信用調査業老舗:「古さに似合わぬ若さ」
2016年3月12日 お仕事 私たち『生涯現役プロデューサー』仮ご登録皆様が、「“ イメージとは違う!! ” は褒め言葉です」の意味を、日経ビジネス誌の転載から学びたいと存じます。信用調査業界の老舗で若さ先駆リーダー役の語る「ダイバーシティ対談(百年企業が大事にする『意外性』3項目)」に関する諸兄姉のご意見があれば、ぜひお聞かせください。
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信用調査業界最古の老舗、東京商工リサーチ。その社内は、124年目を迎えたとは思えない躍動感に満ちている。キャスターの草野満代さんが同社執行役員の田中智子さんに、「“古さ”に似合わぬ若々しさ」の秘密を聞いた。
【 田中 智子(たなか・ともこ)氏 略歴:外資系IT企業を経て2006年に米信用調査会社、ダンアンドブラッドストリート(D&B)に入社。2012年、東京商工リサーチへ転籍以降、グローバル企業データベースの価値をわかりやすく伝えるためにコンサルティング部門を立ち上げ、ソリューション開発、講演、人材育成に従事。2015年に執行役員に就任した。】
【 草野 満代(くさの・みつよ)氏略歴:津田塾大学卒業後、NHKに入局。1997年2月に独立。同年10月から9年に渡り「筑紫哲也 NEWS23」(TBS系)のサブキャスターを務めた。現在は「L4 YOU!」(テレビ東京系)のメーンキャスター、「ごはんジャパン」(テレビ朝日系)のナビゲーターを務める。環境省地球いきもの応援団、総務省年金業務監視委員会などのメンバーも務める。】
意外性(1) 人 事
実力主義の徹底で、社歴も学歴も性別も関係なくフェアな会社です。
草野 東京商工リサーチ(以下TSR)さんは、信用調査業界で最も歴史のある会社です。そんな“老舗中の老舗”で女性が執行役員になるまでには、様々なご苦労があったのではないですか。
田中 それが全くないんですよ。私が弊社に転職したのは4年前。幹部候補として入社したわけではないので、“流れ”に恵まれた結果だと思います。
草野 流れですか?
田中 弊社の基幹ビジネスである調査の他に、ここ数年で会社が注力した分野が、たまたま私の担当分野だったのです。それから、弊社の人事制度の公正さも大きな要因だったと思います。
草野 田中さんはどんな時に、人事制度の公正さを実感されたのですか。
田中 逆説的になりますが、私は入社以来「女性だからこんな目に遭った」と悔しい思いをしたことが一度もないんです。それくらい、客観的に社員を評価する。私は様々な企業で働きましたが、弊社の評価制度が最も公正でした。ただ、フェアだけれども仕事に対してはむしろ厳しいと言えます。
草野 というのは?
田中 高い評価に甘んじていても、それが継続されるわけではありません。
草野 常に気が抜けない(笑)。
田中 はい(笑)。ところで(草野さんの出身の)NHKさんも、女性の活躍が目立つ職場ですよね。
草野 女性アナウンサーは“やわらかニュース担当”という時代もありましたが幸い私は、その風潮が変わりつつある時代に入局しました。入局3年目に東京でのニュース番組を担当させてもらえたのですが、男性ではあり得ないこと。ある意味“逆差別的”と言えます。だからその時、自分に言い聞かせたのは「勘違いをしてはいけない」ということでした。頂いたチャンスを、真摯に自分の力を伸ばすために生かして初めて、「次」につながる。
田中 そう考えると私も、責任は重いですよね。
草野 会社として、女性活用を後押しする動きはあるのでしょうか。
田中 人事部では定期的に、効果測定の目的も含め研修を実施しています。昇格後、一定期間が経過した女性管理職が、昇進後に取り組んだことや現在、直面している課題を発表する。後輩に“背中を見せる”ことも狙いです。
草野 先輩たちはこれだけ仕事をしたから、認められたのだと示す。なるほど、フェアであると同時にシビアでもある――。おっしゃった通りですね。
意外性(2) 社 員 の 成 長
意見を受け入れる度量を持つこと。それが成長の源です。
草野 田中さんの担当業務について、聞かせてください。
田中 弊社のグローバル企業データベースは、お客様がお持ちのデータと統合することで財務、審査、調達、営業など経営戦略に活用できます。その価値をわかりやすく伝え、お客様のソリューション提案に活かすことです。
草野 顧客と自社、双方が持つデータを融合し、整理することで、より「付加価値」の高い情報に“進化”する…。非常に面白い試みですね。ただ、基幹事業の調査部門は現状、非常に順調ですよね。それでも挑戦する真意とは、何でしょうか。
田中 社会情勢もお客様の要望も、日々変わっていく。現状に甘んじて、取り残されるわけにはいきません。
草野 事業領域の拡大はリスクも高いので、二の足を踏む人も多いですよね。
田中 当然意見は出ます。ただし弊社では、「異論を聞く耳を持つこと」を重視しています。異論が出たら必ず、議論を尽くす。とことん話し合い、自分と他者との違いを受け入れることが視野を広げてくれるからです。個人も組織も、そうしたプロセスを経て成長するのだと思います。
草野 その考え方こそが、御社のダイバーシティの根幹なんでしょうね。
意外性(3) 仕 事 の 進 め 方
ブランドイメージを基盤に付加価値を創造し続けます。
草野 事業領域の拡大の話が出ましたが、ビジネスの世界では「一見、新しいことに取り組んでいるようで、実は従来の延長線上にあった」というケースも珍しくない。日本企業にありがちな「前例主義」の弊害なんでしょうか。
田中 私は前例主義から抜け出す近道は、常に危機意識を持つことではないかと思います。例えば弊社の生命線は「より速く、多く、高い付加価値を提供し続けること」。そのために従来の延長線上にはない、「新しい視点」を持つことが必須です。「このままではいけない」と、危機感を常に持ちながら試行錯誤を続けることが、新しい視点を持つうえで重要なのではないでしょうか。
草野 以前、番組で東京の下町にある中小企業を特集したんです。多くの企業が創業時とは、全く違う製品を作っていた。時代のニーズに合わせて自社の技術を新しい分野に適合させてきた姿に、サバイバルの歴史を感じました。
田中 そうやって皆さん、常に新たな付加価値を提供されているんですね。TSRの原点は信用調査であり、今後もお客様の課題を解決するために新しい付加価値を提供し続け、200年企業を目指したいと思います。
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信用調査業界最古の老舗、東京商工リサーチ。その社内は、124年目を迎えたとは思えない躍動感に満ちている。キャスターの草野満代さんが同社執行役員の田中智子さんに、「“古さ”に似合わぬ若々しさ」の秘密を聞いた。
【 田中 智子(たなか・ともこ)氏 略歴:外資系IT企業を経て2006年に米信用調査会社、ダンアンドブラッドストリート(D&B)に入社。2012年、東京商工リサーチへ転籍以降、グローバル企業データベースの価値をわかりやすく伝えるためにコンサルティング部門を立ち上げ、ソリューション開発、講演、人材育成に従事。2015年に執行役員に就任した。】
【 草野 満代(くさの・みつよ)氏略歴:津田塾大学卒業後、NHKに入局。1997年2月に独立。同年10月から9年に渡り「筑紫哲也 NEWS23」(TBS系)のサブキャスターを務めた。現在は「L4 YOU!」(テレビ東京系)のメーンキャスター、「ごはんジャパン」(テレビ朝日系)のナビゲーターを務める。環境省地球いきもの応援団、総務省年金業務監視委員会などのメンバーも務める。】
意外性(1) 人 事
実力主義の徹底で、社歴も学歴も性別も関係なくフェアな会社です。
草野 東京商工リサーチ(以下TSR)さんは、信用調査業界で最も歴史のある会社です。そんな“老舗中の老舗”で女性が執行役員になるまでには、様々なご苦労があったのではないですか。
田中 それが全くないんですよ。私が弊社に転職したのは4年前。幹部候補として入社したわけではないので、“流れ”に恵まれた結果だと思います。
草野 流れですか?
田中 弊社の基幹ビジネスである調査の他に、ここ数年で会社が注力した分野が、たまたま私の担当分野だったのです。それから、弊社の人事制度の公正さも大きな要因だったと思います。
草野 田中さんはどんな時に、人事制度の公正さを実感されたのですか。
田中 逆説的になりますが、私は入社以来「女性だからこんな目に遭った」と悔しい思いをしたことが一度もないんです。それくらい、客観的に社員を評価する。私は様々な企業で働きましたが、弊社の評価制度が最も公正でした。ただ、フェアだけれども仕事に対してはむしろ厳しいと言えます。
草野 というのは?
田中 高い評価に甘んじていても、それが継続されるわけではありません。
草野 常に気が抜けない(笑)。
田中 はい(笑)。ところで(草野さんの出身の)NHKさんも、女性の活躍が目立つ職場ですよね。
草野 女性アナウンサーは“やわらかニュース担当”という時代もありましたが幸い私は、その風潮が変わりつつある時代に入局しました。入局3年目に東京でのニュース番組を担当させてもらえたのですが、男性ではあり得ないこと。ある意味“逆差別的”と言えます。だからその時、自分に言い聞かせたのは「勘違いをしてはいけない」ということでした。頂いたチャンスを、真摯に自分の力を伸ばすために生かして初めて、「次」につながる。
田中 そう考えると私も、責任は重いですよね。
草野 会社として、女性活用を後押しする動きはあるのでしょうか。
田中 人事部では定期的に、効果測定の目的も含め研修を実施しています。昇格後、一定期間が経過した女性管理職が、昇進後に取り組んだことや現在、直面している課題を発表する。後輩に“背中を見せる”ことも狙いです。
草野 先輩たちはこれだけ仕事をしたから、認められたのだと示す。なるほど、フェアであると同時にシビアでもある――。おっしゃった通りですね。
意外性(2) 社 員 の 成 長
意見を受け入れる度量を持つこと。それが成長の源です。
草野 田中さんの担当業務について、聞かせてください。
田中 弊社のグローバル企業データベースは、お客様がお持ちのデータと統合することで財務、審査、調達、営業など経営戦略に活用できます。その価値をわかりやすく伝え、お客様のソリューション提案に活かすことです。
草野 顧客と自社、双方が持つデータを融合し、整理することで、より「付加価値」の高い情報に“進化”する…。非常に面白い試みですね。ただ、基幹事業の調査部門は現状、非常に順調ですよね。それでも挑戦する真意とは、何でしょうか。
田中 社会情勢もお客様の要望も、日々変わっていく。現状に甘んじて、取り残されるわけにはいきません。
草野 事業領域の拡大はリスクも高いので、二の足を踏む人も多いですよね。
田中 当然意見は出ます。ただし弊社では、「異論を聞く耳を持つこと」を重視しています。異論が出たら必ず、議論を尽くす。とことん話し合い、自分と他者との違いを受け入れることが視野を広げてくれるからです。個人も組織も、そうしたプロセスを経て成長するのだと思います。
草野 その考え方こそが、御社のダイバーシティの根幹なんでしょうね。
意外性(3) 仕 事 の 進 め 方
ブランドイメージを基盤に付加価値を創造し続けます。
草野 事業領域の拡大の話が出ましたが、ビジネスの世界では「一見、新しいことに取り組んでいるようで、実は従来の延長線上にあった」というケースも珍しくない。日本企業にありがちな「前例主義」の弊害なんでしょうか。
田中 私は前例主義から抜け出す近道は、常に危機意識を持つことではないかと思います。例えば弊社の生命線は「より速く、多く、高い付加価値を提供し続けること」。そのために従来の延長線上にはない、「新しい視点」を持つことが必須です。「このままではいけない」と、危機感を常に持ちながら試行錯誤を続けることが、新しい視点を持つうえで重要なのではないでしょうか。
草野 以前、番組で東京の下町にある中小企業を特集したんです。多くの企業が創業時とは、全く違う製品を作っていた。時代のニーズに合わせて自社の技術を新しい分野に適合させてきた姿に、サバイバルの歴史を感じました。
田中 そうやって皆さん、常に新たな付加価値を提供されているんですね。TSRの原点は信用調査であり、今後もお客様の課題を解決するために新しい付加価値を提供し続け、200年企業を目指したいと思います。