WISDOM:組織強化への自由な議論②
2016年8月24日 お仕事WISDOM:組織強化への自由な議論①からのつづき
提案型営業マンが「三方良し」のビジネスモデルを創出
Q: サラリーマン時代に経験された仕事の中で、特に印象的なものはありますか。
A 原:
サラリーマン時代、中国電力で営業所とサービスセンターで働いたのち、エコ・アイスの提案営業を経験しました。その時の業績が評価され、中国電力が立ち上げたベンチャー企業・ハウスプラス中国住宅保証の営業企画課長に抜擢されました。さまざまな経験を得られましたが、ハウスプラス中国住宅保証時代に手掛けた「ラジオCMを使ったマーケティング」は中でも特に印象に残っています。
ハウスプラス中国住宅保証は、第三者機関が建物を評価して、公的な評価書を発行する仕事を行っていますが、当時はほとんど知名度がありませんでしたので、地元広島で絶大な人気を誇る球団、広島カープの試合が放送されるラジオCMに目をつけました。
それまで、ラジオでマンションデベロッパーのCMが流されることはありませんでしたが、そこに「住宅保証付きのマンションを買おう。ライオンズマンションの大京は全戸、住宅性能評価付き」といったCMを流しました。ナレーションを担当したのは、ほかならぬ私です。ラジオにはCMの広告料が入り、デベロッパーは安心なイメージを売れますし、我々はCMを通じて知名度を獲得できるということで、次々と契約が取れるようになりました。
営業マン時代にいつも考えていたのは、商品の説明ではなく、「お客さんにどうすれば喜んでもらえるか」ということです。パンフレットを持って行って、いくら商品の説明をしても、それは単なる自己満足に過ぎません。それよりも、その商品を元にお客さんにどんなメリットを提供できるのかを考えて、初めてうまくいきます。
Q: 素晴らしいアイデアですね。ベンチャー企業だとご苦労も多かったと思いますが、まさにアイデアで道を切り開かれたのですね。
A 原:
新しい制度ですし、新規事業の立ち上げは正直しんどかったですね。チラシ配りやポスティングなど、何でもやりましたし、なかなかお金が入らず、「このままだと倒産するぞ」と社長に言われたこともありますが、チームの中で活発に議論し、あれこれ知恵を出しながら好きにやったのが良かったのだと思います。
私は、陸上でも仕事でも、もっと議論をすべきだと考えています。最近の風潮として、グレーゾーンがなくなって、AかBになってきていますが、本来グレーゾーンがないと世の中はうまくいかないのではないでしょうか。
本当はAの中にもいろんな意見があるはずなのに、AかBかを選ばなければいけない。Bを選んだらもう出世が望めないとなると、みんなが上司に迎合するようになりますが、こういう企業は発展しません。みんなで自由に議論して、戦って、決まったら「ノーサイド」で一致協力をするということが大切なのではないでしょうか。
「黙々と」ではなく、自由に議論することが選手の力を引き出す
Q: すると、大学の駅伝部でも自由に議論をさせているのでしょうか。
A 原:
「提案することはいいことだ」「話をするのはいいことだ」というのがベースにあります。私が話をして、みんなに「意見があるか?」と聞いて、「何もない」と言うと、「それはおかしいよ、何か言いなさい」と言います。体育会だと、上から言われた通りに黙って黙々とになりがちですが、それではダメです。「常識は変わるもので、今日の常識が明日の非常識になることもあるのだから考えなさい」と言っています。
Q: 陸上選手は「黙々と走る」イメージが強いですが、そうじゃないということですか。
A 原:
陸上選手は余計なことは遮断して、修行僧のような競技生活を送りますから、「黙々と走れ」「あまり話すな」となりがちでしたが、監督がいくら指示をしたところで、今はクリック1つでいくらでも情報が手に入ります。「監督の言っているのは20年前のことだ」となると、誰も言うことを聞かなくなります。
指導のあり方が、かつての「教える、教わる」ではなく、若者の引き出しをどう引き出すかが大切になっていますから、そのためには自由に言葉を発信できる組織にしなければいけません。
リーダーの仕事は引き出すことであり、引き出したものをどう実行に移すか、そのタイミングや選択を経験値で行うことです。今までは選手は「教わる」でしたが、今は「教える」ことは何もありません。
Q: それでは、学生たちが練習方法を提案することもあるのでしょうか。
A 原:
もちろんです。その提案を受けて、「今のタイミングじゃ早いな、3ヶ月後だな、1年後だな」と判断をするのが私の役割です。駅伝シーズンはチームとして責任を負うので、ある程度の枠はありますが、練習方法や目標などをみんなで考えることはよくあります。
青山学院大学の今年のテーマは「個の色合わせて緑となれ」ですが、我々は個人を大切にして、個の色を合わせたうえで最終的には青山のチームカラーの緑になればいいなと考えています。
Q: 個人の考える力や個性を生かしながら大きな目標を達成するということですね。次回(後編)は、原さんのチーム作りにおける哲学や、リーダーに求められる役割についてお伺いします。
(インタビュー:時田 信太朗、文:桑原 晃弥)
提案型営業マンが「三方良し」のビジネスモデルを創出
Q: サラリーマン時代に経験された仕事の中で、特に印象的なものはありますか。
A 原:
サラリーマン時代、中国電力で営業所とサービスセンターで働いたのち、エコ・アイスの提案営業を経験しました。その時の業績が評価され、中国電力が立ち上げたベンチャー企業・ハウスプラス中国住宅保証の営業企画課長に抜擢されました。さまざまな経験を得られましたが、ハウスプラス中国住宅保証時代に手掛けた「ラジオCMを使ったマーケティング」は中でも特に印象に残っています。
ハウスプラス中国住宅保証は、第三者機関が建物を評価して、公的な評価書を発行する仕事を行っていますが、当時はほとんど知名度がありませんでしたので、地元広島で絶大な人気を誇る球団、広島カープの試合が放送されるラジオCMに目をつけました。
それまで、ラジオでマンションデベロッパーのCMが流されることはありませんでしたが、そこに「住宅保証付きのマンションを買おう。ライオンズマンションの大京は全戸、住宅性能評価付き」といったCMを流しました。ナレーションを担当したのは、ほかならぬ私です。ラジオにはCMの広告料が入り、デベロッパーは安心なイメージを売れますし、我々はCMを通じて知名度を獲得できるということで、次々と契約が取れるようになりました。
営業マン時代にいつも考えていたのは、商品の説明ではなく、「お客さんにどうすれば喜んでもらえるか」ということです。パンフレットを持って行って、いくら商品の説明をしても、それは単なる自己満足に過ぎません。それよりも、その商品を元にお客さんにどんなメリットを提供できるのかを考えて、初めてうまくいきます。
Q: 素晴らしいアイデアですね。ベンチャー企業だとご苦労も多かったと思いますが、まさにアイデアで道を切り開かれたのですね。
A 原:
新しい制度ですし、新規事業の立ち上げは正直しんどかったですね。チラシ配りやポスティングなど、何でもやりましたし、なかなかお金が入らず、「このままだと倒産するぞ」と社長に言われたこともありますが、チームの中で活発に議論し、あれこれ知恵を出しながら好きにやったのが良かったのだと思います。
私は、陸上でも仕事でも、もっと議論をすべきだと考えています。最近の風潮として、グレーゾーンがなくなって、AかBになってきていますが、本来グレーゾーンがないと世の中はうまくいかないのではないでしょうか。
本当はAの中にもいろんな意見があるはずなのに、AかBかを選ばなければいけない。Bを選んだらもう出世が望めないとなると、みんなが上司に迎合するようになりますが、こういう企業は発展しません。みんなで自由に議論して、戦って、決まったら「ノーサイド」で一致協力をするということが大切なのではないでしょうか。
「黙々と」ではなく、自由に議論することが選手の力を引き出す
Q: すると、大学の駅伝部でも自由に議論をさせているのでしょうか。
A 原:
「提案することはいいことだ」「話をするのはいいことだ」というのがベースにあります。私が話をして、みんなに「意見があるか?」と聞いて、「何もない」と言うと、「それはおかしいよ、何か言いなさい」と言います。体育会だと、上から言われた通りに黙って黙々とになりがちですが、それではダメです。「常識は変わるもので、今日の常識が明日の非常識になることもあるのだから考えなさい」と言っています。
Q: 陸上選手は「黙々と走る」イメージが強いですが、そうじゃないということですか。
A 原:
陸上選手は余計なことは遮断して、修行僧のような競技生活を送りますから、「黙々と走れ」「あまり話すな」となりがちでしたが、監督がいくら指示をしたところで、今はクリック1つでいくらでも情報が手に入ります。「監督の言っているのは20年前のことだ」となると、誰も言うことを聞かなくなります。
指導のあり方が、かつての「教える、教わる」ではなく、若者の引き出しをどう引き出すかが大切になっていますから、そのためには自由に言葉を発信できる組織にしなければいけません。
リーダーの仕事は引き出すことであり、引き出したものをどう実行に移すか、そのタイミングや選択を経験値で行うことです。今までは選手は「教わる」でしたが、今は「教える」ことは何もありません。
Q: それでは、学生たちが練習方法を提案することもあるのでしょうか。
A 原:
もちろんです。その提案を受けて、「今のタイミングじゃ早いな、3ヶ月後だな、1年後だな」と判断をするのが私の役割です。駅伝シーズンはチームとして責任を負うので、ある程度の枠はありますが、練習方法や目標などをみんなで考えることはよくあります。
青山学院大学の今年のテーマは「個の色合わせて緑となれ」ですが、我々は個人を大切にして、個の色を合わせたうえで最終的には青山のチームカラーの緑になればいいなと考えています。
Q: 個人の考える力や個性を生かしながら大きな目標を達成するということですね。次回(後編)は、原さんのチーム作りにおける哲学や、リーダーに求められる役割についてお伺いします。
(インタビュー:時田 信太朗、文:桑原 晃弥)