朝日新聞デジタル11月4日版(限界にっぽん)第5部・アベノミクスと雇用:6 「会社は解雇なんて簡単」2013年11月4日05時00分が下記のように紹介されていました。シリーズ3日分で転載ご案内します。【関連HP=http://digital.asahi.com/articles/TKY201311030384.html?_requesturl=articles/TKY201311030384.html&ref=comkiji_txt_end_s_kjid_TKY201311030384
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■   労  働  規  制  緩  和  め  ぐ  る  攻  防
     「 特  区 」  見  送  り  後 、  続  く  議  論

  労働規制を緩めて解雇しやすくし、業績が振るわない大企業から伸び盛りの企業への転職を促す「雇用の流動化」を進める――。そんなねらいで始まった政府の「解雇特区」の議論が、大詰めを迎えていた。

  10月17日、内閣府で開かれた産業競争力会議の雇用・人材分科会。オブザーバーで参加した八田達夫大阪大招聘(しょうへい)教授は、自身が座長を務める「国家戦略特区ワーキンググループ」の提案をもとにした政府の規制改革案の発表を翌日に控え、出席者に語りかけた。

  「雇用条件の明確化に関しては、当初のねらいをほぼ達成できつつある」

  言葉とは裏腹に、規制改革案では事実上、「雇用契約優先」で解雇しやすくする当初案の導入を見送る方向になっていた。八田氏の発言は、これまでの議論の成果を強調するための「強がり」とも受け取れた。

  その場で竹中平蔵慶大教授は、規制緩和が進まないことへの不満を口にした。「雇用の制度を改革しないということのリスクが、今や極めて高くなっている」

  この規制改革案は前日の16日夕、官邸で固まっていた。安倍晋三首相が、新藤義孝総務相や甘利明経済再生相、菅義偉官房長官と相談し、「解雇特区」との批判は無視できないと判断したからだ。

  特区の構想が明らかになったのは9月だった。企業と従業員が事前に「どうしたら解雇できるか」をはっきりさせて労働契約を結び、それに従って解雇できるようにする。いまの労働契約法の規定では「合理的な理由」がなければ解雇できない。八田氏や竹中教授らは、解雇しやすくすれば「企業が人を雇いやすくなる」と主張していた。

  経済界も、新経済連盟(代表・三木谷浩史楽天社長)が「抜本的な雇用・労働改革が必要」などと特区に期待し、規制緩和を望んでいた。特区のほかにも、政府の規制改革会議は「解雇の金銭解決」や「限定正社員」など次々と緩和策を示した。

  反発は強かった。

  「労働者保護の法令は、基本的人権の一つと認識している。特区の内外で差をつけられない」(田村憲久・厚生労働相)と、政府内からも批判が出た。

  経済協力開発機構(OECD)の調査では、ほかの先進国と比べて日本が解雇しにくいわけではない。中小企業を中心に、解雇は多い。訴訟が起きるのは1万人中10~20人程度で、不当な解雇でも取り消されるケースはほとんどない。

  規制を緩める当初案の支持が集まらないまま10月を迎えても、八田氏は「『解雇特区』ではなく、『雇用創造特区』だ」と強調していた。だが、理解は広がらなかった。   つづく