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  J.I.メールニュース No.784                   2016.11.24  発行 
  「 日 本 の 大 麻 と そ の 文 化 を 守 り ま し ょ う 」
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<巻頭寄稿文>
    「日本の大麻とその文化を守りましょう」 
               日本麻協議会 事務局代表    若園 和朗
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  このタイトルを読んで、皆さんはどんなイメージを持たれたでしょうか?
  最近、大麻について残念な事件が続いているので、もしかすると薬物乱用を企てる怪しい文章と思われたかもしれません。でも、もちろんそのような意図はありませんので安心して読み進めてください。

  ところで、「大麻」は「麻(アサ科アサ属)」の別名ということはご存知でしたか?

  つまり日本人が古来より親しんできた「麻」と「大麻」は同じ植物なのですが、このことを知らない方も多いと思います。

  「大麻」=「恐ろしい薬物」というイメージのみが先行し、健全な作物としての「麻」とその文化を置き去りにしてしまっているというのが、日本の現状なのです。
  こうした現状のせいで、本来なら尊重されるべき伝統的な「麻」の栽培者は、減少の一途。現在全国で僅か30名ほどしか残っておらず、存続の危機を迎えています。

  このまま日本の麻文化を絶えさせてしまって良いのでしょうか?

  日本人と大麻(麻)のかかわりはとても古く、縄文土器の模様は大麻の縄でつけられたものですし、登呂遺跡から出土するほとんどの服は大麻の繊維で作られていたと言われています。そして戦前まで、生活に不可欠な作物として盛んに栽培されてきました。しかし、昔の日本人が大麻を乱用したという話は聞いたことがありません。なぜ日本人は、戦前まで大麻を乱用することがなかったのでしょうか?

  それは、日本の大麻はもともと、乱用できるような危険な品種ではないからです。

  大麻の乱用の元になるのはTHC(テトラヒドロカンナビノール)という物質であることは、1960年代に明らかにされました。
  そしてTHCの含有率は大麻の品種によって違いがあり、日本の大麻はTHCが少なく、無害な品種ということも理解できるようになりました。

  ですが、残念ながらほとんどの日本人は、このことを知りません。また、わが国の法も制定当時(1948年)のままそれを区別しておらず、無害な品種に対しても未だに厳しい制限を課し、栽培を極めて難しいものにしているのです。

  一方海外の状況はどうでしょう?

  海外では近年、大麻は環境に優しい資源として注目が集まり、THCが少ない品種なら無害として法や制度を見直し、大麻の栽培を奨励する国が増えてきました。

  例えばヨーロッパの多くの国では1990年代に制度を整え、現在ではTHCの含有率の低い品種を「産業用大麻」と呼び、ほぼ自由に栽培できるようになっています。
  アメリカも2013年に法を改正し、無害な「産業用大麻」に限って栽培を推奨するようになりました。その結果2014年には700haであった栽培面積が、今年は6000haにまで拡大されているということです。

  このようにTHCの含有率を元に、安全な品種と害のある品種を区別し、安全な品種のみ栽培すれば乱用は起こらないのです。わが国もそのようにしていくべきではないでしょうか?

  日本の大麻(麻)の遺伝子は、縄文の時代から日本人と共に進化してきた、いわば国の宝。伝統文化を支えると同時に、様々な用途での活用が期待される作物です。しかも、乱用されないという有利な性質を持った品種です。

  最近の大麻事件により、伝統を守ったり健全な産業として大麻を利用したりする目的での大麻栽培が厳しい状況に追い込まれています。この投稿がきっかけになり、大麻についての見方が変わり、麻と日本人のかかわりが本来の健全な良い姿に戻るよう切に願います。

  なお、いわゆるマリファナ解禁を目指す人たちが大麻の乱用を正当化したいとの思惑のもとで、歪んだ形で日本の麻について論ずることが多く、知らない人は悪影響を受けるのではないかと心配しています。これまでに述べたように、日本の麻文化は乱用とは無縁。
乱用を許さないことこそわが国の良き伝統であるということを確認して、この稿を閉じたいと思います。
 
≪参考≫
「置き去りにされた作物としての視点」 http://medg.jp/mt/?p=6856
「ウィキペディア:アサ(麻、Cannabis)」https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%B5 
「北海道ヘンプネット:海外で見直される麻」http://hokkaido-hemp.net/foreign.html 
「第2回日本麻協議会シンポジウムh28.5.4:麻布大学教授パトリック・コリンズ氏の講演」
「今から始める大麻栽培 無毒大麻を産業に活かす」http://agri-biz.jp/item/detail/7552
「映画:麻てらす(予告編)」https://www.youtube.com/watch?v=Lk1LoxRwVNk
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【若園 和朗(わかぞの かずろう)氏プロフィール】
 2011年、筆者の住む岐阜県A町では祭礼のために栽培していた大麻の盗難事件が発生し、当局より栽培を禁じられ祭礼を続けることが困難な状態に。それを受け、大麻栽培復活のための活動を展開。その活動を通じて日本の大麻の窮状を知る。2014年より「日本麻協議会」を立ち上げ、わが国の大麻を守る活動を開始。現在、「日本麻協議会」事務局代表。ほかに「難治性疼痛患者支援協会ぐっどばいペイン」代表理事。