私たちNPO法人 ライフ・ベンチャー・クラブが加盟する、高齢社会NGO連携協議会の堀田 力氏と共同代表の樋口恵子氏が、本年初『生涯現役社会』のあり方を展望するシンポジウム東京会場開催で、下記【基調講演】内容が日経紙3/20付で掲載されていましたので、転載紹介させていただきます。  
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               〔主催:独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構〕
   高 齢 者 の 働 き 方 が 未 来 を 変 え る
    「 7 0 歳 ま で 働 け る 企 業 」 実現に向けたシンポジウム

 
  超  高  齢  社  会  で  働  く  こ  と  生  き  る  こ  と
       ~ 老 働 力 の 活 用 が 日 本 経 済 を 救 う ~
                                  樋 口  恵 子 氏
                                 (東京家政大学名誉教授)

  少 子 化 対 策 に も な る 高 齢 者 の 働 く 力
  70歳といわず、私は75歳まで働き続けられる社会をつくるべきだと考えている。なぜならば日本は75歳以上の人口は増えるが、それ以下の人口は今後当分増える見込みがないからだ。若い労働力の不足を高齢者の「老働力」が補えば、日本の労働力は何倍にも増すはずだ。もちろん高齢者の体力や健康は若い世代とは違う。

  したがって企業側は、そうした制約を踏まえた労働環境を整備すべきだ。長野県で「お焼き」をつくる会社では、60歳以上が大勢働いている。当然長時間続けて働くことは難しい。そこで昼寝の時間を設け、働きやすいようにさまざまな働き方があっていい。働く場も、企業に限ることはない。私も普段お世話になっているが、シルバー人材センターのような場でもいいだろう。

  高齢になっても働くことで社会とつながり、「孤立死」の防止にもなる。労働は、社会的人間関係をつくるツールともいえるからだ。何よりもっとも大きいのは、医療費削減効果が期待できることだ。公衆衛生の専門家が行った長期間の追跡調査によると、生存率が高く健康な人ほど働いている。また男女を問わず、買い物によく出かける人や周囲との人間関係が豊かな人ほど健康で生存率が高いことも浮き彫りになったという。家に引きこもっているのは健康の大敵。とにかく外へ出て、できれば働くことが望ましい。

  『高齢社会白書』をみても、男女ともに年齢に関係なく働きたいと思っている人は多い。実は働く理由で多いのは、「収入」を抑えて「健康保持」がトップとなっている。これは諸外国には見られないことで、日本人の勤労精神が反映されたものかもしれない。

  日本は少子高齢化が加速していることで、医療費等が膨れ上がる一方となっている。だが、75歳まで働くことのできる社会になれば高齢者の健康づくりにつながる。子育て世代が長期間労働から解放され、少子化の解決につながる可能性もある。

  「老働力」の活用は、日本経済を救うといっても過言ではないはずだ。