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経日ビジネス 2020年8月24日 北西 厚一 日経ビジネス記者
ご参考URL=https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00181/081900016/

  チームラボ 猪 子 氏「 人 は 生 き て い る 意 味 を 求 め る よ う に な る」①

猪子寿之[いのこ・としゆき]氏
チームラボ代表。1977年、徳島市生まれ。東京大学工学部計数工学科卒業と同時にチームラボを創業。アニメーターや技術者、建築家、数学者などで構成するクリエーター集団のチームラボはデジタルアートの常設展示「MORI Building DIGITAL ART MUSEUM: EPSON teamLab Borderless」(東京/お台場)等を展開する。

  新型コロナウイルスの感染拡大は、社会にどのような変化をもたらしますか。

猪子寿之・チームラボ代表(以下、猪子氏):大きな流れは変わらない。「アフターコロナ」のようなものはないと思っている。今の状態がいつまで続くかはわからないが、収束後の世界は元に戻るはずだ。過去にも疫病は多くあったが都市化が止まったことはない。人は長い年月をかけ密へと向かっている。

 みんなが「変わる」と言っているのは、そう言えば人々の関心が湧き、もうかるから。ビジネス的に、変わることにしているのだと思う。オフィスを持たずに仕事するといったことは、高付加価値の領域では起こり得ない。従来から技術的にはできるにもかかわらず、それを実行した企業は成功していない。ただ、コロナ以前から存在する変化の後押しにはなっている。例えば、環境変化への対応のようなものだ。以前からあることは加速するが、これまでに起こっていないことは、いずれ元に戻る。

 長い歴史の中で、人はどういった方向に動いているととらえていますか。

猪子氏:近代の大きな流れは、産業革命と情報革命だ。産業革命は加熱でピストンを動かす蒸気機関の話で、物理的に動くことが基礎だった。その象徴は乗り物。富裕層は車を買い、クルーザーを買い、飛行機を買った。動く必要があるので、郊外を受け入れた。前世紀の最高のエンタメと言っていいディズニーランドはすべてが乗り物だ。

 一方、情報革命はデジタルの発明であり、脳の拡張だ。グーグル、ツイッター、フェイスブック、アップルなどは脳を拡張したい人の関心に応えている。「生きている意味を感じること」が豊かさになっている。

 以前の世界は、固定的で受動的だったとも言える。映画も遊園地も受動的で、行動原理は時間を消費し、楽しませてもらうことだった。今後は、すべてが変化し続けるようになる。ゴールはあらかじめ設定されておらず、自分で表現し、アップロードする。その能動的な動きが、脳をより拡張させる。重要なのは、自らの意思で歩くこと。感性が育てる旅であり、アートの時代と言っていい。単なる時間の消費ではなく、意味を求めていく。

  何に意味を感じるかは、個人によって差異がありそうです。

猪子氏:確かにそうだが、共通して意味を感じられるものもあるはずだ。それは、自分の存在を超越して成り立っているようなもの。長い時間をかけてつくられた自然や歴史、自分では表現が難しい芸術などを求めて動くようになる。

 例えば、数千年の年月がつくった特殊な地形や、中国のハニ族の棚田のように人と自然の営みが長い時間をかけてつくり上げた景観だ。アーティストが自分の中で意味を見出し、生涯かけてつくり上げたようなものも同様だろう。バルセロナの大聖堂、サグラダ・ファミリアのようなものだ。一方で、意味を感じないものは、便利だろうと安かろうと、コスパがよかろうと、優先順位が下がっていくのだと思う。

 ただ、いつの時代も、人は正義のようなものに意味を感じやすい。安直な正義の名のもとで「魔女狩り」のようなことをしてきた歴史がある。絶対的な悪とされるものがあるとき、それを懲らしめるのが正義。生き方に意味を求める流れで、この傾向がエスカレートする可能性はある。そうなると、社会は硬直化し、経済、文化的な発展が阻害され、様々な犠牲が生まれる。だから、正義をつくりやすい状況をつくらないことが重要だ。今の社会はわかりやすい正義をコンテンツとして提供しすぎている。  つづく   

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