日 本 生 涯 現 役 推 進 協 議 会 &  
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毎日新聞2017年9月6日 東京夕刊/
ご参考URL=https://mainichi.jp/articles/20170906/dde/012/040/008000c
    本因坊400年への道 .
             囲 碁  9  0  歳 代   「 神 様 」 夫 妻


  “将棋界のレジェンド”として知られる加藤一二三九段(77)が引退したのは6月中旬のこと。棋士生活は60年以上に及んだ。

  囲碁界に目を向けると、そのレジェンドを上回る棋士が健在である。1920(大正9)年生まれの96歳、杉内雅男九段だ。棋士生活は80年を超え、真摯(しんし)な姿勢から「囲碁の神様」の異名をとる。実は妻の寿子(かずこ)八段(90)も現役棋士。二人は今も対局をこなし、棋道を究めるべく碁盤に向かっている。夏も真っ盛りの頃、東京・駒沢公園近くに居を構える自宅をうかがった。

  「勝てませんねえ。今年はまだ1勝しかしていません」。雅男九段は笑顔を見せながら嘆いた。「でも引退は考えていませんよ。夢をはぐくむ職業。今日よりは明日。まだ、いくらかでも進歩すると思ってやっています。そう思えなくなったら終わりですから」

  宮崎県出身。37年入段、59年に最高位の九段へと昇段した。本因坊戦に2度挑戦、タイトル獲得、優勝は2回。トップ棋士として、長らく昭和囲碁界を走ってきた。

  「囲碁界はすっかり変わりました。段位制の崩壊と時間制度。持ち時間が短くなって、スポーツ化してきました。勝負一辺倒になってきた気がします。時代の流れでもあるのでしょうが、世の中、世知辛い感じがします。ただ、今が昔がと言っても仕方ないですね」

  寿子八段の戦歴もすごい。42年入段、83年に女流棋士で初の八段に昇段した。女流名人4連覇などタイトル獲得、優勝回数は10。雅男九段とは54年に結婚した。

 「女性初の九段ですか? なんとなく、一歩下がってというか、杉内に並びたくないというのがあります。あと何勝すれば、と言ってくれるんですが……。体力も衰えてきているので、しっかりと健康に気を配って、一局、一局一生懸命打つだけです」

  勝てないと嘆いていた雅男九段だが、後日打たれた対局を制し、2勝目をあげた。

  これまでの生涯成績は雅男九段、881勝671敗12引き分け2無勝負、寿子八段、617勝888敗6引き分け。生涯現役。ご夫妻には、いつまでも若さあふれる碁をみせていただきたい。  【金沢盛栄:毎日新聞編集委員】