本日の日本経済新聞朝刊「大機小機」欄に一礫氏が「中高年の果たす責務」を述べておられます。誠に同感を覚えるものですが、『生涯現役社会づくり』を志す私たち生涯現役仲間の考えとすれば、自然年齢にこだわることなく、自主的な意志の生涯現役を志向する言動で、社会的な規則・規制に捉われることのない『生涯現役社会づくりプラットフォーム』構想を、民官合意のもとに民主導で推進するのが、より社会的なうねり効果を発揮するのではないかと存じます。
  『生涯現役プロデューサー』仮ご登録諸兄姉のご意見もこの際、ぜひ聴かせていただきたいと願っています。
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  日本人の寿命が延びて人々にとって最も重要な資源である「時間」が増えた。かっては難しかった長期の目標にも手が届くようになっている。21世紀はより速く、より高くではなく、より遠くへである。
  
  生涯学習もそうだが働き方も変わる。経済財政白書によれば、わが国の60~64歳の労働力率は6割以上になったが、北欧諸国に比べるとまだまだである。大正期の日本にあって、渋沢栄一は「少なくとも70ぐらいまでは働かねばならぬ」と著書の「論語と算盤(そろばん)」で述べている。労働市場は横断的に古希まで働ける環境づくりを急がねばならない。
  
  40年ほど前は男性の平均寿命は70歳で定年はおおむね55歳だった。男性人口を見ると55歳以上が700万人だったのに対し、15~54歳は3,100万人で4.4人が1人の高齢者を支えていた。
  
  現代は男性の平均寿命が80歳まで延びた。70歳以上の男性は970万人で、15~69歳は4.380万人になる。オーストラリアのように70歳まで働いて年金を受け取る仕組みにすれば、4.5人が1人を支える形になり、40年前と変わらない数値になる。リタイアした後、10年から15年の老後を楽しんで人生を終えるイメージだ。
  
  米国では需要不足の解決策として金融緩和を長期にわたって継続しているが、3%の成長軌道になかなか回帰できない。生産性の改善という供給側の課題が解決されていないからだ。最新のIT(情報技術)を取り入れた最先端の設備投資が進んでおらず生産性は思うように上がっていない。
  
  供給側の課題を抱えるのは日本も同じだ。古希までの勤労は労働力の増加に寄与するだけでなく、とくにサービス産業における労働生産性の改善に効果がある。貴重な経験に基づいた高度なアドバイスや地域に根ざした情報サービス、さらには同じ高齢者の生活支援サービスなど、サービス部門で元気な中高年が活躍する場は少なくない。
  
  勤勉な労働は日本人の持ち味だ。長い時間軸を活用し仕事をする期間を延ばせば健康寿命も長くなり、白書も指摘しているように医療費の増加が抑制される。成長戦略の柱でもある少子化克服のメドがつくまで、次の時代へのつなぎ役として、中高年の果たすべき責務は大きい。(一礫)