本日付朝日新聞Didital版によりますと、5/14に188日振りで地球に無事帰還した若田光一さんの帰還会見を下記のとおり報じています。「生涯現役」で人類の宇宙挑戦事業に挑む意気込みを示したことに、私たち生涯現役仲間は大いに励みになるだけではなく、宇宙船の中でウクライナ問題を真剣に捉えた宇宙飛行士たちの「21世紀以降の地球世界はひとつ」である体験が、世界平和運動の強力な機動力になるだろうと確信します。
 その意味でも、「世界生涯現役時代」は既に若田さんの帰還会見の中に十分覗えるのではないでしょうか。
【 転載ご紹介URL 】
http://www.asahi.com/articles/ASG5X7GNCG5XUHBI02T.html?iref=comtop_list_sci_n01
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【 朝日新聞Digital 】  ヒューストン=小林哲 冨岡史穂 2014年5月29日01時29分

  若 田 さ ん 「 生 涯 現 役 」 目 指 す
              米 ヒ ュ ー ス ト ン で 帰 還 会 見

 国際宇宙ステーション(ISS)で日本人初の船長を務めて帰還した若田光一さん(50)が28日、米テキサス州ヒューストンで記者会見し、「リハビリが順調で体力も回復した」などと語った。今後、後輩の日本人宇宙飛行士を支援するとともに、「生涯現役」を目指し新たな宇宙飛行にも挑戦したいと意気込んだ。
 若田さんの宇宙滞在は、2009年にISSに技術者として約4カ月滞在して以来。今回は船長の任務を任され、滞在期間も日本人の一度の飛行では最長の188日に及んだ。「船長として、みんなの結束を維持することに力を尽くせた」などと振り返った。
 ISSでは、ウクライナ危機を巡る米ロの対立について、米国人やロシア人の宇宙飛行士らと議論になることもあったという。米国は、ウクライナ侵攻を受けた対ロシア制裁の一環として、ISS以外の宇宙開発で2国間協力を凍結。ロシアは、対抗措置としてISSへの協力を2020年で打ち切り、米国が提案する24年までの運用延長を拒む姿勢を示している。
 若田さんは「(ISSは)国際協力の大きな礎(いしずえ)だ。後戻りすることがないよう、各国が対話を通して努力していく必要がある」と述べた。
 若田さんは、昨年11月に打ち上げられた宇宙船ソユーズで、地上約400キロメートル上空に建設されたISSへ。5人の乗組員を束ねる指揮官として施設の運用・管理などを担当し、今月14日、カザフスタンの草原に帰還した。
 記者会見は、米国の有人宇宙飛行計画の拠点となっている米航空宇宙局(NASA)ジョンソン宇宙センターに隣接する日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)事務所で行われ、東京にも中継された。(ヒューストン=小林哲)
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 国際宇宙ステーション(ISS)で日本人初の船長を務めて帰還した若田光一さんの記者会見の主なやり取りは次の通り。
――地球に帰って2週間、どう過ごしているか。体調の変化などは?
 体力回復のリハビリが毎日2時間ほど。今回は被験者として17項目の医学実験にも参加したので、医学的なデータ取得のための検査に、1日数時間を使っている。
 体力や平衡感覚は、これまで宇宙に滞在した後と、ほとんど同じ状態で回復している。
 ISSの運動設備がよく、体力もほとんど変わらず帰って来られた。運動の継続、食事、睡眠が非常に重要だと感じた。
――若田さんに続く日本人船長を出すには何が必要か。
 日本人宇宙飛行士には資質、能力のある人はいっぱいいる。機会を獲得することが重要だ。宇宙飛行士だけでなく、筑波で24時間態勢でISSの運用を支えている管制チームにも、世界でリーダーシップを取れる人がたくさんいる。
 ハード、ソフトだけでなく、人的資質を高めることができたのが、日本がISSに参加した成果だ。「人の力」をもっと発揮していくことで、日本がより主体的に、世界をリードできるのではないか。
――ウクライナ情勢を、宇宙でどう見ていたか。
 地上で何が起きているか、ニュースを通して見ていた。米ロ日の宇宙飛行士の間では、それぞれのウクライナに関する経験談みたいなものを話した。たとえば私は、ISS初滞在の前に、ウクライナで海上のサバイバル訓練を行った。それぞれが経験してきた仕事や家族のこと、親戚がウクライナに住んでいる飛行士もいたので、そういったことを話した。政治的なことは少なかった。
 ISSという閉鎖環境で、私たち6人の仲間は一つの目標に向かって、家族のようなチームとして仕事をしている。ウクライナで起きていることが、ISSの仕事に影響することはなかった。
 宇宙の仕事は、種の保存という危機管理の意味を持った人類の取り組みでもあると思うし、世界の英知、科学技術を結集して、大きな礎を築いてきた。後戻りは失うものが非常に大きい。ここまで築いてきた協力関係、精神を大切にして、それが宇宙以外の分野にも波及してほしいと希望をもっている。
――ロシアはISSの、2020年以降4年間の運用延長を拒んでいる
 20年までの運用については世界15カ国間で合意されており、それに影響はないと理解している。いま我々にできることは、15か国が20年までの運用をきちんと実行して、その先につなげていく努力をすることだ。
 そういう意味で、ISSの宇宙飛行士の間では、まさに人類が一つの目標に向かってフロンティアを切り開くために必要なチームワークの精神について、会話が多かった。
 冷戦構造の中では、宇宙をめぐる米ソの競争があり、その後のISS計画では、それまでに考えられなかったような国際協力が実現し、ISSがここまで順調にきた。その事実を忘れてはいけない。
 対話を続けることだ。
 日本は、高い技術力でISSに貢献してきた。この経験を生かし、和の精神を大切にしながら、さらに先の国際協力にもとづく宇宙探査にも、果たしていける役割があると思う。
――初めてのソユーズでの帰還の感想は?
 野口(聡一)さんらから聞かされていた通り、ダイナミックだった。意外にも、かなり激しく揺れたのは、パラシュートが開いたとき。ソユーズの、安全のための構造設計をはっきり実感できた。
――次の目標は?
 ISS等乗が決まっている宇宙飛行士の油井(亀美也)さん、大西(卓哉)さんの飛行を成功させるために、私の経験を生かして支援することが最大の目標。
金井(宣茂)飛行士も準備は整っている。新人の活躍を支援したい。
 また、船長の経験を生かして、第二、第三の日本人船長が出るように、私も努力したい。
 ISSでやり残したと思う仕事もたくさんある。現役を維持しながら、仲間の支援を続けたい。ISSのその先の有人宇宙活動、小惑星や月、火星などへ、人類がフロンティアを展開する中で、日本が世界に貢献していけるように、私も宇宙飛行士の立場から努力してきたい。
――まだまだ飛びたい?
 生涯、現役でがんばりたい。米ロにも、50代、60歳くらいで飛んでいる人もたくさんいる。自分にとってはいばらの道かも知れないが、日本の有人宇宙活動の発展のために努力したい。 (冨岡史穂)