「私見卓見」欄:高齢者の「価値観」 I T で共有
2020年1月13日 お仕事日 本 生 涯 現 役 推 進 協 議 会 &
NPO法人 ラ イ フ ・ ベ ン チ ャ ー ・ ク ラ ブ 活 動 で
ご 支 援 く だ さ る 会 員 皆 様
日本経済新聞 経済教室「私見卓見」 2020/1/13 2:00
ご参考URL=https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54258680Q0A110C2SHE000/
高 齢 者 の 「 価 値 観 」 I T で 共 有
日本総合研究所創発戦略センター スペシャリスト 沢 村 香 苗
人生100年時代という言葉が社会にあふれるようになって久しい。何に備えておくべきなのかを考える際、高齢者の数が増える「高齢化」より、単身世帯や夫婦のみ世帯の増加という「世帯の小規模化」の影響が大きいだろう。
国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、今後とくに子の近居や同居が減る。その時生じる課題のうち、既に顕在化しつつあるものの一つが、身元保証人の確保が困難になることである。
例えば入院の際、各種書類に保証人の署名を求める医療機関は多い。保証人がいないことを理由に入院や入所を拒否してはならない旨の通知が厚生労働省から出されているものの、保証人を求めること自体は禁止されておらず、苦慮する高齢者は増えている。
そのような高齢者を対象とした身元保証等のサポート事業者を対象に筆者らが行った聞き取りでは、保証人に期待される役割は金銭の保証だけではなく、治療上の重大な決断や、死後の手続きを代行する上で必要となる「その人の意向」「価値観」といった情報の伝達だということがわかった。
生活の質に深く関与するサービスを行う上で、その人が何を重視しているかという情報は欠かせない。エンディングノートを書く人も多いが、細かな指示より根本にある本人の価値観の方が応用範囲が広く、支援側にとって重要な情報になりうる。これまで個人の価値観は家族とのつながりの中で自然と共有されていることを前提に、家族が様々な意思決定を代行することが受け入れられてきた。
今はそういった自然な形での情報の共有が難しくなっている。そこで筆者は、高齢者がIT(情報技術)を活用して「自分の価値観」を他者に共有可能な形で表明しておけば、周囲の人との新たなつながりをつくり、情報を活用できるようになると考えている。
日々の出来事に関する考え、これからやりたいこと、これまでの人生でよかったことや後悔していることなどの情報をサイバー空間に蓄積しておけば、ある程度「その人らしさ」を推測できる。このような仕組みが、高齢者が自分の価値観にふさわしい選択をすることを助け、支え手の負担軽減にも貢献するだろう。
NPO法人 ラ イ フ ・ ベ ン チ ャ ー ・ ク ラ ブ 活 動 で
ご 支 援 く だ さ る 会 員 皆 様
日本経済新聞 経済教室「私見卓見」 2020/1/13 2:00
ご参考URL=https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54258680Q0A110C2SHE000/
高 齢 者 の 「 価 値 観 」 I T で 共 有
日本総合研究所創発戦略センター スペシャリスト 沢 村 香 苗
人生100年時代という言葉が社会にあふれるようになって久しい。何に備えておくべきなのかを考える際、高齢者の数が増える「高齢化」より、単身世帯や夫婦のみ世帯の増加という「世帯の小規模化」の影響が大きいだろう。
国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、今後とくに子の近居や同居が減る。その時生じる課題のうち、既に顕在化しつつあるものの一つが、身元保証人の確保が困難になることである。
例えば入院の際、各種書類に保証人の署名を求める医療機関は多い。保証人がいないことを理由に入院や入所を拒否してはならない旨の通知が厚生労働省から出されているものの、保証人を求めること自体は禁止されておらず、苦慮する高齢者は増えている。
そのような高齢者を対象とした身元保証等のサポート事業者を対象に筆者らが行った聞き取りでは、保証人に期待される役割は金銭の保証だけではなく、治療上の重大な決断や、死後の手続きを代行する上で必要となる「その人の意向」「価値観」といった情報の伝達だということがわかった。
生活の質に深く関与するサービスを行う上で、その人が何を重視しているかという情報は欠かせない。エンディングノートを書く人も多いが、細かな指示より根本にある本人の価値観の方が応用範囲が広く、支援側にとって重要な情報になりうる。これまで個人の価値観は家族とのつながりの中で自然と共有されていることを前提に、家族が様々な意思決定を代行することが受け入れられてきた。
今はそういった自然な形での情報の共有が難しくなっている。そこで筆者は、高齢者がIT(情報技術)を活用して「自分の価値観」を他者に共有可能な形で表明しておけば、周囲の人との新たなつながりをつくり、情報を活用できるようになると考えている。
日々の出来事に関する考え、これからやりたいこと、これまでの人生でよかったことや後悔していることなどの情報をサイバー空間に蓄積しておけば、ある程度「その人らしさ」を推測できる。このような仕組みが、高齢者が自分の価値観にふさわしい選択をすることを助け、支え手の負担軽減にも貢献するだろう。
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