東瀧様

  フクシマの件について、ご理解とご支援ありがとうございます。
  先日、当ネットワークの横浜地区の立上げ会を兼ねて、勉強会(横浜)を持ちました。
  勉強会では、主に浪江町の慰謝料増額調停申立てに対するADRの和解調停案が東電に全面的に拒否された問題を踏まえて、最後は訴訟となった場合、原発訴訟に勝つための戦略、戦術について、弁護士から話を聞きました。
  FMM③、④は、この問題についての報告としました。

フクシマ復興応援ネットワーク
事務局 井上 仁
電話045(921)5687
携帯090(3050)3120
ホームページ 
http://www.belhyud.com/00.htm
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FFM No.4  Fukushima Mail Magazine
最 後 は 訴 訟 と な っ た 場 合 、 原 発 訴 訟 の 戦 略 と 戦 術 
                              勉強会(横浜)から    
2014.6.29発行
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  浪江町の慰謝料増額を求める調停申立てについて、ADRの和解調停案を浪江町は受諾しましたが、東電は全面拒否をしました。
   最後は訴訟か。フクシマ復興応援ネットワーク活動の一環として「原発事故で住民が被った損害の実態を明確にし、国・東電が負うべき法的責任を認めさせ、具体的な損害賠償金額の支払いを求める」という、国の3権分立下で進められる原発訴訟について、勉強会(横浜)(6月27日、神奈川県県民交流センター)を持ちました。

  福島原発被害者支援かながわ弁護団の事務局長黒澤知弘弁護士から、「裁判所に、何について、どのような判断を求めるのか」、「裁判はどのように進められるのか」、「争点は何か」、「争点を巡って、裁判に勝つための重要な戦略・戦術は何か」などについて、お話しをして戴きました。

              黒澤弁護士の話の基点になっている
                「原賠法」について
                (文責事務局)

①原賠法の目的
 原子炉の運転等によって原子力損害が生じた場合における損害賠償制度を定め、被害者保護と原子力事業の発達に資するとあります。

②原子力損害
 「原子力損害」とは、核燃料物質の原子核分裂の過程の作用又は核燃料物質等の放射線の作用若しくは毒性的作用(これらを摂取し、又は吸入することにより人体に中毒及びその続発症を及ぼすものをいう。)により生じた損害をいうとあります。
備考
 審査会は、「生命・身体への損害だけでなく、 精神的損害、避難費用、農作物の出荷制限や風評被害による営業損害なども含まれる」としています。

③原子力事業者の無過失責任
 東電などの原子力事業者は、原子力損害を発生させたときは、損害の発生につき故意・過失があったか否かに関わりなく、賠償責任を負うとあります。

備考
 民法上は、不法行為一般について、被害者が加害者に損害賠償請求するためには、被害者が加害者の故意又は過失を立証する必要がありますが、原賠法は、被害者保護の視点から、原子力事業者の無過失責任を定めることで、被災者は、損害が発生したこと、その損害が原発事故から生じたことを立証すれば足りるとしています。

④原子力事業者に対する免責
 「異常に巨大な天変地異又は社会的動乱によって生じた損害」については、原子力事業者に賠償責任がないとされるとあります。

備考
 2011年5月13日、原子力発電所事故経済被害対応チーム関係閣僚会合において、「今回の地震や津波は、歴史上例の見られない災害とは いえない」、「地震時の全電源喪失は本件事故前から指摘されていた」等として、東電に責任があるとしています。

⑤原子力事業者の損害賠償措置、国の援助
 原子力事業者は、損害賠償責任が発生する事態への備えとして、民間保険契約、政府補償契約を締結することを義務づけられています。

備考
 損害賠償にあたっては、民間の損害保険会社により、賠償措置額(1,200億 円)まで保険金が支払われます。それ以上になる場合は、政府との間の補償契約により、賠償措置額1,200億円まで補償金が支払われ、それを超える場合には、国が原子力事業者に必要な援助を行うことができるとあります。        
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                 福島原発かながわ訴訟
               黒澤弁護士のお話しの主な内容                                 (文責事務局)

主な賠償請求内容
 東電への直接請求、ADRへの和解調停申立方式の現状と限界を踏まえ、次の賠償を請求する。①慰謝料 35万円/人、月
 東電基準、中間指針の10万円は避難生活に消える程度のもので低すぎる。
②生活破壊・ふるさと喪失慰藉料 2000万円/人
 被曝による不安も含む。今後の生活・人生再建のための相当な金額である。
③不動産、財物損害
 宅地、建物、家財、田畑、山林について、別途基準に基づき、避難指示区域に差を設けず、一律全損と
 して請求する。

訴訟の狙い
①生活再建を可能とする被害回復のための、すべての被害者への公平な賠償を求める。
②東電と国の事故責任を明確にした上での賠償を求める。
③審査会の賠償基準の見直し、被災者支援法の具体化等、立法・政策提言につなげる。

訴訟の争点
 東電、国を被告とし、「原賠法に基づき、賠償するから責任は問うな」という被告側の見解を否定し、主に次の3点を訴訟の争点とする。
①東電の原発の安全確保に対する注意義務違反を問う。
 ・巨大な危険性をかかえる原発の安全確保に対し、東電に悪質な注意義務違反がある。
②国の東電の原発稼働に対する規制権限不行使の責任を問う。
 ・設計対象基準としての地震・津波等の想定が不十分だった。
 ・全交流電源喪失対策を法的に義務づけるべきだった。
 ・地震、津波の予見が可能ではなかったか。
 ・炉心溶融、冷却機能喪失等の結果を回避することができなかったか。
③すべての被災者が低線量被曝の影響を避けるため避難する選択には合理性がある。

訴訟に勝つために
 黒澤弁護士は、「福島原発訴訟は、弁護団だけの力では勝てません。被害者団体、被害者のまとまり、訴訟の争点に対する専門家の協力、一般市民の理解と世論の高まりが必要です。また、訴訟のなかで、事故原因、事故責任を明らかにし、被害者全体の声、訴えを集約することで、完全賠償を勝ち取るとともに、被害者支援のための施策提言を行い、さらに、将来の原発事故の再発防止への取組みにつなげていきたい」と強調されています。      

 FMM No.4
最後は訴訟となった場合、原発訴訟の戦略と戦術 
     勉強会(横浜)から    
2014.6.29発行
【発行】フクシマ復興応援ネットワーク
【編集】   事務局 井上 仁    
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     【WEB】 http://www.belhyud.com/00.htm
     【MAIL】 fukushima-n.w@belhyud.com
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