日経新聞Net:<駆ける投資家魂>(5)
2019年3月22日 お仕事日 本 生 涯 現 役 推 進 協 議 会 &
NPO法人 ラ イ フ ・ ベ ン チ ャ ー ・ ク ラ ブ 活 動 で
ご 支 援 く だ さ る 会 員 皆 様
日本経済新聞 朝刊 2019/3/16付 駆ける投資家魂(5)
駆ける投資家魂(5)
ESG投資「良き圧力」に ニューラル代表 夫馬賢治氏
企業に環境対応など促す
投資の「軸」が変わり始めている。とにかく利益を稼ぐ企業が選ばれる時代は終わり、環境・社会・企業統治に配慮した経営を評価する「ESG投資」の流れが加速する。その伝道師として活躍するのがニューラル(東京・品川)の代表、夫馬(ふま)賢治(38)だ。
2月12日昼、東京・永田町の自民党本部。「日本企業のESG対応の動きは遅すぎる。海外に比べて10年は遅れています」。集まった十数人の国会議員を前に、夫馬は声を張り上げた。
この日、夫馬は自民党の勉強会の講師を務めていた。テーマは「ESG投資の国際的な盛り上がりと出遅れる日本」だ。夫馬を招いた衆院議員の秋本真利は「夫馬さんの説明はわかりやすい。まさに伝道師だ」と語る。
夫馬の主な仕事は、企業や金融機関に対するESGのコンサルティングだ。ESGの取り組みについて投資家などからの評価を高めるための方法や、投資商品の設計などについて助言している。
ESGはすでに世界の投資のメガトレンドになっている。2016年時点の運用残高は約23兆ドル(約2500兆円)と、世界の運用資産の4分の1を占める規模になった。企業は対応が遅れれば、機関投資家などが投資を手控える「ダイベストメント(投資撤退)」のリスクが高まる。
夫馬がESGに目覚めたきっかけは、2010年から2年間の米国留学だ。経営学修士号(MBA)取得のため、米サンダーバード国際経営大学院に留学した。
そこで目の当たりにしたのは、英蘭ユニリーバや米スターバックスなどの大企業がESGを含む「サステイナビリティー(持続可能性)」を掲げ、10~20年先の長期の経営目標を打ち出す姿だった。「この流れは日本にも絶対くる」。夫馬はそう確信し、帰国後まもない13年にニューラルを設立した。
夫馬は東京大学出身。当時、客員教授をしていたのが、皇太子妃・雅子さまの父で元外務次官の小和田恒だ。国連や世界銀行への就職を志していた夫馬に、小和田は諭すように言った。「海外に出たいなら、まずは日本のことを知りなさい」
この言葉をきっかけに夫馬は就職活動の方向を転換。リクルートグループに興味を持ち、転職情報のリクルートエイブリック(現・リクルートキャリア)に入社した。「顧客に何を提供できるのか、徹底的に考えさせられた経験も糧になった」
ESGの重要性を訴える夫馬を突き動かすのは、日本企業の将来に対する危機感だ。「世界から見れば、いわば『オワコン(終わったコンテンツ)』扱いされていることに気づいていない」
米国留学時代のMBAの授業。「なぜグローバル化に失敗したのか」。話題になるのは日産自動車やソニーなどほとんどが日本企業だったという。経営トップの意思決定の遅さなどが指摘されているところに、「今度はメガトレンドであるESGに乗り遅れている」。
ESGの潮流を知らないと経営判断を誤るリスクがある。例えば、総合商社は以前、積極的に石炭関連事業に投資していた。だが世界で「脱石炭」の流れが進むなか、三菱商事と三井物産は、発電用石炭の鉱山権益の売却を決めた。
夫馬は「ESGはボランティア的に取り組むものでは全くなく、経営の永続のために不可欠な要素だ」と力を込める。ESG投資のうねりが日本企業を目覚めさせ、世界で戦うための「良き圧力」になることを願っている。
(松本裕子)=敬称略、おわり
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日本経済新聞 朝刊 2019/3/16付 駆ける投資家魂(5)
駆ける投資家魂(5)
ESG投資「良き圧力」に ニューラル代表 夫馬賢治氏
企業に環境対応など促す
投資の「軸」が変わり始めている。とにかく利益を稼ぐ企業が選ばれる時代は終わり、環境・社会・企業統治に配慮した経営を評価する「ESG投資」の流れが加速する。その伝道師として活躍するのがニューラル(東京・品川)の代表、夫馬(ふま)賢治(38)だ。
2月12日昼、東京・永田町の自民党本部。「日本企業のESG対応の動きは遅すぎる。海外に比べて10年は遅れています」。集まった十数人の国会議員を前に、夫馬は声を張り上げた。
この日、夫馬は自民党の勉強会の講師を務めていた。テーマは「ESG投資の国際的な盛り上がりと出遅れる日本」だ。夫馬を招いた衆院議員の秋本真利は「夫馬さんの説明はわかりやすい。まさに伝道師だ」と語る。
夫馬の主な仕事は、企業や金融機関に対するESGのコンサルティングだ。ESGの取り組みについて投資家などからの評価を高めるための方法や、投資商品の設計などについて助言している。
ESGはすでに世界の投資のメガトレンドになっている。2016年時点の運用残高は約23兆ドル(約2500兆円)と、世界の運用資産の4分の1を占める規模になった。企業は対応が遅れれば、機関投資家などが投資を手控える「ダイベストメント(投資撤退)」のリスクが高まる。
夫馬がESGに目覚めたきっかけは、2010年から2年間の米国留学だ。経営学修士号(MBA)取得のため、米サンダーバード国際経営大学院に留学した。
そこで目の当たりにしたのは、英蘭ユニリーバや米スターバックスなどの大企業がESGを含む「サステイナビリティー(持続可能性)」を掲げ、10~20年先の長期の経営目標を打ち出す姿だった。「この流れは日本にも絶対くる」。夫馬はそう確信し、帰国後まもない13年にニューラルを設立した。
夫馬は東京大学出身。当時、客員教授をしていたのが、皇太子妃・雅子さまの父で元外務次官の小和田恒だ。国連や世界銀行への就職を志していた夫馬に、小和田は諭すように言った。「海外に出たいなら、まずは日本のことを知りなさい」
この言葉をきっかけに夫馬は就職活動の方向を転換。リクルートグループに興味を持ち、転職情報のリクルートエイブリック(現・リクルートキャリア)に入社した。「顧客に何を提供できるのか、徹底的に考えさせられた経験も糧になった」
ESGの重要性を訴える夫馬を突き動かすのは、日本企業の将来に対する危機感だ。「世界から見れば、いわば『オワコン(終わったコンテンツ)』扱いされていることに気づいていない」
米国留学時代のMBAの授業。「なぜグローバル化に失敗したのか」。話題になるのは日産自動車やソニーなどほとんどが日本企業だったという。経営トップの意思決定の遅さなどが指摘されているところに、「今度はメガトレンドであるESGに乗り遅れている」。
ESGの潮流を知らないと経営判断を誤るリスクがある。例えば、総合商社は以前、積極的に石炭関連事業に投資していた。だが世界で「脱石炭」の流れが進むなか、三菱商事と三井物産は、発電用石炭の鉱山権益の売却を決めた。
夫馬は「ESGはボランティア的に取り組むものでは全くなく、経営の永続のために不可欠な要素だ」と力を込める。ESG投資のうねりが日本企業を目覚めさせ、世界で戦うための「良き圧力」になることを願っている。
(松本裕子)=敬称略、おわり
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