2人に1人無役:バブル世代最後役割
2017年12月14日 お仕事日 本 生 涯 現 役 推 進 協 議 会 &
NPO法人 ラ イ フ ・ ベ ン チ ャ ー ・ ク ラ ブ 活 動
ご 支 援 く だ さ る 会 員 皆 様
毎日新聞2017「医療プレミア」年12月11日
「2人に1人が無役」バブル世代“最後の役割”とは
西川敦子 / フリーライター
【にしかわ・あつこ 1967年生まれ。鎌倉市出身。上智大学外国語学部卒業。釣り関連の編集プロダクション勤務、温泉仲居を経て、2001年から執筆活動。経済誌、新聞、人事関連雑誌などで、メンタルヘルスや家族問題、働き方をテーマに取材を続ける。著書に「ワーキングうつ」(ダイヤモンド社)など。】
中 年 う つ の 乗 り 越 え 方(前編)
「働かないおじさん」「半沢直樹」「平野ノラ」--さまざまなイメージをまとう「バブル世代」。しかし、派手好きでマイペースといった表の顔とは裏腹に、自殺者数が最多の年代に当たるなど、じつはシビアな現実に直面しているという。「昇進適齢期」を過ぎた彼らが抱える心の闇とは。
バブル世代は「自殺者数最多」世代?
行きつけの居酒屋は忘年会シーズンのせいか、今夜は一段と騒がしい。石黒健さん(仮名)は乾杯を終え、中ジョッキの生ビールをテーブルに置いた。
割安なところが気に入って通っていたのだが、近ごろは若い連中が増え、居心地が悪くなってきた。同年輩はもっと高級な日本料理店やフレンチに行くのだろう。同期の飲み友達も思いは同じなのか、話がやや愚痴めいてきた。
「あーあ、結局、役職に就けないまま会社に飼い殺しか。俺も昇進適齢期過ぎちゃったからなあ」
「俺だって担当課長とはいっても部下がいるわけじゃなし、みなし管理職ってやつだよ」
47歳で大企業の部長に昇進した父親と違い、自分は昇給も頭打ちだ。妻も内心、不満を募らせているだろう。「あなたってもう偉くならないの?」などと、時折ぐさっとくることを言う。「ひょっとすると、俺は人生に失敗したんだろうか」。そう思ったとたん、好物の煮付けの味がわからなくなり、砂をかんでいるような気がしてきた。
厚生労働省の調べによると、16年の自殺者数最多は40代。うつ病による自殺者数も50代に次いで多く、勤務問題を理由とした自殺者数でもトップだった。16年時点で40代に該当するのが就職氷河期世代だが、忘れてはならないのが「バブル世代」の存在である。
バブル世代とは1965年~70年ごろの生まれで、87年~92年ごろに大学を卒業し、社会人となった世代を指す。肩パッド・太眉の女芸人、平野ノラさんのネタで揶揄(やゆ)されるこの世代。かつて「花のバブル入社組」ともてはやされた彼らに今、何が起きているのか。
「花の入社組」は見た!昭和のブラック職場の現実とは
「ご存じのように、バブル期の採用は超売り手市場。大学卒業者のじつに6割近くが大手企業への切符を手にしました」と説明するのは、リクルートワークス研究所の機関誌「Works」編集長の清瀬一善さんだ。
派手な消費性向を持ち、マイペースでお気楽などと言われてきた彼らだが、その足跡をたどってみると、意外にもシビアな一面が浮かび上がると、清瀬さんは話す。
「会社説明会に行ったら交通費として3万円を渡された」「内定者フォローという名目で、豪華クルージングの旅に招待された」など、たしかに就活のエピソードは華やかな伝説に彩られている。とはいえ入社してみれば、職場は好景気ゆえの膨大な業務を抱えたブラック職場。みんな終電まで働き、土日出勤もあたりまえという世界である。
「朝、出勤すると職場に常備された寝袋にいつも誰かが寝ていた(出版社勤務)」「月の残業時間はつねに120時間を超えていたが、申告すると『社会人の常識というものがあるだろう!』と上司にしかられ、定時退社していたことにさせられた(銀行勤務)」といった悲惨な逸話はいくらでも聞こえてくる。
「花の入社組」は見た!昭和のブラック職場の現実とは
「ご存じのように、バブル期の採用は超売り手市場。大学卒業者のじつに6割近くが大手企業への切符を手にしました」と説明するのは、リクルートワークス研究所の機関誌「Works」編集長の清瀬一善さんだ。
派手な消費性向を持ち、マイペースでお気楽などと言われてきた彼らだが、その足跡をたどってみると、意外にもシビアな一面が浮かび上がると、清瀬さんは話す。
「会社説明会に行ったら交通費として3万円を渡された」「内定者フォローという名目で、豪華クルージングの旅に招待された」など、たしかに就活のエピソードは華やかな伝説に彩られている。とはいえ入社してみれば、職場は好景気ゆえの膨大な業務を抱えたブラック職場。みんな終電まで働き、土日出勤もあたりまえという世界である。
「朝、出勤すると職場に常備された寝袋にいつも誰かが寝ていた(出版社勤務)」「月の残業時間はつねに120時間を超えていたが、申告すると『社会人の常識というものがあるだろう!』と上司にしかられ、定時退社していたことにさせられた(銀行勤務)」といった悲惨な逸話はいくらでも聞こえてくる。
20年の歳月の間にリストラの風が吹き荒れ、組織のフラット化は進んだ。役職そのものを減らす企業も多かった。しかも、上のポストは団塊世代以下でひしめいている。こうして、父親の背中から学んだ「がんばれば報われる」という公式は見事にひっくり返されてしまった。
リクルートワークス研究所の調査によると、少なくとも大企業では役職に応じてモチベーションが維持されやすいことがわかっている。
「40代後半ともなれば先行きの見通しも見当がつく。仕事の意味を見失う人もいるでしょう。子どもの進学、親の介護が重なりやすい時期でもあり、精神的に不安定になるのも無理はありません」(清瀬さん)
そんな彼らを待ち受けるのが、110万人を襲うともいわれる「2035年問題」である。いったいどんな問題なのか--。 つづく
NPO法人 ラ イ フ ・ ベ ン チ ャ ー ・ ク ラ ブ 活 動
ご 支 援 く だ さ る 会 員 皆 様
毎日新聞2017「医療プレミア」年12月11日
「2人に1人が無役」バブル世代“最後の役割”とは
西川敦子 / フリーライター
【にしかわ・あつこ 1967年生まれ。鎌倉市出身。上智大学外国語学部卒業。釣り関連の編集プロダクション勤務、温泉仲居を経て、2001年から執筆活動。経済誌、新聞、人事関連雑誌などで、メンタルヘルスや家族問題、働き方をテーマに取材を続ける。著書に「ワーキングうつ」(ダイヤモンド社)など。】
中 年 う つ の 乗 り 越 え 方(前編)
「働かないおじさん」「半沢直樹」「平野ノラ」--さまざまなイメージをまとう「バブル世代」。しかし、派手好きでマイペースといった表の顔とは裏腹に、自殺者数が最多の年代に当たるなど、じつはシビアな現実に直面しているという。「昇進適齢期」を過ぎた彼らが抱える心の闇とは。
バブル世代は「自殺者数最多」世代?
行きつけの居酒屋は忘年会シーズンのせいか、今夜は一段と騒がしい。石黒健さん(仮名)は乾杯を終え、中ジョッキの生ビールをテーブルに置いた。
割安なところが気に入って通っていたのだが、近ごろは若い連中が増え、居心地が悪くなってきた。同年輩はもっと高級な日本料理店やフレンチに行くのだろう。同期の飲み友達も思いは同じなのか、話がやや愚痴めいてきた。
「あーあ、結局、役職に就けないまま会社に飼い殺しか。俺も昇進適齢期過ぎちゃったからなあ」
「俺だって担当課長とはいっても部下がいるわけじゃなし、みなし管理職ってやつだよ」
47歳で大企業の部長に昇進した父親と違い、自分は昇給も頭打ちだ。妻も内心、不満を募らせているだろう。「あなたってもう偉くならないの?」などと、時折ぐさっとくることを言う。「ひょっとすると、俺は人生に失敗したんだろうか」。そう思ったとたん、好物の煮付けの味がわからなくなり、砂をかんでいるような気がしてきた。
厚生労働省の調べによると、16年の自殺者数最多は40代。うつ病による自殺者数も50代に次いで多く、勤務問題を理由とした自殺者数でもトップだった。16年時点で40代に該当するのが就職氷河期世代だが、忘れてはならないのが「バブル世代」の存在である。
バブル世代とは1965年~70年ごろの生まれで、87年~92年ごろに大学を卒業し、社会人となった世代を指す。肩パッド・太眉の女芸人、平野ノラさんのネタで揶揄(やゆ)されるこの世代。かつて「花のバブル入社組」ともてはやされた彼らに今、何が起きているのか。
「花の入社組」は見た!昭和のブラック職場の現実とは
「ご存じのように、バブル期の採用は超売り手市場。大学卒業者のじつに6割近くが大手企業への切符を手にしました」と説明するのは、リクルートワークス研究所の機関誌「Works」編集長の清瀬一善さんだ。
派手な消費性向を持ち、マイペースでお気楽などと言われてきた彼らだが、その足跡をたどってみると、意外にもシビアな一面が浮かび上がると、清瀬さんは話す。
「会社説明会に行ったら交通費として3万円を渡された」「内定者フォローという名目で、豪華クルージングの旅に招待された」など、たしかに就活のエピソードは華やかな伝説に彩られている。とはいえ入社してみれば、職場は好景気ゆえの膨大な業務を抱えたブラック職場。みんな終電まで働き、土日出勤もあたりまえという世界である。
「朝、出勤すると職場に常備された寝袋にいつも誰かが寝ていた(出版社勤務)」「月の残業時間はつねに120時間を超えていたが、申告すると『社会人の常識というものがあるだろう!』と上司にしかられ、定時退社していたことにさせられた(銀行勤務)」といった悲惨な逸話はいくらでも聞こえてくる。
「花の入社組」は見た!昭和のブラック職場の現実とは
「ご存じのように、バブル期の採用は超売り手市場。大学卒業者のじつに6割近くが大手企業への切符を手にしました」と説明するのは、リクルートワークス研究所の機関誌「Works」編集長の清瀬一善さんだ。
派手な消費性向を持ち、マイペースでお気楽などと言われてきた彼らだが、その足跡をたどってみると、意外にもシビアな一面が浮かび上がると、清瀬さんは話す。
「会社説明会に行ったら交通費として3万円を渡された」「内定者フォローという名目で、豪華クルージングの旅に招待された」など、たしかに就活のエピソードは華やかな伝説に彩られている。とはいえ入社してみれば、職場は好景気ゆえの膨大な業務を抱えたブラック職場。みんな終電まで働き、土日出勤もあたりまえという世界である。
「朝、出勤すると職場に常備された寝袋にいつも誰かが寝ていた(出版社勤務)」「月の残業時間はつねに120時間を超えていたが、申告すると『社会人の常識というものがあるだろう!』と上司にしかられ、定時退社していたことにさせられた(銀行勤務)」といった悲惨な逸話はいくらでも聞こえてくる。
20年の歳月の間にリストラの風が吹き荒れ、組織のフラット化は進んだ。役職そのものを減らす企業も多かった。しかも、上のポストは団塊世代以下でひしめいている。こうして、父親の背中から学んだ「がんばれば報われる」という公式は見事にひっくり返されてしまった。
リクルートワークス研究所の調査によると、少なくとも大企業では役職に応じてモチベーションが維持されやすいことがわかっている。
「40代後半ともなれば先行きの見通しも見当がつく。仕事の意味を見失う人もいるでしょう。子どもの進学、親の介護が重なりやすい時期でもあり、精神的に不安定になるのも無理はありません」(清瀬さん)
そんな彼らを待ち受けるのが、110万人を襲うともいわれる「2035年問題」である。いったいどんな問題なのか--。 つづく