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  J.I.メールニュース No.791 2017.1.19 発行 
                          「たった一人のあなたを救う」
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<巻頭寄稿文>
   「 た っ た 一 人 の あ な た を 救 う 」
     
            公益社団法人日本駆け込み寺 代表理事  玄 秀盛
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  私が代表理事を務める公益社団法人日本駆け込み寺は、この言葉をモットーに、DV、家庭内暴力、金銭トラブル、ストーカー、虐待など、人生のさまざまな問題を抱えた人々の相談を受けサポートしています。

  駆け込み寺には服役中の方から相談の手紙が多数送られてきます。出所したその足で相談に来る方もいます。帰る場所がない、就労先がない、経済的に自立できない等々、出所後の生活に不安を抱えている方がほとんどです。また、出所者のご家族からも「地元に戻って来られては困る」「縁を切りたい」という切実な相談が寄せられます。相談を受けるたびに、ご家族もまた被害者なのだと強く思います。

  そのような現状を目の当たりにし、駆け込み寺とは別に、出所者を支援する団体の必要性を感じました。平成26年4月、出所者やひきこもり等、社会復帰が困難な方の支援を目的として、一般社団法人再チャレンジ支援機構を設立しました。

  出所者の自立と再犯防止は現下の最重要課題です。その中のひとつは出所後の雇用先確保ですが、出所者の社会適応力の低さとともに、出所者に対する負のイメージや先入観も、その就労機会を阻む原因となっています。

  そこで私が考えたのが出所者支援居酒屋でした。社会(人)との濃密な関わりこそが、再犯防止と社会復帰を促すための訓練になると考えたからです。また、来店してくださったお客様に、出所者が懸命に社会復帰を目指して働く姿を見ていただければ、出所者に対する恐怖心や猜疑心の改善も期待できます。

  平成27年4月、出所者等の社会復帰を支援する居酒屋「新宿駆け込み餃子」を立ち上げました。歌舞伎町のシンボル・新宿東宝ビルのすぐ近くにあります。

  その店で働く出所者の指導と管理監督は再チャレンジ支援機構が行なっています。仕事だけではなく生活全般に係る相談を受け、社会復帰に向けた支援に力を注いでいます。

  実は、開店前には厳しいご意見もいただきました。「出所者に包丁を持たせる仕事はさせられませんね」「レジやお客さんのお金に手を付けるかもしれません」「お客さんが怖がって入ってきませんよ」等々。気をつけているのは「長い時間一人にさせない」「多額の金銭を持たせない」ということです。担当スタッフがひとりひとりの1日のスケジュールを把握し、きめ細かく対応しています。その結果、ご心配いただいたようなトラブルは発生していませんし、おかげさまで運営も順調です。

  「どんな過去でもやり直しはきく」この言葉を出所者達に伝え続け、彼らが二度と犯罪と関わることのない人生を歩めるよう、再チャレンジ支援機構は彼らを支え続けていきます。

  また、近年「子どもの貧困」と呼ばれる社会問題がクローズアップされていますが、私が出所者支援居酒屋の次に考えているのは、シングルマザーやその子どもたちの支援を目的とした飲食店です。再チャレンジ支援機構は、すでにそのビジョンの実現に向けて動き出しています。
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【玄 秀盛(げん ひでもり)氏プロフィール:
1956年、大阪府生まれ。40代前半までは「金儲け」に心血を注いでいたが、2000年にHTLV-1(白血病の原因となるウイルス)の感染者であることが判明。それを機に過去と決別し、2002年、NPO法人日本ソーシャル・マイノリティ協会を設立、家庭内暴力、DV、ストーカー、家出、自殺、引きこもり、多重債務など、さまざまな問題を抱えた人々を救済する活動に身を投じる。
2012年、公益社団法人日本駆け込み寺へ業務移行。過去2万件以上の相談を解決。その特異な人生は、渡辺謙主演のドラマ『愛・命~新宿 歌舞伎町駆け込み寺~』になった。
 公益社団法人日本駆け込み寺ホームページhttp://nippon-kakekomidera.jp/