新規事業を人工知能に頼る時代到来?
2015年11月13日 お仕事 いまから2020年までに中小企業の底力を見せつけて日本を次のステージに!!・・・をうたい文句に「小さな組織の未来学」サイトから、以下に転載講演を『生涯現役プロデューサー』仮登録皆様宛ご参考までにご案内します。
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経 営 と 人 工 知 能
清 水 亮
3 年 ご と に 新 し い 仕 事 を
つ く ら な け れ ば い け な い I T 業 界
経営、とりわけIT業界の経営では、「3年同じ仕事をしたら儲からなくなる」ということがよく言われます。もともとドワンゴは通信システムの会社でしたが、携帯電話のコンテンツをつくったり、着メロをつくったりする過程を経て、今はニコニコ動画の会社になり、ついには教育事業に進出しようとしています。こうしたメタモルフォーゼを繰り返さないと、IT業界というのは生き残っていきづらいのです。
ずっと同じ仕事をしていると食べていけなくなってしまうので、3年ごとに新しい仕事をつくろうとするのですが、これがなかなか大変です。新しい仕事をつくるには、まずは人々の求めているニーズを発掘することが重要になります。
潜 在 的 な ニ ー ズ は 、 ア ン ケ ー ト で は 分 か ら な い
ニーズを知るためにマーケティング調査などではアンケートを取るわけですが、アンケートというのはむなしいもので、取っても何も分からないし、取らなくても分からない。というのも、アンケートは設問そのものが間違っていたり、設問自体が答えたくないものだったりすることが非常に多いからです。実際、自分で他社のアンケートをやってみるとあまりにも面倒くさく、アンケートという手法で観測することで分かる「事実」はかなりバイアスのかかった、捻じ曲げられたものではないかと感じてしまいます。
ではアンケートではなく、人間が考える場合はどうか。しかし潜在的なニーズを探そうとしたとき、年をとる人間は、どうしても過去の成功体験に左右されがちです。
例えば、これは自分も例外ではないという例ですが、ぼくの会社では今年から人材採用の方針を変えました。これまでは有名大学に行っているとか、博士号を持っているとかいうことを重視して人を採用していたのですが、そうすると、そういう人が使うものしかつくれないことが分かってきたからです。
人生には「大学に行かない」という選択肢もあることを想像したことがないような人たちばかりを集めると、そういう人たち向けのものしかつくれません。一時期、会社に有名大の院卒ばかりを集めたことがあるのですが、そういうトップノッチ(最上級の知的エリート)だけを集めると、そういう階層にしか必要とされていないものしか発想できなくなってしまうというジレンマに気づきました。彼らの話を聞いていると「数式の計算が楽になったらいいよね」とか「波動関数とか簡単に出てきたらいいよね」とか、真顔でそういう話をしているのです。私としてみれば、ほとんどの人が使わない数式計算の支援よりも、「お腹がすいたときにパンが運ばれてきたらいいよね」という方が普通の発想だと思ってしまいます。
革新的な技術開発にトップノッチの存在は欠かせません。しかしトップノッチだけを集めても、万人に広く受け入れられる企画にはなかなか繋がらないのも事実です。普通の人に向けた商品開発には、普通の発想も欠かせないのです。集合知の観点からも、チームに求められるのは卓越性より多様性です。
人 工 知 能 な ら 、 自 分 と 違 う 視 点 の 意 見 を
言 っ て く れ る か も し れ な い
そこで今年から、IT業界と全然関係のない人を会社の中にどんどん入れて、その人たちが私たちのアイデアをどう感じるかという化学反応を見るようにしています。
実は、こうやって文脈や考え方の違う人を雇うということは、ディープラーニングを経た人間の神経回路・ニューラルネットワークを模した人工知能を手に入れているのと同じようなものです。私たちと異なるインプットを与えられて成長してきたニューラルネットワークに「今、こういうことを考えているんだけど、どう思う?」と聞いたら、「何の役に立つのか分かりません」と答えるかもしれない。でも、それはそれで一つの大きな知見です。
以前、経営者の代わりをする人工知能について考察しましたが、ニューラルネットワークの面白さというのは、人工知能に偏った学習をさせることによって、人間と同じように好みや嗜好をつくることができる点にあるのではないかと思います。今はまだ人間を雇わなければいけませんが、そのうち人工知能に企画のアイデアを聞くことができるようになるかもしれません。
会社は人間による組織なので、経営者や人事担当者の好みで、どうしても偏りが出てしまいがちです。そこで、バランスを取るためのカウンターとして人工知能を利用する。もしかしたら、そこには次のビジネスチャンスがあるのかもしれません。
【清水 亮 (しみず りょう)氏プロフィール】ユビキタスエンターテインメント代表取締役社長CEO。1976年新潟県長岡市生まれ。6歳の頃からプログラミングを始め、16歳で3DCGライブラリを開発、以後、リアルタイム3DCG技術者としてのキャリアを歩むが、21歳より米MicrosoftにてDirectXの仕事に携わった後、99年、ドワンゴで携帯電話事業を立上げる。’03年より独立し、現職。’05年独立行政法人IPAより天才プログラマーとして認定される。
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経 営 と 人 工 知 能
清 水 亮
3 年 ご と に 新 し い 仕 事 を
つ く ら な け れ ば い け な い I T 業 界
経営、とりわけIT業界の経営では、「3年同じ仕事をしたら儲からなくなる」ということがよく言われます。もともとドワンゴは通信システムの会社でしたが、携帯電話のコンテンツをつくったり、着メロをつくったりする過程を経て、今はニコニコ動画の会社になり、ついには教育事業に進出しようとしています。こうしたメタモルフォーゼを繰り返さないと、IT業界というのは生き残っていきづらいのです。
ずっと同じ仕事をしていると食べていけなくなってしまうので、3年ごとに新しい仕事をつくろうとするのですが、これがなかなか大変です。新しい仕事をつくるには、まずは人々の求めているニーズを発掘することが重要になります。
潜 在 的 な ニ ー ズ は 、 ア ン ケ ー ト で は 分 か ら な い
ニーズを知るためにマーケティング調査などではアンケートを取るわけですが、アンケートというのはむなしいもので、取っても何も分からないし、取らなくても分からない。というのも、アンケートは設問そのものが間違っていたり、設問自体が答えたくないものだったりすることが非常に多いからです。実際、自分で他社のアンケートをやってみるとあまりにも面倒くさく、アンケートという手法で観測することで分かる「事実」はかなりバイアスのかかった、捻じ曲げられたものではないかと感じてしまいます。
ではアンケートではなく、人間が考える場合はどうか。しかし潜在的なニーズを探そうとしたとき、年をとる人間は、どうしても過去の成功体験に左右されがちです。
例えば、これは自分も例外ではないという例ですが、ぼくの会社では今年から人材採用の方針を変えました。これまでは有名大学に行っているとか、博士号を持っているとかいうことを重視して人を採用していたのですが、そうすると、そういう人が使うものしかつくれないことが分かってきたからです。
人生には「大学に行かない」という選択肢もあることを想像したことがないような人たちばかりを集めると、そういう人たち向けのものしかつくれません。一時期、会社に有名大の院卒ばかりを集めたことがあるのですが、そういうトップノッチ(最上級の知的エリート)だけを集めると、そういう階層にしか必要とされていないものしか発想できなくなってしまうというジレンマに気づきました。彼らの話を聞いていると「数式の計算が楽になったらいいよね」とか「波動関数とか簡単に出てきたらいいよね」とか、真顔でそういう話をしているのです。私としてみれば、ほとんどの人が使わない数式計算の支援よりも、「お腹がすいたときにパンが運ばれてきたらいいよね」という方が普通の発想だと思ってしまいます。
革新的な技術開発にトップノッチの存在は欠かせません。しかしトップノッチだけを集めても、万人に広く受け入れられる企画にはなかなか繋がらないのも事実です。普通の人に向けた商品開発には、普通の発想も欠かせないのです。集合知の観点からも、チームに求められるのは卓越性より多様性です。
人 工 知 能 な ら 、 自 分 と 違 う 視 点 の 意 見 を
言 っ て く れ る か も し れ な い
そこで今年から、IT業界と全然関係のない人を会社の中にどんどん入れて、その人たちが私たちのアイデアをどう感じるかという化学反応を見るようにしています。
実は、こうやって文脈や考え方の違う人を雇うということは、ディープラーニングを経た人間の神経回路・ニューラルネットワークを模した人工知能を手に入れているのと同じようなものです。私たちと異なるインプットを与えられて成長してきたニューラルネットワークに「今、こういうことを考えているんだけど、どう思う?」と聞いたら、「何の役に立つのか分かりません」と答えるかもしれない。でも、それはそれで一つの大きな知見です。
以前、経営者の代わりをする人工知能について考察しましたが、ニューラルネットワークの面白さというのは、人工知能に偏った学習をさせることによって、人間と同じように好みや嗜好をつくることができる点にあるのではないかと思います。今はまだ人間を雇わなければいけませんが、そのうち人工知能に企画のアイデアを聞くことができるようになるかもしれません。
会社は人間による組織なので、経営者や人事担当者の好みで、どうしても偏りが出てしまいがちです。そこで、バランスを取るためのカウンターとして人工知能を利用する。もしかしたら、そこには次のビジネスチャンスがあるのかもしれません。
【清水 亮 (しみず りょう)氏プロフィール】ユビキタスエンターテインメント代表取締役社長CEO。1976年新潟県長岡市生まれ。6歳の頃からプログラミングを始め、16歳で3DCGライブラリを開発、以後、リアルタイム3DCG技術者としてのキャリアを歩むが、21歳より米MicrosoftにてDirectXの仕事に携わった後、99年、ドワンゴで携帯電話事業を立上げる。’03年より独立し、現職。’05年独立行政法人IPAより天才プログラマーとして認定される。