「 選  挙  の  イ  ロ  ハ 」 
( 誰 が 脱 原 発 を 争 点 に す る の か )
                        渡 瀬  裕 哉(Facebook)

  今度の東京都知事選挙が空中戦の見本のような選挙になりそうなので、自分の事例集に加えようと思う。

  選挙争点とは誰がどのように決定するのだろうか。そして、その結果として何が起きるのか。この問いに応える面白いケースになりそうだ。

  選挙争点とは「選挙争点を主張する陣営」が決めるものではない。

  「選挙争点らしきもの」が「選挙争点」になる瞬間は、「選挙争点らしきもの」を主張している側の敵陣営が「選挙争点らしきものに反対」するタイミングだ。

  ゲームの最初の段階では両陣営がともに「選挙争点らしきもの」を主張するが、段々我慢が出来なくなってきた陣営の頭の足りない層が「○○反対!」を叫び始める。

  すると両陣営の主張が「選挙争点」「反選挙争点」(たとえば、脱原発!と反脱原発!)となる。つまり、両陣営が選挙争点を設定した陣営の政策を連呼するようになるのだ。これで「選挙争点らしきもの」がめでたく「選挙争点」になる。

  ○○反対を述べた時点で選挙は勝てない。なぜなら、○○反対は自分の政策を述べるのではなく、全力で相手の政策の宣伝をしているだけなのだから。

  最も分かりやすい事例は、郵政民営化選挙であるが、郵政民営化と郵政民営化反対で選挙をやれば、郵政民営化を主張するほうが勝つに決まっている。民営化反対は反対派の政策ではなく、相手の政策の宣伝活動である。

  今現在の状況を見てみれば、
○ 沖 縄 名 護 市 長 選 挙  辺野古移設阻止VS辺野古移設阻止反対
○ 東 京 都 知 事 選 挙  脱原発VS反脱原発という状況になっている。そのため、野党陣営のほうが賢い選挙を行っていると言えるだろう。

  原発反対を主張するのではなく、あくまでも「脱原発に反対させる」、これは選挙の常套手段。そして、何かに自陣営が反対したいなら「○○凍結」「○○阻止」「脱○○」と表現して、相手陣営に「凍結反対」「阻止反対」「脱○○反対」と言わせるだけで良い。

  沖縄の方は「振興基金」という買収案を与党が提示したため、野党側がこれに過剰反応して反対するようになれば野党側の負けになる。沖縄の左翼陣営のスキルが問われるので面白い展開。

  いずれにせよ、「選挙争点と選挙の勝敗」は「実は選挙で負ける方が決めている」という仮説がまた補強される結果になりそうだ。