上皇様との約束/中野の理容師町田典一さん

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産経新聞　電子版　2019.11.2 07:59 　ライフ　くらし
ご参考URL＝https://www.sankei.com/life/news/191102/lif1911020006-n1.html

　　　　　　【秋の褒章・東京】黄綬褒章　上皇さまとの“約束”果たす　中野の理容師、町田典一さん　

　２日付で発表された令和元年秋の褒章で、東京都内からは黄綬褒章１６人、紫綬褒章１０人、藍綬褒章５２人の計７８人が選ばれた。その中で、黄綬褒章を受章した中野区の理容師、町田典一さん（６５）に喜びの声を聞いた。

皮脂

　創業９０年を超え、祖父から続く理容店「ファミリーマチダ」（中野区上高田）の３代目。受章の一報を聞き、「よかった。ほっとした」と笑顔がこぼれた。

　小学６年の時、合唱団の一員としてテレビ番組に出演。司会者から「大きくなったら何になるの」と聞かれ、とっさに口から出た言葉は「お父さんが床屋さんなので、日本一上手い床屋さんになる」だった。

　その姿を会場にいた皇太子時代の上皇さまがご覧になり、「親の仕事に誇りを持つことは素晴らしい。成長を楽しみにしています」とのお言葉をいただいたと、ＮＨＫから１週間後に聞かされた。「皇太子殿下が一少年に心を寄せられた」と感慨深げに振り返る。

　都理容学校（現在の東京理容専修学校）で学び、ロンドンの専門学校にも留学した。平成元年に第４１回全国理容競技大会で優勝。有言実行の陰には、上皇さまのお言葉があった。

　「少年時代から、両親に『誰と“約束”したんだ』と言われ続けた。優勝するまで諦めなかった」

　カラーリングの際の安全でファッショナブルな染毛技術の確立に尽力したことが評価され、２８年度には厚生労働省の「現代の名工」にも選ばれている。

　「生涯現役を貫こう。お客さまの前で笑顔でいるために体力を充実させたい」と５０歳からジム通いを始め、東京マラソンにも３回参加。初回の６時間２３分から、３回目には４時間５６分へ大幅にタイムを縮めた。走った後は店に戻り、いつも通りに散髪。「お客さまが待っているというゴールの設定が大切」と話す。

　目標は「創業１００年を迎えること」。加えて「もっと技術を上げたい」と向上心を忘れない。
　「お客さまには笑顔で帰っていただく。これからも努力し続けたい」
（斎藤有美）