になるかもしれません。労働力も減っていくけれど、仕事も減っていく。高齢者の65歳までの継続雇用は、2025年までかけて段階的に実施されていくわけですが、そのタイミングが、この人手不足のところにうまくかみ合ってくるといいのですが。そして技術革新によって増える方の仕事にうまく対応できる人材を増やすためにも、今まで以上に教育や職業訓練が重要になってくると思います。
これから、高齢者の数はだいたい横ばいで若者は減っていきます。そうすれば、人手不足の心配は十分にあるわけです。「高齢者が会社に居座るから若者の良い職がない」ことを心配するよりも、仕事をこなす人材がいないことを心配しなければならない日も近いのではないでしょうか。そもそも継続雇用された高齢者が担当する仕事と、中・長期雇用を前提として若者にやってもらう仕事は直接的にはバッティングしないでしょう。仕事の奪い合いの図式から抜け出して、いかにしてこの国を豊かにしていくのかを考える必要があります。もちろん、必要な再分配への目配りは欠かせません。
今後は、技術革新によって仕事が減るのと労働力が減るのと、どっちが早いかという相対的速度が問題になるという視点を持っておいた方が良いでしょう。もし仕事の減少の方が緩やかなら、人手不足になって労働者の待遇は上がる。反対に仕事の減少の方が早かったら、仕事がなくて困ることになる。これはこれからの問題です。
でも1つだけはっきりしているのは、技術革新を止めるのは、無理だということでしょうね。
でも、最近は状況が変わりました。1つの会社に長期間いられるとも限らないし、仕事の中身もどんどん変わっていきます。過去には祖父の時代から農業をやっていて、親も農業だったら自分も農業という時代がありました。そして、紡績会社が化粧品会社になるなど、会社の名前は同じでも中身が変わって生き残ってきた時代もありました。しかし現在は、たとえ有名企業であっても経営危機が叫ばれる時代になったわけです。退職金により労働者が企業に縛り付けられるのは望ましくない。よって優遇税制はやめた方がいい。これがあると、辞めたら損すると思う人が出てくるからです。労働者をつなぎとめるなら、立派な待遇などでつなぎとめるべきですね。
そもそも流動化が必要だという話について、私はそれは逆ではないかと思っています。流動化ではなく、安定化が必要なのです。先ほどもお話しましたが、今の二極化した雇用ルールのままだと、短期の仕事が増えすぎる。つまり、過度に流動化してしまうのが問題なのです。多くの人は安定を望むわけですから。では、より安定した雇用を生み出すために、何をすればよいのか。ここで、従来型の正社員を増やそう、非正規は使いにくくしてしまおう、という形にしてしまってはいけない。1つの会社の中で安定させることをゴールとするのではなく、転職や職業訓練などもはさみつつ、結果として途切れない働き方を目指すべきです。そのために必要なのは、雇用の「流動化」ではなくて雇用の「多様化」です。
なるほど。このままでは仕事の中身が不安定になっていくというお話ですが、技術革新で、人の仕事が機械に置き換えられ、人がいらなくなるという話もありますね。
安藤:昨年の3月に、米国ネバダ州で、自動運転自動車の公道走行を許可する法律が通りました。最初に免許を取得したのは、グーグルでした。現時点では人がモニターしながら走行しているようですが、行き先を登録すればクルマが勝手に走るようにするといった実験が公道で可能になった。これは画期的ですね。このままいくと、10年後にはトラックやバス、タクシーの運転手などという仕事がなくなってしまうかもしれません。
まさに技術革新によって、人の仕事が減っていくかもしれないケースですね。
安藤:技術革新により人の仕事が増える場合もあるけれど、減る場合もあります。ファミリーレストランのドリンクバーなども仕事が減った例と言えるでしょう。今は、多くの店で飲み放題のセルフサービスになっているでしょう。経理だって、昔はそろばんを使う担当者が会社に何人もいて、毎日パチパチやっていたわけです。それが今はコンピューターソフトウエアと担当者が数人。機械に置き換えられています。駅の改札もそうでしょう。こういうことがこれからも、どんどん起こっていく。
これまでの歴史を振り返ると、様々な心配があったにもかかわらず、技術革新によりトータルでは仕事が増えてきました。しかしあまりにスピードが加速したため、今回は違うのではないかという懸念を持つ人も多いのです。
技術革新を止めることはできない
一方で、日本では15歳から64歳までの生産年齢人口が今後どんどん減っていきます。およその数字ですが、10年おきに1000万人弱のペースで生産年齢人口が減っていくわけで、人手不足が起こる心配が十分にある。しかし高齢者は同じペースでは減りません。そうすると技術革新による仕事の減少と、どっちが早いかという相対的速度が非常に問題になるかもしれません。労働力も減っていくけれど、仕事も減っていく。高齢者の65歳までの継続雇用は、2025年までかけて段階的に実施されていくわけですが、そのタイミングが、この人手不足のところにうまくかみ合ってくるといいのですが。そして技術革新によって増える方の仕事にうまく対応できる人材を増やすためにも、今まで以上に教育や職業訓練が重要になってくると思います。
これから、高齢者の数はだいたい横ばいで若者は減っていきます。そうすれば、人手不足の心配は十分にあるわけです。「高齢者が会社に居座るから若者の良い職がない」ことを心配するよりも、仕事をこなす人材がいないことを心配しなければならない日も近いのではないでしょうか。そもそも継続雇用された高齢者が担当する仕事と、中・長期雇用を前提として若者にやってもらう仕事は直接的にはバッティングしないでしょう。仕事の奪い合いの図式から抜け出して、いかにしてこの国を豊かにしていくのかを考える必要があります。もちろん、必要な再分配への目配りは欠かせません。
今後は、技術革新によって仕事が減るのと労働力が減るのと、どっちが早いかという相対的速度が問題になるという視点を持っておいた方が良いでしょう。もし仕事の減少の方が緩やかなら、人手不足になって労働者の待遇は上がる。反対に仕事の減少の方が早かったら、仕事がなくて困ることになる。これはこれからの問題です。
でも1つだけはっきりしているのは、技術革新を止めるのは、無理だということでしょうね。