心 の 充 実 、 思 考 力 の 向 上 、  知 識 の 拡 大 へ

  まずもって、自分の脳回路を切り替え自己を変革できないことには、脳力開発を身をもって体験したことにはならない。私は、脳力開発の手法に接することで、どんな立派な理論や学説よりも、自分の口と手、足を動かしての行動実践が何よりも不可欠であることを叩き込まれて、自己改造のスタートを決意した。自己の百四十億の脳細胞を少しでも活かし脳力が不断にかいはつされてこそ、身体全体の活動能力が発揮されるのである。

  生まれつき頭が悪かったり、記憶力の弱い人などはいないといわれる。ただ人間一人ひとりに備わっている立派な素質を十二分に伸ばす日常の努力が足りないだけなのだ。生まれたばかりの赤ちゃんは、手足を精一杯動かし、言葉を覚えるためにあの無言の練習を繰り返している。手足を活発に働かせることで、脳の回路をめざましい勢いで開発しているのだ。そうした努力を熟年の大人が取り戻し、ひたむきな姿勢をもつことができれば、誰でもが自分を自由に活躍させる“ 天才 ”になれる可能性をもつのだ。

  大脳生理学者の故時実利彦先生は、乳・幼児の人格形成には家庭や環境が大きな影響を与えるという。ネアカ人生も、ネクラ人生も、そこにはじまっているのである。幼い時から “ 楽しい人生づくり ”の習慣化が大切であって、親や大人の責任は重大といわねばならない。

  ライフ・ベンチャーにとっても必要な脳力開発のポイントは、心の充実、思考力の向上、知識の拡大発展の三つに要約できる。これらが三位一体になってこそ、総合的に脳力開発が活かされるのである。ベンチャーへ向けて生き生きと踏み出せるのはそんな時である。

  従来の学校教育や企業研修では、どちらかといえば知識を詰め込むための“ 暗記方式 ”が偏重されるきらいがあった。記号を単に暗記するだけでは、思考力や、また前頭葉開発による精神力は向上できない。自分自身の活きた“ プログラム ”を工夫してつくりだすことで脳力開発は一段と力を増すのである。そして、、世界に二つとない独自の人脳コンピューター・プログラムを使って、脳のトレーニングに心がけることが必要である。それも、なるべくひんぱんに、真剣に、効率よく、上手に、幅広く、しかも多様に試みることである。

  ここでは、もちろん、現状維持の考えは禁句である。現状に甘んずる脳細胞回路を変更修正しない限り、ベンチャー実践は無理なのである。

  脳細胞の新しい回路づくりのためには、自己変革への行動・整理と反復を習慣化して継続することも大事である。企業が事業の発展をめざすには、潜在脳力を秘めた社員一人ひとりの脳力開発が欠かせない時代なのであり、これこそが本当の人財開発ともいうべきものである。ライフ・ベンチャーの考えは、こうした脳力開発を足がかりとしてできあがったものである。   つづく