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   J.I.メールニュース No.756                 2016.05.12 発行 
        「 熊 本 、 ア ロ マ  森 と 人 の 健 康 」
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<巻頭寄稿文>
   「 熊 本 、  ア ロ マ   森 と 人 の 健 康 」
                     オークヴィレッジ代表・木工作家  稲本 正 

 連休に熊本の支援に行ってきた。いや正確に言えば、ずっと以前から熊本を5月2日、3日、4日の三日間訪ねる事に決めていたのだが、その20日間ぐらい前に皆さんご存知の大地震が起きてしまった。

 なぜ5月の連休に行くことに決めていたかと言えば、『甘夏ネロリ花摘みツアー』という催しに招待され、私が経営する「日本産アロマyuicaの正プラス株式会社」の社員二人と共に参加することにしていたからだ。

 ところが地震が起き、主催者も動揺するし、80人いた参加者が震災が起こると、一気にキャンセルが出た。それでも、「こういう時だからこそ熊本に行きましょう」と私も呼びかけたところ、なんとか40人ぐらいの人が集まってくれた。

 そもそもその『甘夏ネロリ花摘みツアー』とは何か?

 地中海に育つ、世界でもっとも良い香りの一つ、「ネロリ」(ビターオレンジからとれる精油の名前)。生食用には向かないビターオレンジの花がもつ「ネロリドール」が主成分。その貴重な「ネロリドール」が、熊本で水俣の甘夏に見つかったのだ。(突然変異種)

 その大切な香りの花は5月の連休の頃にしか採集できないので、この時期に集中的に集める為に、全国から人を集めてその花を摘むツアーを「ネローラ花香房」が毎年企画しているのだ。

 今年は地震が起きたので参加者は半減したが、それでも集まった40人の花摘みツアーの人々で花を摘み、その後被災者にネロリのアロマウォーターで足浴や、ハンドマッサージをすることも実施した。

 飛騨からクロモジのアロマウォーターも持って行った。避難所に着くと、ほとんどが老人で、疲れ果てて横になっている人が多い。話を聞くと、熊本の市街の家にはそれぞれ、赤い紙、黄色い紙、緑の紙が貼られ、赤い紙の家は崩壊などの危険があり、その家の住人は帰れない事になっている。

 私達が訪れた4日は久しぶりの快晴だったので、避難所にいた人は「いわゆる赤紙」を貼られた人たちばかりで、当然にも落ち込んでいる人たちだった。一人の老人に二人のセラピストがつき、足浴をしている足と、前方に出してもらった手をマッサージした。

 「揺れに対するトラウマ」を多くの人がかかえており、「タンスの倒れる方向が一歩ずれていたら死んでいたかもしれない」などと話してくれた人も、アロマのトリートメントでことのほか癒され、気持ちがやわらいだようであった。※

 家が倒壊して帰れない人は、先が見えず、不安な日々を送っておられ、これからが心身のケアーが必要だと感じた。

 私は「森と人の健康ネットワーク」を主催しており、6月7日に隈研吾氏の講座を原宿のブルックスcaffeで行うが、その折に熊本の報告もしたいと思う。

 詳しくは inamoto@sei-plus.com にお問い合わせください
※その時の様子はこちらからhttps://www.facebook.com/tadashi.inamoto.5?fref=ts
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【稲本 正(いなもと ただし)氏プロフィール】 1945年富山県生まれ。 立教大学で原子物理学を専攻し、理学部助手になるが、1976年高山市郊外の清見村に緑の工芸村『オークヴィレッジ』の建設を開始。人と自然、道具、暮らしの調和をもとめてモノ造を始める。1981年新宿紀伊國屋書店にショースペース、オークヴィレッジ東京開設。1987年東京、原宿にオーク・ハーツを開設し総合プロデュース活動を開始。1991年『森林たくみ塾』を開校する。現在は、広葉樹を中心とした家具、設計から施工までの木造建築、文具、玩具などの木の小物などの作品の制作活動、「NPOドングリの会」会長、「森と人の健康ネットワーク」会長など様々な文化活動を行っている。著書に『森の旅・森の人』『森の惑星』『森の形森の仕事』『日本の森から生まれたアロマ』など。