私 の 見 た 「 幸 福 な 富 裕 者 と 不 幸 な 富 裕 者 」
              そ  の  決  定  的  違  い
(前編) –  山崎 和邦   わ が 追 憶 の 投 機 家 た ち ④

  常 勝 の 心 得 「 自 分 の 本 業 を 知 る 者 に こ そ 、
                         相 場 の 神 は 味 方 す る 」

ウォール街には「つむじ風の真ん中にいる者ほど風の方向が分からないものだ」と和訳された格言がある。

目的と手段を取り違え、おカネをつくることにのめり込んでしまう人がいるが、これは却って逆効果を生む。株式投資にのめり込んでも、そんなに儲かるわけではない。儲かるどころか逆に大損する場合も多い。

現役ビジネスパーソンのポートフォリオは、本業における年収が中心に据えられていなければならない。

読者諸賢は、何らかの本業を持っておられる方々が多いと推測する。もし投資活動でおカネを増やし、それでもなお、自分は本業を中心にこれからの人生を築き上げていこうと考えられるなら、それはめっぽう正しい「生活態度」と言える。

私は読者諸賢と、富裕者になる前はもちろん、なった後でも必ず役に立つ「常勝の心得」を共有したいと思って本稿に取り組んだ。

その心得とは「株と絵は遠くから見よ」の口伝である。私の現職時代の先輩は「株と女は遠くから見よ」と言っていたが同じことだ。

要するに、株式投資にのめり込みすぎることなく、本業を中心に自分の人生を設計し、一定の距離を置きながら株式市場で着実に資金を増やしていく。これこそが最も大事な「常勝の心得、第一」であり、「幸福な富裕者」と「不幸な富裕者」を分かつ最大要因であり、多くの「幸福な富裕者」に共通する生活態度なのである。

本稿は、何十万人に1人の幸運に遭遇する投資家や、特別に才能のある投資家を対象にしたものではない。普通の、常識的な、99.9%の大多数を対象としている。だから、少々の努力を継続できれば、という条件付きではあるが、誰にもできる方法を述べるようにした。

天は、滅ぼそうとする富裕者に、まずカネを与える。その人はカネの毒にあたって自ら滅ぶ。さすれば天は手が省けるというものだ。このことを、くれぐれもご注意いただきたい。

次回の後編では、「幸福な富裕者」に共通する「最低限の法律・契約を守る規範意識」の大切さについて、さらに踏み込んで解説しよう。

私もこまれで証券マンとして、企業経営者として、一投機家として、様々な誘惑と戦ってきた。その経験を生かし、読者諸氏が魑魅魍魎の誘惑に打ち克つ方法について、具体的な事例を交えてご紹介する予定である。

私の知る「幸福な富裕者」は皆、法律や契約を執拗なほど頑なに守ってきた。勘違いしないでいただきたいが、これは倫理観ではなくあくまで損得勘定の話である。

※ 私の見た 「幸福な富裕者と不幸な富裕者」その決定的違い(後 編)に続く