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【昨日のつづき】
    「いきなり真っ黒にしたくない」コロナで生まれた白髪染めの新潮流②

■ 自粛生活で染め方にも変化が


市販のヘアカラーには、押すと液体で出てくる「液状型」「乳液型」「リンス型」、泡で出てくる「泡型」、「スプレー型」などがある。液体でも、一剤と二剤を混ぜるタイプ、混ざって出てくるタイプなどさまざまだ。

自粛期間中、マンダムの売れ筋に変化が出ていた。

「ルシードのラインアップの中でも、『ルシード スピーディカラーリンス』が好調に推移しています。これは通常の白髪染めと異なり、シャンプー後のリンス代わりに使い、3分放置するだけで、簡単に白髪を目立たなくすることができる商品です。約5回の連続使用で、白髪が徐々に目立たなくなります。

外出自粛で、人と直接会う機会が少なくなり、しっかり染め上げるのではなく『目立たなくなる程度でいい』と、カラーリンスを選ばれる消費者が増えているようです」(同社)

例えば「オンライン会議の参加者」も、自粛期間が長くなるにつれて、身だしなみを工夫する人が増えた。職場の同僚など社内相手の場合と、取引先など社外相手とでは服装を変える人もいる。

リモートワークでのTPOも育ってきた。

カラーリンスの伸びには、2つの消費者心理が考えられる。1つは「簡単・便利」という機能性、もう1つは「いきなり真っ黒にしたくない」という情緒性だ。メーカー視点では、機能的価値と情緒的価値の訴求になる。

これまで通勤が当たり前だった会社員も、リモートワークで新たな働き方を手に入れた。それに伴い高まったのは、「そこそこの見た目で十分」という心理だ。

■ 続ける人が多い一方、「グレイヘア」への憧れも

最近では、白髪になっても染めない著名人も目立つようになった。女性では、近藤サトさん(フリーアナウンサー、日本大学芸術学部特任教授)が有名で、『グレイヘアと生きる』(SBクリエイティブ)という著書も出している。

男性では、俳優で歌手の陣内孝則さんや吉川晃司さんが知られる。

マンダムは、「ルシードの利用層である40代男性の多くは、それほど白髪量が多いわけではないので、継続して白髪染めをする方がほとんどです」と前置きしつつ、こう話す。

「少数ですが、『美しいグレイヘアを楽しんでいる芸能人へのあこがれ』や『定期的にずっと染め続けないといけない煩わしさ』を話す人もおられます」

以前、取材したファッション関連企業の男性経営者(当時60代)は、細身で上質なスーツを着こなすダンディな人だったが、美容院で「目立たなくする白髪隠しを勧められると断ります」と話していた。

「何も足さない、が自分のモットー」だからだと言う。

今後は、こうした自然派も増えそうだ。

■ セルフ染めの傾向は続きそう

ここからは「支出」の視点で、withコロナ時代の消費者意識を考えたい。

今回のコロナ禍で、収入減に追い込まれた人も多いだろう。そうなると、生活防衛の心境から伸びるのが「内向きの消費」だ。

これまでも、飲食の世界では収入減になると、外食が減り、自宅で食事を作る機会が増えていた。自粛期間中も、総じて食品スーパーの売り上げが好調だった。

感染者が拡大する「第2波」問題もあり、白髪染めでも「美容院・理髪店ではなく自宅で」という傾向は高まるだろう。その場合のノウハウは、女性の達人に学ぶのもよさそうだ。

例えば、美容意識の高い女性でも「美容院での白髪染めは数カ月に1度」と決めている人が多い。ロングヘアでない限り「美容院できちんと染めた後、しばらくして目立ってきたら、自分でリタッチ(補正)する」という。この「リタッチ」も、前述のカラーリンス志向に似ている。あまり気負わない部分も参考になりそうだ。

最後に、白髪染めは、少なからず髪にはダメージがかかる。かぶれる人もいるので、実施する場合は、取扱説明書をよく読んで行いたい。
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高井 尚之(たかい・なおゆき)略歴:経済ジャーナリスト/経営コンサルタント
1962年名古屋市生まれ。日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆多数。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。
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