Asahi Digital 4/9:小池新党、台風の目
2017年4月9日 お仕事Asahi News Digital 4/9 00時02分
URL=http://www.asahi.com/articles/ASK475251K47UTIL02K.html?ref=nmail
小 池 新 党 、 台 風 の 目
他 党 議 員 ら 次 々 吸 収 、 政 策 は 見 え ず
伊藤あずさ、石井潤一郎、 岡本智、二階堂勇
東京都議選(7月2日投開票)まで3カ月を切り、各党の攻防が激しくなっている。台風の目は、小池百合子都知事を中心とする地域政党「都民ファーストの会」。小池氏の圧倒的な人気を背景に、他党の議員らを次々に吸収し、単独過半数も視野に入れる。ただ具体的な政策はまだ見えず、どこまで伸びるかは不透明だ。
特集:小池都政
小池氏とのツーショットのポスターに、「都民ファースト」の文字が躍るのぼり。都民ファーストから立候補する予定の伊藤悠・前都議はその横で、平日の朝と夕、マイクを握る。
伊藤氏は民主党都議(目黒区)を2期務め、2013年に落選。今年になって民進党に離党を届け、都民ファーストに入った。「追い風を感じる」と言う。「『小池知事を応援しているから』と声をかけてくれる人が相当いる。チラシも受け取ってもらえるし、手応えは非常にいい」
いま、他党の地方議員らが都民ファーストに移る動きが加速している。民進では都議選の公認予定者36人中7人が離党届を出し、4人が都民ファーストから出馬する。伊藤氏もその一人だ。先月以降、現職の民進都議3人も離党を届け出た。
民進を支える連合東京も7日、都民ファーストとの連携を発表した。岡田啓会長は記者会見で小池都政について「様々なことがオープンで理解しやすい」と評価。都議選では民進からの移籍者を推薦するほか、都民ファーストの独自候補の支援も検討する。民進が低迷するなか、都政への影響力を保つための異例の判断だ。
豊洲市場を巡る問題などで小池氏と対立する自民からも2月、都議2人が都民ファーストに移籍した。都民ファーストが公表済みの公認予定者25人中11人は、自民から移った都議や区市議らだ。一方、公明も自民との蜜月に終止符を打ち、3月に都民ファーストとの選挙協力を決めた。「知事との距離をアピールして票の上積みを狙う」と公明幹部は話す。
都民ファーストの求心力を支える小池氏の人気は衰えを見せない。昨夏の知事選では得票率44%で圧勝。2月の千代田区長選では支援した現職が自民推薦の新顔をトリプルスコアで破った。都内の有権者を対象に朝日新聞が今月実施した世論調査では、小池氏の支持率は74%に達した。
都民ファーストは、小池氏が主宰する政治塾の運営団体だったが、都議選に参戦するため、1月に地域政党に衣替えした。代表は小池氏の特別秘書で側近の野田数(かずさ)・元都議が務め、小池氏は役職に就いていない。都議会での勢力は定数127に対し5人のみ。だが、野田氏は「単独過半数を目指したい」と公言し、小池氏も「目標は高い方がいい」と同調する。
その一方で都民ファーストの政策は不透明だ。「東京大改革」を訴える小池氏は8日、報道陣に都議選の意味を問われ、「これまで通りでいいのか、東京を変えたいのか。そういう選択を問うものになる」と述べた。だが、具体的な政策や公約はまだ出しておらず、作成中という。
過半数をとるには64人以上の擁立が必要で、政治塾の受講者らから今後さらに選ぶ予定だが、現段階では他党からの移籍者が多く、共通の方向性も見いだしにくい。ある自民都議は「新しい勢力を作るのかと思っていたが、出てくるのは政治家ばかり。当選したい人が集まっただけだ」と批判する。(伊藤あずさ、石井潤一郎)
■既成政党は右往左往
都民ファーストの動きに、既成政党は翻弄(ほんろう)されている。
都議選公認予定者らの「離党ドミノ」が続く民進党は、離党届の扱いに苦慮している。本来なら「除名が筋」(松原仁・党都連会長)だが、都議選後に離党者が次期衆院選の民進候補に協力することに期待を寄せているためだ。党執行部の一人は「生き残りが最優先。離党した人にも推薦を出すべきだ」と事実上、離党を容認する姿勢を示す。
都議会の民進系2会派は2月、合流して新会派「東京改革議員団」を結成した。党幹部は「小池氏の勢いは長くは続かない」とみて、都議選後に都民ファーストを民進系会派に巻き込んでいくねらいもあるという。「民進」の議席が減っても、「元民進」が議席を維持できれば、東京選出参院議員でもある蓮舫代表の責任問題を回避できるとの思惑も見え隠れする。
だが、蓮舫氏周辺が描くこうした楽観論が通る見通しはない。党都連幹事長を務めた長島昭久・元防衛副大臣は、執行部の選挙への取り組みに対する不満から10日に離党届を提出する意向を固めた。小池氏と独自の連携を視野に入れており、「都議選大敗」を織り込んだ党内の動きが加速する可能性もある。党幹部は「惨敗なら蓮舫おろしの風が吹く」と漏らす。
一方、自民党は連立を組む公明党との協力関係が東京で崩れたことへの危機感が強く、東京選出以外の国会議員を都議選の選挙区ごとに担当を決めて割り振る念の入れよう。都議選はその後の衆院選など国政に影響してきただけに、安倍政権へのダメージ回避のためにも、「オール自民党で取り組む」(古屋圭司選対委員長)と強調する。
党都連は都議選公約に築地市場の豊洲市場への早期移転を盛り込む方針で、「小池氏が判断を先送りしている」として対決姿勢を強めている。党都連会長の下村博文幹事長代行は8日、党千葉県連大会に出席し、都議選への協力を要請しながら「一日も早く豊洲に移転すべきだ」と訴えた。(岡本智、二階堂勇)
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小 池 新 党 、 台 風 の 目
他 党 議 員 ら 次 々 吸 収 、 政 策 は 見 え ず
伊藤あずさ、石井潤一郎、 岡本智、二階堂勇
東京都議選(7月2日投開票)まで3カ月を切り、各党の攻防が激しくなっている。台風の目は、小池百合子都知事を中心とする地域政党「都民ファーストの会」。小池氏の圧倒的な人気を背景に、他党の議員らを次々に吸収し、単独過半数も視野に入れる。ただ具体的な政策はまだ見えず、どこまで伸びるかは不透明だ。
特集:小池都政
小池氏とのツーショットのポスターに、「都民ファースト」の文字が躍るのぼり。都民ファーストから立候補する予定の伊藤悠・前都議はその横で、平日の朝と夕、マイクを握る。
伊藤氏は民主党都議(目黒区)を2期務め、2013年に落選。今年になって民進党に離党を届け、都民ファーストに入った。「追い風を感じる」と言う。「『小池知事を応援しているから』と声をかけてくれる人が相当いる。チラシも受け取ってもらえるし、手応えは非常にいい」
いま、他党の地方議員らが都民ファーストに移る動きが加速している。民進では都議選の公認予定者36人中7人が離党届を出し、4人が都民ファーストから出馬する。伊藤氏もその一人だ。先月以降、現職の民進都議3人も離党を届け出た。
民進を支える連合東京も7日、都民ファーストとの連携を発表した。岡田啓会長は記者会見で小池都政について「様々なことがオープンで理解しやすい」と評価。都議選では民進からの移籍者を推薦するほか、都民ファーストの独自候補の支援も検討する。民進が低迷するなか、都政への影響力を保つための異例の判断だ。
豊洲市場を巡る問題などで小池氏と対立する自民からも2月、都議2人が都民ファーストに移籍した。都民ファーストが公表済みの公認予定者25人中11人は、自民から移った都議や区市議らだ。一方、公明も自民との蜜月に終止符を打ち、3月に都民ファーストとの選挙協力を決めた。「知事との距離をアピールして票の上積みを狙う」と公明幹部は話す。
都民ファーストの求心力を支える小池氏の人気は衰えを見せない。昨夏の知事選では得票率44%で圧勝。2月の千代田区長選では支援した現職が自民推薦の新顔をトリプルスコアで破った。都内の有権者を対象に朝日新聞が今月実施した世論調査では、小池氏の支持率は74%に達した。
都民ファーストは、小池氏が主宰する政治塾の運営団体だったが、都議選に参戦するため、1月に地域政党に衣替えした。代表は小池氏の特別秘書で側近の野田数(かずさ)・元都議が務め、小池氏は役職に就いていない。都議会での勢力は定数127に対し5人のみ。だが、野田氏は「単独過半数を目指したい」と公言し、小池氏も「目標は高い方がいい」と同調する。
その一方で都民ファーストの政策は不透明だ。「東京大改革」を訴える小池氏は8日、報道陣に都議選の意味を問われ、「これまで通りでいいのか、東京を変えたいのか。そういう選択を問うものになる」と述べた。だが、具体的な政策や公約はまだ出しておらず、作成中という。
過半数をとるには64人以上の擁立が必要で、政治塾の受講者らから今後さらに選ぶ予定だが、現段階では他党からの移籍者が多く、共通の方向性も見いだしにくい。ある自民都議は「新しい勢力を作るのかと思っていたが、出てくるのは政治家ばかり。当選したい人が集まっただけだ」と批判する。(伊藤あずさ、石井潤一郎)
■既成政党は右往左往
都民ファーストの動きに、既成政党は翻弄(ほんろう)されている。
都議選公認予定者らの「離党ドミノ」が続く民進党は、離党届の扱いに苦慮している。本来なら「除名が筋」(松原仁・党都連会長)だが、都議選後に離党者が次期衆院選の民進候補に協力することに期待を寄せているためだ。党執行部の一人は「生き残りが最優先。離党した人にも推薦を出すべきだ」と事実上、離党を容認する姿勢を示す。
都議会の民進系2会派は2月、合流して新会派「東京改革議員団」を結成した。党幹部は「小池氏の勢いは長くは続かない」とみて、都議選後に都民ファーストを民進系会派に巻き込んでいくねらいもあるという。「民進」の議席が減っても、「元民進」が議席を維持できれば、東京選出参院議員でもある蓮舫代表の責任問題を回避できるとの思惑も見え隠れする。
だが、蓮舫氏周辺が描くこうした楽観論が通る見通しはない。党都連幹事長を務めた長島昭久・元防衛副大臣は、執行部の選挙への取り組みに対する不満から10日に離党届を提出する意向を固めた。小池氏と独自の連携を視野に入れており、「都議選大敗」を織り込んだ党内の動きが加速する可能性もある。党幹部は「惨敗なら蓮舫おろしの風が吹く」と漏らす。
一方、自民党は連立を組む公明党との協力関係が東京で崩れたことへの危機感が強く、東京選出以外の国会議員を都議選の選挙区ごとに担当を決めて割り振る念の入れよう。都議選はその後の衆院選など国政に影響してきただけに、安倍政権へのダメージ回避のためにも、「オール自民党で取り組む」(古屋圭司選対委員長)と強調する。
党都連は都議選公約に築地市場の豊洲市場への早期移転を盛り込む方針で、「小池氏が判断を先送りしている」として対決姿勢を強めている。党都連会長の下村博文幹事長代行は8日、党千葉県連大会に出席し、都議選への協力を要請しながら「一日も早く豊洲に移転すべきだ」と訴えた。(岡本智、二階堂勇)