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日経Web 社会・くらし 2019/10/15 23:30
ご参考URL=https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51016320V11C19A0EA2000/?n_cid=NMAIL007

      台風19号、想定された浸水 活用途上のハザードマップ

台風19号は広範囲に記録的な大雨をもたらし、多数の河川で堤防の決壊を引き起こした。事前にハザードマップが示した通りに浸水の被害が発生し、重要施設が水に漬かったケースもあった。堤防などハード整備に予算と時間の壁が立ちはだかるなか、「想定」を生かして命を守り、街を守る対策が問われている。

東京女子大の広瀬弘忠名誉教授(災害リスク学)は「東日本大震災以来『想定外』の災害への備えが叫ばれてきたが、ハザードマップの浸水エリアは『想定内』。最低限、備えなければならない内容だ」と強調する。

長野市は2007年3月に洪水ハザードマップを作成し、19年3月に更新したばかり。従来の「100年に一度」の想定に「1000年に一度」も加え、同年夏に広報紙と一緒に各家庭に配布していた。台風19号による浸水地域の周辺は、19年版では最大10~20メートルの浸水が想定されていた。

今回の浸水地域内には県立病院、大型商業施設のほか、JR東日本の長野新幹線車両センターがあり、北陸新幹線の車両120両も水に漬かった。同社は氾濫時に浸水の恐れがあることを認識していたが、車両を「避難」させていなかった。

洪水のハザードマップは、19年3月時点で対象となる1347市区町村の約98%が公表し、広く定着してきている。

海面より低い「ゼロメートル地帯」が広がる東京都江戸川区では、台風19号に伴う避難勧告を受けて約3万4千人が避難所などに身を寄せた。5月に改訂したハザードマップで「ここ(区内)にいてはダメです」と強く警告したことが話題となり、区担当者は「危険性に対する区民の認識は高まっていると感じる」と話す。

福島県郡山市は今回、国土交通省の水位情報と市のハザードマップに基づいて「○時ころ氾濫水位に達します」「○○地域の方は直ちに避難してください」などと携帯電話に断続的にプッシュ通知を配信した。市内では阿武隈川の氾濫で犠牲者が出たが、担当者は「住民の避難に一定の効果を発揮した」とみている。

住民の避難行動を促す形での活用が進みつつある一方、街づくりへの活用はハードルが高い。国交省によると、商業施設や住宅を集約する「コンパクトシティー」の計画を策定した自治体では多くの場合、住民の居住を誘導する区域に災害リスクのあるエリアが含まれていた。

インフラ整備での水害対策には財政面の限界がある。19年度の国の治水関連予算は臨時の措置を入れて10年ぶりに1兆円を超えたが、国交省の推計では、河川管理施設などの維持管理・更新だけでも今後30年間で最大約25兆円かかる。

関東学院大の宮村忠名誉教授(河川工学)は「数百年に一度の災害に備える治水事業には莫大な予算と時間を要する。短期間でハード面の対策を終わらせるのは現実的に不可能だ」と指摘する。

そのうえで、短期的には「どう命を守るのか、具体的な避難方法などを住民に理解してもらう必要がある」とし、「浸水想定地域からインフラ施設や住居を移転させる誘導策の検討も中長期的な課題だ」と話している。

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